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ジュンは部屋に帰って来て、重くため息をついた。店のニ階にあるこの部屋は、寝起きするだけの部屋なので、最低限の生活必需品しか置いていない。バッグを床に置いて、寝間着に着替えてベッドに入る。
「はぁ……」
またため息が出る。ガラスも何も無い窓の向こうでは、煌々と三日月が輝いている。
「ねぇ、将紀。僕、なんでまだ生きてるんだろうな」
ぼんやりと、かつての恋人の名前を呟く。
日上将紀。それが、ジュンの恋人の名前だった。恋人と言っても、付き合っていた期間は半年間だけである。
元々、幼稚園からの幼馴染で家が近所で、学校も一緒だったので、常に一緒に育って来ていた。お互いの良いところも悪いところも知っている腐れ縁のような仲である。
将紀がゲイだったのかは知らないが、ジュンの初恋は将紀だった。小学校の低学年の頃に、自分は彼の事を特別好きらしいと気づいたのだ。だから、高校三年生の時に付き合う事になった時は天にも昇るような気持ちだった。あの将紀が、本当に自分の恋人になってしまうなんて。
なにしろ将紀は小学校の時も、中学校の時も好きな女の子が居た。将紀の恋愛対象はずっと『女』だった。そんな将紀が、ジュンと付き合ってくれたのは、長年一緒に居た親友へのお情けだったのかもしれない。
それでも将紀と、恋人同士として過ごした半年間は幸せだった。
月を見る目が涙で滲んで来る。
ジュンと付き合った半年後、卒業式を迎える前に将紀は交通事故で死んでしまった。ブレーキとアクセルを間違えて踏んだ車に、轢き殺されたのだ。その時、将紀はジュンに卒業祝いのプレゼントを買いに行っている時だった。お互いにサプライズで渡す物だったので、ジュンは一緒ではなかった。
(僕も一緒に死にたかった……)
頬を涙が伝っていく。
将紀の事を思い出すと、いつも泣いてしまう。何度も何度も泣いた。それでも涙は枯れない。胸の痛みは消えず、ジュンは将紀を置いて一人だけ大人になってしまった。
自分が異世界に来た時、正直納得する気持ちがあった。何故なら、将紀が死んでからジュンは生きているのか死んでいるわからない、茫洋とした意識で生き続けていた。死んでいないから仕方なく息をしていると言う状態だった。地に足の付かないままふわふわ生きていたから、ふわっと飛ばされて異世界にやって来てしまったのだろう。
異世界に来て一つ救いがあるとすれば、将紀を殺した凶器をもう目にする必要が無くなった事だ。
つづく
ジュンは部屋に帰って来て、重くため息をついた。店のニ階にあるこの部屋は、寝起きするだけの部屋なので、最低限の生活必需品しか置いていない。バッグを床に置いて、寝間着に着替えてベッドに入る。
「はぁ……」
またため息が出る。ガラスも何も無い窓の向こうでは、煌々と三日月が輝いている。
「ねぇ、将紀。僕、なんでまだ生きてるんだろうな」
ぼんやりと、かつての恋人の名前を呟く。
日上将紀。それが、ジュンの恋人の名前だった。恋人と言っても、付き合っていた期間は半年間だけである。
元々、幼稚園からの幼馴染で家が近所で、学校も一緒だったので、常に一緒に育って来ていた。お互いの良いところも悪いところも知っている腐れ縁のような仲である。
将紀がゲイだったのかは知らないが、ジュンの初恋は将紀だった。小学校の低学年の頃に、自分は彼の事を特別好きらしいと気づいたのだ。だから、高校三年生の時に付き合う事になった時は天にも昇るような気持ちだった。あの将紀が、本当に自分の恋人になってしまうなんて。
なにしろ将紀は小学校の時も、中学校の時も好きな女の子が居た。将紀の恋愛対象はずっと『女』だった。そんな将紀が、ジュンと付き合ってくれたのは、長年一緒に居た親友へのお情けだったのかもしれない。
それでも将紀と、恋人同士として過ごした半年間は幸せだった。
月を見る目が涙で滲んで来る。
ジュンと付き合った半年後、卒業式を迎える前に将紀は交通事故で死んでしまった。ブレーキとアクセルを間違えて踏んだ車に、轢き殺されたのだ。その時、将紀はジュンに卒業祝いのプレゼントを買いに行っている時だった。お互いにサプライズで渡す物だったので、ジュンは一緒ではなかった。
(僕も一緒に死にたかった……)
頬を涙が伝っていく。
将紀の事を思い出すと、いつも泣いてしまう。何度も何度も泣いた。それでも涙は枯れない。胸の痛みは消えず、ジュンは将紀を置いて一人だけ大人になってしまった。
自分が異世界に来た時、正直納得する気持ちがあった。何故なら、将紀が死んでからジュンは生きているのか死んでいるわからない、茫洋とした意識で生き続けていた。死んでいないから仕方なく息をしていると言う状態だった。地に足の付かないままふわふわ生きていたから、ふわっと飛ばされて異世界にやって来てしまったのだろう。
異世界に来て一つ救いがあるとすれば、将紀を殺した凶器をもう目にする必要が無くなった事だ。
つづく
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