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■プロローグ
しおりを挟むジュンは、相手の細い腰をタオルの上からさすり、ゆっくりとマッサージを行った。
「うぅん……んん……」
青年と呼ぶにはまだ、育ち切っていない体躯をした彼が唸る。これは痛いのではなく、気持ち良いのを我慢している声である。
「アルビオル様、大丈夫ですか?」
だが、一応声はかけておく。
「う、うむ……」
うつ伏せになったアルビオルは、歯切れの悪い返事をした。気持ちが良くなっているのが、きまりが悪いのだろう。しかし、コレはそういう目的でやっている行為なので、我慢されても困る。裸にした青年を、ベッドに横たえて一時間程丁寧に揉みほぐしている。全ては、彼の下半身にやる気を出させる為の前戯である。
「失礼します」
アルビオルの下半身を後ろから持ち上げて、オイルでしっかりと潤わせた右手で彼のそれを包む。
「……っ……」
アルビオルは年頃なので、この処置をする時、顔を見られるのを嫌った。下半身を見られるのも嫌がった。だから、必ずうつ伏せでタオルを下半身に被せてから処置は行う。
オイルで潤った手で、彼のモノに触れてゆっくり撫でる。丁寧に行った全身へのマッサージのおかげで、彼のイチモツは既に緩く勃起を始めている。ゆっくり優しく彼のモノを撫でながら、微弱な魔力を流していく。ジュンの回復魔法には、男性機能を回復させる作用があった。何故、こんな特殊な作用があるのかはジュンにもわからない。持って生まれてしまった才能のような物である。
そんなジュンの魔力を受けた、アルビオルのペニスは次第に固さを増していき、存在を主張するサイズになった。ジュンは優しい愛撫から、射精を促す手淫に手の動かし方を変える。きゅっとペニスを手で締めて、痛くない程度の力加減でしごく。
「はっ、くっ……っ」
枕に顔を突っ伏したアルビオルが、荒く息をして背中が上下する。褐色の肌と言うのは、汗をかくと妙に艶かしく見えるのだと彼に出会ってから知った。アルビオルの髪は短いのだが、後ろ毛だけは長く、彼は三編みを編んでいた。束ねられた三編みが誘うように、左右に揺れる。細い肩にキスしたくなるが、それをぐっとこらえた。そんな事をすれば、ジュンはすぐに牢屋に入れられて、即刻首を跳ねられるだろう。
「あっ……!」
短かく悲鳴をあげて、アルビオルは体を固くすると精を放った。ジュンは落ち着きつつ、彼の精液を小瓶に入れた。大半はこぼれて、シーツに落ちてしまったが、十分な量が採取出来た。
精を放った後、アルビオルがくたりと力を抜いてうつ伏せのまま倒れる。逝った後は、けして顔を見せてくれなかった。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
外に出て声をかけてお湯を持って来て貰い、そのお湯に浸した濡れた布で体を拭ってやった。彼はされるままになっていて、体を拭き終わるとシーツをかける。ジュンは荷物をまとめると、最後にもう一度アルビオルの側に近づく。
「お疲れ様でした。次はまた、三日後に参ります」
呼吸の落ち着いた彼は、それでも顔を見せてくれず、小さく頷いた。
ジュンはベッド横の明かりを消して、部屋を出た。誰もいない広い廊下を歩いて、しばらくしてたどり着いた部屋にノックをして入る。中には、白いヒゲを蓄えた男が居る。右目にモノクルを付けた彼がジュンを見る。
「成果はどうでしたか?」
ジュンは白い液体の入った小瓶を彼の机の上に置いた。
「今回も無事に処置出来ましたか、それは良かった」
男は笑みを浮かべる。
「ご苦労様でした。あなたの働きには私も期待しているんですよ。なにしろ、陛下の不能を治せるのは貴方だけなのですから」
大臣は小瓶を眺めて上機嫌で言う。
「……今後も誠心誠意がんばります」
「えぇ、そうなさってください。ですが、これは内密な事柄。けして他言無用でお願いしますよ。もしも、貴方から情報がもれた時は……相応の報いを受けると思ってください」
「はい」
ジュンは胃がキリっと痛むのを感じながら、小さく頭を下げ部屋を出た。
門から出て後ろを振り向くと、イスラム建築を彷彿とさせる丸い大きな屋根が見えた。その後ろには、夜空が広がっている。電気の無いこの世界では、空には沢山の星が見えた。
つづく
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