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絶対に(ミッシェル[ヘンリー]視点)

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「ミッシェル、お母様は巻き戻っていることに気がついたんじゃない?」

「姉上もそう思いますか?」

「ええ、なんだか変だったでしょう?」

「はい、今朝は私に年齢を聞いてきました。母上に確認すべきでしょうか?」

 私達は朝食の後、ブランシュ(母上)が部屋に戻ったのを確認し、食後のお茶を飲みながら姉と話をはじめた。

 私はあの日、闇魔導士に時間を巻き戻してもらった。

 その時に私達が母がまたあの男に嫁がされないように守りたい、どうにかしてくれと頼んだ。

 かなりの額を支払ったので闇魔導士は私を本当なら5歳で亡くなっていた母上の兄のヘンリーに、姉上をそもそも存在すらしていない母上の姉のセレスティアに転生させた。

 私達は母が無事クロヴィス様と結婚できれば全ての記憶を消し、2人の子供として生まれてくる。

 私も姉も本来なら存在していないので、クラウディアとミッシェルに戻る前に亡くなる事になっている。

 もし、母上がクロヴィス様と結婚できず、またあの男と結婚する事になったらその時はこの世界の全てが消え、私達は元の世界に戻る事になる。

 元の世界とは母が苦労して苦労して苦しんだ挙句あの男に殺された世界。

 あんな世界に戻りたくない。この世界でまた母上の子供に産まれて幸せになる。それが私の望みだ。

「お母様には私達がクラウディアとミッシェルだとは言わない方がいいわ。例えお母さまの記憶が戻っていたとしても知らないふりをしましょう。そして私達はあくまで姉のセレスティアと兄のヘンリーとしてお母様に接しましょう。あなたはクロヴィス様に近づいて仲良くなって、巻き戻る前より早くお母さまに近づけるのよ。私はあの男とお祖父様が我が家に関わらないように妨害するわ。共同事業なんて絶対にさせない。ふたりで何がなんでもお母様を守りましょう」

 姉は巻き戻る前の世界であの男に勝手に金持ちの後妻にされそうになったことがあった。
 母と祖父母が金で解決し破談となったが、その時、あの男に無理やり連れていかれそうになり抵抗して殴られた。
 なのであの男を心底嫌っている。

 母が殺された後、私と姉は母を幸せにし、あの男を地獄に突き落とす事だけを願い、今ここにいる。

「そうだな。私もルブラウン侯爵家を我がシューナアス伯爵家に近づけないように協力します。そのために父上に領主の仕事を教わりたいと願い出ました。母上は何も知らずに幸せに過ごしてほしいです。巻き戻る前の世界で苦労した分、今の世界では幸せしなきゃなりませんからね。私は兄として母上、いやブランシュを溺愛しますよ」

「私も姉としてベタベタに甘やかすわ。娘の時にお母様にはとても大事にしてもらったし、愛をいっぱいもらったわ。何も恩返ししないうちにあんな奴に殺されるなんて。私はあいつを許さない。絶対に破滅させてやる」

「私も同じ気持ちですよ。姉上、絶対にやり遂げましょう」

 私はお茶をひと口飲みカップを置いた。
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