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黒ハイデマリーは嫌われちゃうかな?
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リュディガー様は祈っていた。
我が国に来ても礼拝堂で祈りを捧げていた。
みんなが魔石鏡でプレル王国の様子を見ている時もひとり礼拝堂で祈っていた。
私は礼拝堂に入り、祈っているリュディガー様に声をかけた。
「何を祈っていたのですか?」
リュディガー様はその声に振り返った。
「ハイデマリー殿下の幸せとバーレンドルフ王国の繁栄です」
そう言って穏やかに微笑む。
「この国はプレル王国とは全くエネルギーが違います。とても善良で勤勉。そして穏やかで優しい。そのような国で育った人は同じようなエネルギーになるのでしょう。プレルも私が小さい頃は良いエネルギーの国でした。でも、いつからかあんな邪悪で重苦しいエネルギーをもつ国になってしまいました。国の周りには強靭な結界を張っているが、国が放つ邪悪なエネルギーに吸い寄せられるように魔獣が湧き出ているようです。結界が消えたら大変なことになります」
リュディガー様はため息をつく。
「我が国とプレル王国は遠いから、ここからプレル王国のことを祈っても届かないかもしれませんね。しかもリュディガー様はプレル王国のことなど祈っていない。プレル王国の皆様はリュディガー様の祈りなど必要ないとおっしゃっていたではありませんか。ふふふ復讐の始まりですわね」
私は冷笑した。
それから少しづつプレル王国は壊れ始めた。
3か月が過ぎ、私(に化けた暗部の者は留学期間を終えバーレンドルフ王国に帰ることになった。
あれからマインラートと仲良くなった(幻影で)ことでイルメラに虐められる日々だった。イルメラはマインラートのことが好きだったのかな?
帰ると伝えた時、マインラートに引き止められたが、ちょうどイルメラに階段から突き落とされ大怪我をし「このままでは殺されます。あなたはイルメラ殿下と幸せになって下さい」と身を引く芝居をしてもらった。
マインラートは私(私じゃないけど)とのことはイルメラにはバレないつもりだったらしい(バラしたのはいうちの暗部)
イルメラはイライラからリュディガー様(暗部が化けている)に暴力をふるい、王妃殿下(暗部が化けている)にも薬を強めて苦しむ様を見て憂さ晴らしをしていた。
魔石鏡を見ていてリュディガー様が呟いた。
「暗部の方々は大丈夫なのですか? 仕事とはいえ理不尽です」
「大丈夫です。暗部の者は何もされていませんわ。これは全て幻影です。リュディガー様はお優しいですね」
リュディガー様は目を丸くしている。
私は小さな幻影魔法を使い、リュディガー様に説明した。リュディガー様は納得してくれたようだ。
「しかし、私達が国を捨ててから、かの国に人達は気性が荒くなっているような気がします。あれは本質が出てきたのでしょうか?」
「ええ。守護や加護が薄れてきていますから、コーティングが剥がれてきたような感じですね」
私はクスッと笑った。
「ごめんなさい。笑うなんて邪悪ですね」
清廉潔白、心が美しいリュディガー様に嫌われたら嫌だ。私は自分の黒い心を見せてしまったことに気がつき一瞬青ざめた。
「いえ、私もざまぁみろと思っていますよ。祈りをやめてからそろそろひと月。あちこちほころびが出てきているのが魔石鏡で見られます。こんな復讐全く思いつきませんでした」
よかった。リュディガー様も黒リュディガーになってくれて。
ちなみにあの魔石鏡でプレル王国の様子を見て一番喜んだのはアデレイド叔母様だった。
母は我が国にヴェルトミュラ公爵家を作った。王家が預かっていた公爵の爵位をリュディガー様に渡した。小さな領地もある。
リュディガー様はしばらくはヴェルトミュラ公爵と聖人の二足の草鞋だ。公爵家のことはスティーブとハンナに任せることになった。
ふたりはなんとなくそういうことらしい。
そしてプレル王国の崩壊のはじまりの日までいよいよカウントダウンとなった。
***
あと2話で最終回です。
もうしばらくお付き合いよろしくお願いします。
我が国に来ても礼拝堂で祈りを捧げていた。
みんなが魔石鏡でプレル王国の様子を見ている時もひとり礼拝堂で祈っていた。
私は礼拝堂に入り、祈っているリュディガー様に声をかけた。
「何を祈っていたのですか?」
リュディガー様はその声に振り返った。
「ハイデマリー殿下の幸せとバーレンドルフ王国の繁栄です」
そう言って穏やかに微笑む。
「この国はプレル王国とは全くエネルギーが違います。とても善良で勤勉。そして穏やかで優しい。そのような国で育った人は同じようなエネルギーになるのでしょう。プレルも私が小さい頃は良いエネルギーの国でした。でも、いつからかあんな邪悪で重苦しいエネルギーをもつ国になってしまいました。国の周りには強靭な結界を張っているが、国が放つ邪悪なエネルギーに吸い寄せられるように魔獣が湧き出ているようです。結界が消えたら大変なことになります」
リュディガー様はため息をつく。
「我が国とプレル王国は遠いから、ここからプレル王国のことを祈っても届かないかもしれませんね。しかもリュディガー様はプレル王国のことなど祈っていない。プレル王国の皆様はリュディガー様の祈りなど必要ないとおっしゃっていたではありませんか。ふふふ復讐の始まりですわね」
私は冷笑した。
それから少しづつプレル王国は壊れ始めた。
3か月が過ぎ、私(に化けた暗部の者は留学期間を終えバーレンドルフ王国に帰ることになった。
あれからマインラートと仲良くなった(幻影で)ことでイルメラに虐められる日々だった。イルメラはマインラートのことが好きだったのかな?
帰ると伝えた時、マインラートに引き止められたが、ちょうどイルメラに階段から突き落とされ大怪我をし「このままでは殺されます。あなたはイルメラ殿下と幸せになって下さい」と身を引く芝居をしてもらった。
マインラートは私(私じゃないけど)とのことはイルメラにはバレないつもりだったらしい(バラしたのはいうちの暗部)
イルメラはイライラからリュディガー様(暗部が化けている)に暴力をふるい、王妃殿下(暗部が化けている)にも薬を強めて苦しむ様を見て憂さ晴らしをしていた。
魔石鏡を見ていてリュディガー様が呟いた。
「暗部の方々は大丈夫なのですか? 仕事とはいえ理不尽です」
「大丈夫です。暗部の者は何もされていませんわ。これは全て幻影です。リュディガー様はお優しいですね」
リュディガー様は目を丸くしている。
私は小さな幻影魔法を使い、リュディガー様に説明した。リュディガー様は納得してくれたようだ。
「しかし、私達が国を捨ててから、かの国に人達は気性が荒くなっているような気がします。あれは本質が出てきたのでしょうか?」
「ええ。守護や加護が薄れてきていますから、コーティングが剥がれてきたような感じですね」
私はクスッと笑った。
「ごめんなさい。笑うなんて邪悪ですね」
清廉潔白、心が美しいリュディガー様に嫌われたら嫌だ。私は自分の黒い心を見せてしまったことに気がつき一瞬青ざめた。
「いえ、私もざまぁみろと思っていますよ。祈りをやめてからそろそろひと月。あちこちほころびが出てきているのが魔石鏡で見られます。こんな復讐全く思いつきませんでした」
よかった。リュディガー様も黒リュディガーになってくれて。
ちなみにあの魔石鏡でプレル王国の様子を見て一番喜んだのはアデレイド叔母様だった。
母は我が国にヴェルトミュラ公爵家を作った。王家が預かっていた公爵の爵位をリュディガー様に渡した。小さな領地もある。
リュディガー様はしばらくはヴェルトミュラ公爵と聖人の二足の草鞋だ。公爵家のことはスティーブとハンナに任せることになった。
ふたりはなんとなくそういうことらしい。
そしてプレル王国の崩壊のはじまりの日までいよいよカウントダウンとなった。
***
あと2話で最終回です。
もうしばらくお付き合いよろしくお願いします。
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