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9話 成り行きでカミングアウトしてしまった
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クマに戻ったツェツィーの魔力は半端なかった。
やはり人間化する時に魔力を使うのでどうしてもそちらに取られてしまうのだろう。
「なんで最初からクマじゃなかったんだ」
「子グマが来たらみんな戸惑うでしょ。人間化したら子供でも黒ローブ着てたら魔導士っぽいしね」
確かにツェツィーはクマの時はかなり小さい。ぬいぐるみと見間違う奴もいるくらい小さいのだ。地方の者達はあまりクマ化している魔導士を見たことがない。ましてやツェツィーは子グマだ。しかも浮いたり、飛んだりしている。いきなりそれはビビる。人間化して治療に当たっていたのはツェツィーの気配りだったのだろう。
仕事を終えたツェツィーは俺の膝の上で、テレーザリアが用意してくれた果実水を美味しそうに飲んでいる。
「テレーザリアの婚約者が助かって良かったね。最初からクマでやっときゃ良かったよ。あの人凄い怪我だったけど、前のリオの怪我に比べたらたいしたことなかったんだけど、今日は朝から魔力をいっぱい使ったからさ、魔力不足で長引いちゃったよ」
「俺達がツェツィーに頼りっぱなしだからな。不甲斐ないよ。ごめんな」
こんな小さな子グマに頼っている自分が情けなくなった。
「そんなことないよ。リオは頑張ってるよ。リオがいなきゃ私ひとりじゃ力を発揮できないもん」
いやいや、慰めてられると余計に凹む。
「でもさ、テレーザリア、婚約してて残念だったね。リオ、テレーザリアに一目惚れだったんでしょ?」
子グマのくせに鋭い。
「いや、一目惚れというわけではないよ。俺が探している人かもしれないと思ったんだ」
「探している人? そっか、言ってたね。その人が見つかったら結婚するの?」
結婚か……。
「結婚したいけど、無理だろうな。きっとその人は俺を恨んでいる。絶対許してはくれないだろう。俺は取り返しのつかないことをしたんだ。誰よりも愛していたのに……」
「ふ~ん。リオ涙出てる。後悔してるんだね」
「うん。魅了の魔法にかかっちまってさ。俺は全てを失った」
ツェツィーは果実水をごくんと飲んで口を開いた。
「でもさ、魅了の魔法なら操られていたんだから、リオのせいじゃないよ。その人がリオを愛していたなら許してくれるんじゃないかな?」
子グマ~。ありがとう。でも悪いのは俺なんだ。
「彼女の父親や兄は魅了の魔法にかからなかった。俺はさ、俺より優秀な彼女が妬ましかったんだ。みんな彼女を褒める。優秀な王太子妃がいれば安泰ですねとか言われてさ。俺なんかいなくてもいいんじゃないかと拗ねてたんだ。その心の隙に入り込まれた。彼女は俺のために寝る間も惜しんで勉強したり、公務をしたりしてくれてたのにな。感謝こそすれ妬むなんて小さいよなぁ」
俺はため息をついた。
ツェツィーは呆れたような顔で俺を見上げている。
「好き過ぎて拗れちゃったんだね。それを早く彼女に言ったらよかったのに」
「えっ? 彼女に俺より優秀で羨ましいって言うのか? 無理だよ。俺にもプライドがある」
ツェツィーはふっと笑う。
「プライドいる? プライドと彼女とどっちが大事? そう言っても彼女はそんなちっさいリオを受け入れてくれたんじゃないかな? プライドなんか捨てて、甘えれば良かったのに」
確かにそうだな。子グマ鋭すぎる。
「それにしてもさ、それっていつの話? 今のリオは魅了の魔法になんかかってないし、全ても失ってない」
お~、俺調子に乗って子グマに色々話してしまった。ヤバい。これ絶対脳内お花畑症候群の変な奴だと思うよな。
きっと妄想だと思っているだろう。まぁ、仕方ない正直に言おう、
「前世だよ。100年くらい前の話。俺はデーニッツ王国の王太子だったんだ。ジンメル王国の間者に魅了の魔法をかけられて、愛していた婚約者を一族郎党処刑した。そしてその間者と結婚し、呆けていたところをジンメル王国に攻め込まれ、デーニッツ王国は崩壊し、俺も処刑されたんだ」
俺は成り行きでツェツィーに全てを話した。
「はぁ~、何言ってんだお前。気は確かか?」
後ろからロルフの声がした。ヤバい。こいつに聞かれるとは。
「まぁ、いいじゃないか。人には色々事情がある」
キースもいたのか。さすがキース、ロルフを黙らせてくれた。
ツェツィーは両手を伸ばし、キースに抱っこをねだる。やっぱり俺よりキースがいいのか?
キースの手がツェツィーの脇を持ち、俺の膝から引っ張り上げる時、ツェツィーが俺の耳元で囁いた。
「婚約者は怒ってないと思うよ。魅了にかかっていたのわかってたんじゃないかな」
へ? まさか?
やっぱりアマーリアがカナリアなのか?
ツェツィーはアマーリアからあの時の話を聞いているのか?
ロルフが俺の肩をガツンと叩く。
「リオ、仕事も済んだし、王都に戻ろう。東の領地の皆さんに挨拶してから帰ろうぜ」
俺も席を立った。
そうだな。早く帰ってアマーリアに会いたい。
帰ったらすぐにアマーリアに会いに行こう。
俺は希望に胸を膨らませた。
やはり人間化する時に魔力を使うのでどうしてもそちらに取られてしまうのだろう。
「なんで最初からクマじゃなかったんだ」
「子グマが来たらみんな戸惑うでしょ。人間化したら子供でも黒ローブ着てたら魔導士っぽいしね」
確かにツェツィーはクマの時はかなり小さい。ぬいぐるみと見間違う奴もいるくらい小さいのだ。地方の者達はあまりクマ化している魔導士を見たことがない。ましてやツェツィーは子グマだ。しかも浮いたり、飛んだりしている。いきなりそれはビビる。人間化して治療に当たっていたのはツェツィーの気配りだったのだろう。
仕事を終えたツェツィーは俺の膝の上で、テレーザリアが用意してくれた果実水を美味しそうに飲んでいる。
「テレーザリアの婚約者が助かって良かったね。最初からクマでやっときゃ良かったよ。あの人凄い怪我だったけど、前のリオの怪我に比べたらたいしたことなかったんだけど、今日は朝から魔力をいっぱい使ったからさ、魔力不足で長引いちゃったよ」
「俺達がツェツィーに頼りっぱなしだからな。不甲斐ないよ。ごめんな」
こんな小さな子グマに頼っている自分が情けなくなった。
「そんなことないよ。リオは頑張ってるよ。リオがいなきゃ私ひとりじゃ力を発揮できないもん」
いやいや、慰めてられると余計に凹む。
「でもさ、テレーザリア、婚約してて残念だったね。リオ、テレーザリアに一目惚れだったんでしょ?」
子グマのくせに鋭い。
「いや、一目惚れというわけではないよ。俺が探している人かもしれないと思ったんだ」
「探している人? そっか、言ってたね。その人が見つかったら結婚するの?」
結婚か……。
「結婚したいけど、無理だろうな。きっとその人は俺を恨んでいる。絶対許してはくれないだろう。俺は取り返しのつかないことをしたんだ。誰よりも愛していたのに……」
「ふ~ん。リオ涙出てる。後悔してるんだね」
「うん。魅了の魔法にかかっちまってさ。俺は全てを失った」
ツェツィーは果実水をごくんと飲んで口を開いた。
「でもさ、魅了の魔法なら操られていたんだから、リオのせいじゃないよ。その人がリオを愛していたなら許してくれるんじゃないかな?」
子グマ~。ありがとう。でも悪いのは俺なんだ。
「彼女の父親や兄は魅了の魔法にかからなかった。俺はさ、俺より優秀な彼女が妬ましかったんだ。みんな彼女を褒める。優秀な王太子妃がいれば安泰ですねとか言われてさ。俺なんかいなくてもいいんじゃないかと拗ねてたんだ。その心の隙に入り込まれた。彼女は俺のために寝る間も惜しんで勉強したり、公務をしたりしてくれてたのにな。感謝こそすれ妬むなんて小さいよなぁ」
俺はため息をついた。
ツェツィーは呆れたような顔で俺を見上げている。
「好き過ぎて拗れちゃったんだね。それを早く彼女に言ったらよかったのに」
「えっ? 彼女に俺より優秀で羨ましいって言うのか? 無理だよ。俺にもプライドがある」
ツェツィーはふっと笑う。
「プライドいる? プライドと彼女とどっちが大事? そう言っても彼女はそんなちっさいリオを受け入れてくれたんじゃないかな? プライドなんか捨てて、甘えれば良かったのに」
確かにそうだな。子グマ鋭すぎる。
「それにしてもさ、それっていつの話? 今のリオは魅了の魔法になんかかってないし、全ても失ってない」
お~、俺調子に乗って子グマに色々話してしまった。ヤバい。これ絶対脳内お花畑症候群の変な奴だと思うよな。
きっと妄想だと思っているだろう。まぁ、仕方ない正直に言おう、
「前世だよ。100年くらい前の話。俺はデーニッツ王国の王太子だったんだ。ジンメル王国の間者に魅了の魔法をかけられて、愛していた婚約者を一族郎党処刑した。そしてその間者と結婚し、呆けていたところをジンメル王国に攻め込まれ、デーニッツ王国は崩壊し、俺も処刑されたんだ」
俺は成り行きでツェツィーに全てを話した。
「はぁ~、何言ってんだお前。気は確かか?」
後ろからロルフの声がした。ヤバい。こいつに聞かれるとは。
「まぁ、いいじゃないか。人には色々事情がある」
キースもいたのか。さすがキース、ロルフを黙らせてくれた。
ツェツィーは両手を伸ばし、キースに抱っこをねだる。やっぱり俺よりキースがいいのか?
キースの手がツェツィーの脇を持ち、俺の膝から引っ張り上げる時、ツェツィーが俺の耳元で囁いた。
「婚約者は怒ってないと思うよ。魅了にかかっていたのわかってたんじゃないかな」
へ? まさか?
やっぱりアマーリアがカナリアなのか?
ツェツィーはアマーリアからあの時の話を聞いているのか?
ロルフが俺の肩をガツンと叩く。
「リオ、仕事も済んだし、王都に戻ろう。東の領地の皆さんに挨拶してから帰ろうぜ」
俺も席を立った。
そうだな。早く帰ってアマーリアに会いたい。
帰ったらすぐにアマーリアに会いに行こう。
俺は希望に胸を膨らませた。
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