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5話 魔獣退治に行くぜ

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 いよいよ討伐に向かう朝が来た。俺は用意をして団体移動魔法口に向かう。

 ここは大人数で移動魔法を使って移動する時に使う場所だ。この場所には魔法陣が敷かれてある。ちなみに少人数での移動はいつでもどこでもできる。ここは主に魔獣討伐の時に使われる。安全の為にあらかじめ登録した者しか使えない。

 騎士達や魔導士達が家族と一緒に来ている。皆、見送りの家族や友達と別れを惜しんでいる。まぁ、討伐といっても1週間もかからないだろう。

 前からアマーリアがツェツィーを抱っこして歩いてくる。アマーリアが討伐前に来るのは初めてかもしれない。ツェツィーはいつも母上と一緒にくるもんな。俺としてはアマーリアの方がいい。アマーリアが見られて嬉しい。福眼福眼。

 やっぱり遠くからでもすぐわかるくらい美しい。

 あの大きな胸に顔を埋めたい衝動にかられる。いや、できればそれ以上……。

「リオ、よだれが出てるよ」

 ツェツィが情けない者を見るような蔑んだ目で俺を見ている。俺は袖でよだれを拭き、アマーリアに挨拶をした。

「おはようございます、アマーリア嬢。お目にかかれて光栄です」

 アマーリアは花がほころぶような笑顔を俺に向けた。あ~、い~。やっぱりアマーリア綺麗だ。好きだ~。俺がじっと見つめたからかアマーリアは頬を染める。

 アマーリアの好きな人ってもしや俺?

 俺が呆けているとアマーリアが声をかけてくれた。

「おはようございます。いつもツェツィーがお世話になっています。今日もツェツィーをお願いします」

 お~、鈴を転がすような声だ。

「姉様、私はお世話になってないよ。リオなんかに私のことお願いしなくていい」

「ツェツィー、人はね、自分が気がついていないかもしれないところでいろんな人のお世話になっているの。そんなこと言うものじゃないわ」

 お~、なんてよくできた考えなんだ。姿も心も美しい。

「はいはい。じゃあ、行ってくるわ。キース!」

 ツェツィーに呼ばれてキースが来た。

「姉様、私、キースにはお世話になってるの」

「そうね。キース、いつもありがとう」

 キースの奴、うれしそうだなぁ。

「いや、私こそツェツィーに助けられてばかりなんだ」

「そんなことないよ。キースは凄いよ」

 ツェツィーの奴、アマーリアの前でやたらキースを褒める。なんでだ?

 まさか? キースの事が好きなのか?

 いや、無い。それはないな。キースとツェツィーは10歳も離れている。キースはロリコンではないはずだ。

 ツェツィーの片思いか?

 へへへ、そりゃ面白い。

 キースに抱っこされているツェツィーを見ながらヘラヘラしていたら、ツェツィに気持ち悪いものを見るような目で見られた。

「キモい」

「お前、キースが好きなのか?」

「馬鹿じゃない? あっ馬鹿か」

「も~、照れなくっていいって」

「キース、殺していい?」

「ダメ。一応王子だから」

 一応ってなんだ?

「リオ、まさか知らないわけじゃないよな」

 何を知らないんだ?

 俺が首を捻っているとキースとツェツィーが同時にため息をついた。

「私とツェツィーは従兄妹だよ。ツェツィーは3歳から討伐に一緒に参加してるから、身内の私が世話をしているんだ」

「そう、お世話してもらってるの」

 従兄妹? そういえば、そんな事聞いた事があったような……。

「王子なら、貴族の親戚関係は頭にいれときなさい。忘れたなんて恥ずかしいよ」

 キースに抱っこされたツェツィーは、俺を見上げて吐き捨てた。

 確かに俺の失態だ。

「どうした、またツェツィーに負けたのか? 弱い王子だなぁ」

 後ろからやってきたロルフはガハハと笑いながら俺の肩をぽんと叩く。

 くそっ! この怒りは魔獣にぶつけよう。

 俺達は移動魔法で東の領地に移動した。


◇◇◇

 
 着いた瞬間、ツンとした匂いが鼻に来た。ロルフが鼻をつまんだ。

「瘴気の匂いが酷いな」

 ツェツィーも顔をしかめる。

「うん。近いね。視界も悪い」

 かなりひどい状態のようだ。もっと詳しいことを知りたい。

「とりあえず領主に会おう」

 俺達は領主の屋敷に向かった。


 領主の話では、1週間ほど前から瘴気が漂いだし、魔獣が湧き出してきたそうだ。それほど強い魔獣ではないが、田畑を荒らしたり、家畜を襲うので困っていた。そうしているうちに今度は強い魔獣が現れ、人を襲いだした。今は皆、避難しているそうだ。

「そうですが、では、できるだけ早く魔獣を退治して、瘴気を祓います。しっかり浄化したら100年は大丈夫なはずです」

「よろしくお願いします」

 領主は頭を下げた。

「お疲れでしょう、軽食を用意しています。皆さん、召し上がって下さい」

「ありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきます」

 メイド達が軽食を運んできた。中にドレスを着た女性がいる。夫人と娘かな? 顔を上げると娘と目が合った。

 可愛い! なんて愛らしいんだ。ブルネットの豊かな髪。吸い込まれそうなエメラルドグリーンの瞳。そして大きな胸。細い腰。俺は固まってしまった。

「どうぞ」

 娘は俺にお茶を淹れてくれた。

「娘のテレーザリアです。自慢の娘なんですよ」

 領主は親バカな顔をしている。

「本当に美しいですね」

 隣にいるロルフも見惚れている。

 まさか、カナリア? ひょっとするとテレーザリアがカナリアか?

 ここで再会する為に神様がこの場を設けたのか?

 俺は神に感謝した。


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