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マリウス、ラメルテオンに戻る(マリウス視点)

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「ということなんです。どう思いますか?」

 私はテオと一緒にゾニサミドの回復師に言われた事をみんなに伝えた。

「いいと思う。国民はカールハインツ元殿下に良いイメージは持ってないだろう? はじめからいなかったということにすればちょっと不自然だし、幼い頃に避暑地にでも行った時に湖に落ちて亡くなったという記憶を植え付ければ良いんじゃないか?」

 プレジデントのマーロックス侯爵は言う。

「そうね。瘴気だらけの湖に落ちて魔獣化しちゃったんだし、エルのおかげでとりあえずは人間に戻ってるんでしょう? まだ意識は戻らないの?」

 マチルダ姉様は苦々しい顔で言う。姉上と仲が良かったマチルダ姉様は姉上に迷惑ばかりかけていた元殿下をよく思っていない。

 元王妃は国民に人気があるのでまだ利用しようとしている夫のマーロックス侯爵にちょっと腹を立てている。

「元王妃ももういいんじゃない? 心を病んでいるならそっとしておいてあげたら?」

「そうね。私もそう思う。何も事実をねじ曲げてまで元王妃様を引っ張り出さなくてもなんとかなるわよ」

 テオの婚約者のペネロペが言う。

 どうやら女子達は元王妃はいらないという考えのようだ。

「私は元王妃は利用価値があると思うんだ。イメージも良いしな。テオとマリウスはどう思う?」

「私はもういいんじゃないかと思う。元王妃にしてもらいたい事ってマーロックス夫人やペネロペでできると思います」

「私は……姉上が回復するまで結論は先延ばしでいいかなと」

「そういえばエルフリーデ嬢の具合はどうなんだ?」

 マーロックス侯爵か思い出したかのように聞いてきた。

「まだ完全回復ではないようですが元気そうでしたよ。婚約者がかなり過保護で狭量なようで、守られていましたね。番なんだそうです」

「番?」

「はい、よくわからないですが獣人にとっては唯一無二の愛する者らしいですよ」

「兄の奥様も獣人で番だと聞きましたわ。まだ私はお会いしたことがないのですが、耳が頭の上にあったり、しっぽがあったりするのかしら?」

 ペネロペ嬢は不安そうだ。

「エアハルト様の夫人とお会いしたよ。見た目は我々と変わらなかった。耳も同じ位置だし、しっぽもなかった。なぁ」

 私は一緒に行ったテオドール卿に振った。テオドール卿とペネロペ嬢は婚約者だ。

「あぁ、そうだよ。獣人の国に行って初めて我々の思い込みだってわかった。見た目は同じだったからね。ただ力はすごいみたいだ。みんな普通に魔法を使うようだ」

「さっき言っていた回復師はその全員が魔法を使う国で回復を仕事にしている人だからものすごいらしい。その人でも心の回復は難しいといってたからなぁ」

 やはり元王妃は諦めるべきなのだろう。

 姉上はどう思うのかな?

 あの人のことだ、このまま知らん顔はできないはず。

「やっぱり姉上が回復するまで待ちましょう」

 私はみんなの顔を見た。

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