【完結】婚約解消したら消されます。王家の秘密を知る王太子の婚約者は生き残る道を模索する

金峯蓮華

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瘴気のモヤ

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 私は自分の中から魔力を放出し、しばらく浄化魔法を流してみた。

 それなのに、身体の中の瘴気は浄化されるどころか増えているようだ。

 心臓にはまだ届いていないが身体中に蔓延している。

 まるで、私の魔法が栄養となり、中の瘴気が増えているようだ。

 こんな事は初めてだ。瘴気はもちろん、魔獣もこの魔法で消える時もある。
 カール様の中にある瘴気はいつもの瘴気とは違うのだろうか?

 どうしてかしら? なんで効かないんだろう?
 
 カール様の顔色は相変わらず悪い。そして、腕や足に黒いあざのようなものが広がっている。

 これはなんだろう?

 私が首を捻りながら、手をカール様に近づけた。すると意識がなく眠っているはずのカール様の手が掛けている布団から出ていきなり私の手首を掴んだ。

 いきなりのことで頭が真っ白になる。意識が戻っているわけじゃない。瘴気も消えていない。
手だけが動いている。すごい力で私の手首を握る。痛い。その手には瘴気の黒いもやが絡みついている。

 まさか?

「カールやめるんだ! 手を離せ!」

 元国王陛下がカール様に駆け寄り、カール様の手を私の手首から離そうしてくれている。元陛下の手がカール様の手を掴んだ。

バン!

 その瞬間、元国王陛下の手は払われ、身体が弾きとばされて壁に当たった。

「「陛下!」」

私と元王妃様はほぼ同時に叫んだ。

「カールどうしたの! やめなさい。お願いやめて~!」

 元王妃様は泣き叫んだ。

 その声は護衛騎士たちが集まってきた。

 しかし、相手はカール様だ。だれも手出しはできない。

 私の手首を掴んだまま、カール様は目を開け、起き上がった。

 そして今度は「うるさい」と言って元王妃様を殴りつけた。カール様は倒れ込んだ元王妃様を蹴り飛ばした。

 元王妃はぐったりしている。

「王妃様!」

 私は駆け寄ろうとしたが、腕を拘束されている。

 凄い力だ。カール様はこんなに力はなかったはず。

その力から逃れようともがく。

しかし、カール様は私を抱え、窓から外に飛び降りた。

 おかしい。こんなのカール様にできるわけが無い。明らかに別人だ。これは誰だ?

 私はカール様の身体から離れようと魔法を繰り出す。

 だが私の魔法はみなカール様に吸収されていく。

 何度も試みるがだめだ。
そのうち、身体の中にあった瘴気が外に一緒に溢れ出した。

 しまった。私は魔力を与えていたのか?

 カール様の身体を黒いもやが包む。そのモヤは私の体をも包もうとする。

「ディート様! 助けて!」

 無意識に叫んだ。

 ディート様に届くわけがない。

 黒いモヤに飲み込まれた私は意識を失った。
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