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帰ります
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突然ユリウス様が迎えに来た。
「ヴィオ、我慢できなくなって迎えに来てしまった」
そう言っていきなり私を抱きしめた。
まぁ、そりゃ、私もそろそろ会いたくなってはいたのだけれど、まさか迎えにくるなんて。
「お仕事は大丈夫なのですか?」
「仕事? 騎士団か。辞めると言っただろう」
「本当にお辞めになってしまわれたのですか」
「ああ、ヴィオと結婚したら公爵を継ぐつもりだ。結婚式まであと少しだろう。準備もあるし、騎士団は辞めた」
本気だったのか?
「前にも言ったと思うが、私はヴィオに好かれたいから騎士になっただけだ。ヴィオは私の全てだからね」
みんながいる前でそんなことを言うのは勘弁してほしい。
「もう、ユリウスは昔から、ヴィオのことが好きだものね」
お母さまが笑う。
「ヴィオが生まれた時からずっとヴィオと結婚するって言っていたもの。騎士になったのも、ヴィオが昔、騎士とお姫様が出てくる絵本に夢中になっていて、ユリウスに騎士になったら結婚してあげるって言ってからだものね」
初耳だ。
「お母さま、それ本当ですの?」
隣にいたお父さまも笑顔だ。
「本当だよ。ユリウスはあれからすぐに剣の稽古をはじめて、騎士団にはいり、最年少で団長になったものな。愛の力はすごいよ。まぁ、途中で邪魔が入ったが、神様はユリウスに微笑んだな」
もう、お母さまもお父さまもそんなことを言って恥ずかしいわ。
ルー様が一歩前に出た。
「しかし、それはアルブラン卿の思いでしょう。ヴィオはどうなんだ? アルブラン卿と結婚したいのか?」
「そうよ。ヴィオお姉さまは結婚したくないかもしれないわ」
ルー様とライザはどうしてそんなことを言うのだろう。
「兄上、ライザ、ヴィオはユリウス様と結婚したいと思っていますよ。前に私にそう言っていた。おふたりはとても仲が良いし、なぜ兄上もライザもヴィオが結婚したくないと思うのか、私はその方が不思議ですよ」
フィルの言葉にふたりはたじろいたようだ。
「そう言えば兄上に縁談が来ているそうですね。リリアーナが怒り狂ってましたよ。リリアーナは私の婚約者なのに兄上が好きですからね。そろそろしかるべき相手と結婚したらいかがですか?」
えっ? ルー様に縁談が来てるのか。リリアーナには悪いけどうまくいくといいな。
「ルー様、おめでとうございます」
「まだ決まったわけじゃない」
私が祝福の言葉を口にしたらルー様の機嫌が悪くなった。
「もう、決まっている」
国王陛下の重々しい声が響いた。
「決まっているとはどういうことですか!」
ルー様が声を荒げた。
「北の大国からの申し出だ。断るわけにはいかない。それに断る理由もない。お前は時期国王だ。国の利益を考えろ。リリアーナのことが好きならフィルとの婚約は解消させて側妃にすれば良い」
あら~、なんだか凄い話になってきたわ。
「兄上、取込み中の様なので、私達は帰ります。話の続きは家族でどうぞ」
お父さまがそう言って、私達はそそくさと退場した。
*部屋を出たあとのリカルド、メトロファン伯爵、ユリウスの会話
リカルド「上手くいきましたね」
伯爵「そうだな」
ユリウス「さぁ、さっさと移動魔法で帰りましょう」
「ヴィオ、我慢できなくなって迎えに来てしまった」
そう言っていきなり私を抱きしめた。
まぁ、そりゃ、私もそろそろ会いたくなってはいたのだけれど、まさか迎えにくるなんて。
「お仕事は大丈夫なのですか?」
「仕事? 騎士団か。辞めると言っただろう」
「本当にお辞めになってしまわれたのですか」
「ああ、ヴィオと結婚したら公爵を継ぐつもりだ。結婚式まであと少しだろう。準備もあるし、騎士団は辞めた」
本気だったのか?
「前にも言ったと思うが、私はヴィオに好かれたいから騎士になっただけだ。ヴィオは私の全てだからね」
みんながいる前でそんなことを言うのは勘弁してほしい。
「もう、ユリウスは昔から、ヴィオのことが好きだものね」
お母さまが笑う。
「ヴィオが生まれた時からずっとヴィオと結婚するって言っていたもの。騎士になったのも、ヴィオが昔、騎士とお姫様が出てくる絵本に夢中になっていて、ユリウスに騎士になったら結婚してあげるって言ってからだものね」
初耳だ。
「お母さま、それ本当ですの?」
隣にいたお父さまも笑顔だ。
「本当だよ。ユリウスはあれからすぐに剣の稽古をはじめて、騎士団にはいり、最年少で団長になったものな。愛の力はすごいよ。まぁ、途中で邪魔が入ったが、神様はユリウスに微笑んだな」
もう、お母さまもお父さまもそんなことを言って恥ずかしいわ。
ルー様が一歩前に出た。
「しかし、それはアルブラン卿の思いでしょう。ヴィオはどうなんだ? アルブラン卿と結婚したいのか?」
「そうよ。ヴィオお姉さまは結婚したくないかもしれないわ」
ルー様とライザはどうしてそんなことを言うのだろう。
「兄上、ライザ、ヴィオはユリウス様と結婚したいと思っていますよ。前に私にそう言っていた。おふたりはとても仲が良いし、なぜ兄上もライザもヴィオが結婚したくないと思うのか、私はその方が不思議ですよ」
フィルの言葉にふたりはたじろいたようだ。
「そう言えば兄上に縁談が来ているそうですね。リリアーナが怒り狂ってましたよ。リリアーナは私の婚約者なのに兄上が好きですからね。そろそろしかるべき相手と結婚したらいかがですか?」
えっ? ルー様に縁談が来てるのか。リリアーナには悪いけどうまくいくといいな。
「ルー様、おめでとうございます」
「まだ決まったわけじゃない」
私が祝福の言葉を口にしたらルー様の機嫌が悪くなった。
「もう、決まっている」
国王陛下の重々しい声が響いた。
「決まっているとはどういうことですか!」
ルー様が声を荒げた。
「北の大国からの申し出だ。断るわけにはいかない。それに断る理由もない。お前は時期国王だ。国の利益を考えろ。リリアーナのことが好きならフィルとの婚約は解消させて側妃にすれば良い」
あら~、なんだか凄い話になってきたわ。
「兄上、取込み中の様なので、私達は帰ります。話の続きは家族でどうぞ」
お父さまがそう言って、私達はそそくさと退場した。
*部屋を出たあとのリカルド、メトロファン伯爵、ユリウスの会話
リカルド「上手くいきましたね」
伯爵「そうだな」
ユリウス「さぁ、さっさと移動魔法で帰りましょう」
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