45 / 50
42話 断罪?
しおりを挟む
「今年、デビュタントを迎え、貴族の仲間入りをする者達を心から祝う。皆も祝ってやって欲しい。そして導いてやって欲しい」
国王陛下の挨拶の後、陛下と王妃様のファーストダンスが終わり、貴族達のダンスが始まった。私もアルトゥール様と踊る。
大きなアルトゥール様と小さな私のダンスはなかなか面白いようで、注目を集めてしまった。
「ディーママ、身体浮いていたわよ」
アンネリーゼはくすくすと笑う。
「ディーは小さくて軽いから、つい持ち上げてしまったよ」
アルトゥール様は申し訳なさそうに頭を掻いている。
私は楽で良かったけどね。
顔見知りと挨拶をしたり、美味しいご馳走を食べたり、パーティーを皆楽しんでいる。
ふと、王家の方々の席の辺りを見ると、陛下と目が合った。陛下はニコリと笑い頷く。
「そろそろみたいね」
「そうだな」
アルトゥール様は私の腰を抱き、自分の方に身体を寄せた。
「皆の者、今日の佳き日に皆に知らせたい事がある」
壇上に国王陛下と王妃様、そして王太子のヘンリー兄様が姿を見せた。
「皆の者、わしは、来年度末をもって勇退し、このヘンリーに国王の座を渡すことにする。そして、孫のアビゲイルがヘンリーの次の王太子になる。アビゲイルは我が国始まって以来、初の女性王太子、そしていずれは女王になる。我が国の新しい歴史の幕開けだ。皆でヘンリーとアビゲイルを盛り立ててやって欲しい」
陛下に紹介され、アビゲイルとラウレンツ兄様が壇上に上がる。
「アビゲイルは、前々からの婚約者であるこのラウレンツ・アイゼンシュタットを王配に迎える」
お~、兄様は王配になるのね。
王家の席にいるベアトリス様とギルバートは驚いたような表情をしている。ベアトリス様が立ち上がった。
「お待ちください! 次期王太子はギルバートではないのですか?」
陛下は胡散臭く口角を上げる。
「それがな、最近になってギルバートが王家の血を引いていない事がわかったのだ」
貴族達が陛下の言葉にざわざわし出した。
「な、何を仰っているのですか、悪い冗談はおやめください」
ギルバートが怒り出した。
「皆の者、よく聞くがよい。ギルバートはここにいるベアトリスと隣国の魔導士、キース・フェラーとの間に産まれた子供なのだ。アビゲイルとは双子でも何でもない。キース・フェラーは髪と瞳の色がヘンリーと同じだったせいで、家族を人質に取られ、子を成すことを強制されたそうだ。隣国の王は我が国とは血の繋がらないギルバートを国王にし、私やヘンリーを暗殺し、国を乗っ取るつもりだったらしい。よって、ベアトリスは国家反逆罪とし、ベアトリスとギルバートは隣国に強制送還することにした」
「陛下、何を仰っているのですか。ギルバートはヘンリー様のお子です!」
ベアトリスが慌てて否定する。
「まだ言うか。ベアトリス、諦めろ。すでに鑑定魔法により、ギルバートとキース・フェラーの親子鑑定済みだ。キースは認めた。そして潔く消えたぞ。それにそなたとの不貞も認めた」
「そ、そんな。私は……」
「私には唯一無二と魔法で契りを結んだ印がある。それゆえに誓いを立てた人以外とは閨事はできない。そなたと契りを交わすことは不可能なんだ」
ヘンリー兄様がベアトリスにしれっと話す。
「魔道具でそなたらの逢瀬の証拠は押さえている。恥ずかしくなければこの場で晒しても良いが。キースはそなたが気に入り国から連れてきたのであろう。髪と瞳の色を魔法で変え、名前まで変えて、親を人質にされれば従うしかないわな。可哀想に」
陛下は蔑むような目でベアトリスを見ている。
「ベアトリスとギルバートを連れていけ」
陛下の言葉に騎士がふたりを拘束し、連れていく。
「皆の者、とんだ茶番を見せてしまったな。まぁ、そういうことだ。隣国よりの貴族達はなんらかの処分があるやもしれん。身に覚えのある者は首を洗って待っておれ」
陛下は高らかに笑って、話を続ける。
「国家反逆罪であるベアトリスとヘンリーは離縁となる。ヘンリーに新たな妃が必要だな。まぁ、それはまたおいおいだがな。さぁ、皆の者、パーティーの続きを楽しんでくれ。音楽を頼む。アビー、ラウ!」
音楽が鳴りだすとアビゲイルとラウレンツ兄様がホールに出て踊り出した。
ふたりの優雅なダンスに皆うっとりしている。
国王陛下上手いなぁ。
このダンスで先程の茶番劇が影を潜めた。
◆◆◆
手筈通り、ベアトリス様とギルバートは、あらかじめ捕らえられていた、隣国からついてきた使用人達、スパイ達とともに、移動魔法で強制送還された。
強制送還と言ってもただ移動魔法で王宮前に置き去りにしただけだ。
せめてもの情けでベアトリス達の荷物も一緒に移動させた。
「ちょっと待ってよ。どういう事?」
「母上、どういう事ですか? 説明してください!」
◇◇◇
「なんだかあっけなかったね。もっとウェブ小説の断罪シーンみたいなざまぁを期待していたのだけどなぁ」
ウェブ小説? ざまぁ? なんだろう?
アンネリーゼの言うことは時々難しい。
「もっと、ベアトリス様が言い訳したり、渋ったりすると思ったのに」
「そうね。伯父様が言う隙を与えなかったからね。さすが国王、何も言わせない空気感すごかったわよね」
「うん。威圧感半端なかった。ベアトリス様固まってたよね」
私は屋敷に戻ってから、サロンでアンネリーゼとお茶を飲みながらパーティーの時の話をしている。
アルトゥール様はまだ残って、フォローをしているようだ。
「アビゲイル様と伯父さんのダンス素敵だったなぁ。私もダンス習おうかな?」
「いいと思うわ。領地の子供達集めてダンス教室しようかしら?」
「いいね~」
王宮では男性達が隣国から攻め込まれた時のシュミレーションや段取りをしているというのに、私達は気楽にお菓子をぱくつきながらお茶を飲み、話に花を咲かせていた。
国王陛下の挨拶の後、陛下と王妃様のファーストダンスが終わり、貴族達のダンスが始まった。私もアルトゥール様と踊る。
大きなアルトゥール様と小さな私のダンスはなかなか面白いようで、注目を集めてしまった。
「ディーママ、身体浮いていたわよ」
アンネリーゼはくすくすと笑う。
「ディーは小さくて軽いから、つい持ち上げてしまったよ」
アルトゥール様は申し訳なさそうに頭を掻いている。
私は楽で良かったけどね。
顔見知りと挨拶をしたり、美味しいご馳走を食べたり、パーティーを皆楽しんでいる。
ふと、王家の方々の席の辺りを見ると、陛下と目が合った。陛下はニコリと笑い頷く。
「そろそろみたいね」
「そうだな」
アルトゥール様は私の腰を抱き、自分の方に身体を寄せた。
「皆の者、今日の佳き日に皆に知らせたい事がある」
壇上に国王陛下と王妃様、そして王太子のヘンリー兄様が姿を見せた。
「皆の者、わしは、来年度末をもって勇退し、このヘンリーに国王の座を渡すことにする。そして、孫のアビゲイルがヘンリーの次の王太子になる。アビゲイルは我が国始まって以来、初の女性王太子、そしていずれは女王になる。我が国の新しい歴史の幕開けだ。皆でヘンリーとアビゲイルを盛り立ててやって欲しい」
陛下に紹介され、アビゲイルとラウレンツ兄様が壇上に上がる。
「アビゲイルは、前々からの婚約者であるこのラウレンツ・アイゼンシュタットを王配に迎える」
お~、兄様は王配になるのね。
王家の席にいるベアトリス様とギルバートは驚いたような表情をしている。ベアトリス様が立ち上がった。
「お待ちください! 次期王太子はギルバートではないのですか?」
陛下は胡散臭く口角を上げる。
「それがな、最近になってギルバートが王家の血を引いていない事がわかったのだ」
貴族達が陛下の言葉にざわざわし出した。
「な、何を仰っているのですか、悪い冗談はおやめください」
ギルバートが怒り出した。
「皆の者、よく聞くがよい。ギルバートはここにいるベアトリスと隣国の魔導士、キース・フェラーとの間に産まれた子供なのだ。アビゲイルとは双子でも何でもない。キース・フェラーは髪と瞳の色がヘンリーと同じだったせいで、家族を人質に取られ、子を成すことを強制されたそうだ。隣国の王は我が国とは血の繋がらないギルバートを国王にし、私やヘンリーを暗殺し、国を乗っ取るつもりだったらしい。よって、ベアトリスは国家反逆罪とし、ベアトリスとギルバートは隣国に強制送還することにした」
「陛下、何を仰っているのですか。ギルバートはヘンリー様のお子です!」
ベアトリスが慌てて否定する。
「まだ言うか。ベアトリス、諦めろ。すでに鑑定魔法により、ギルバートとキース・フェラーの親子鑑定済みだ。キースは認めた。そして潔く消えたぞ。それにそなたとの不貞も認めた」
「そ、そんな。私は……」
「私には唯一無二と魔法で契りを結んだ印がある。それゆえに誓いを立てた人以外とは閨事はできない。そなたと契りを交わすことは不可能なんだ」
ヘンリー兄様がベアトリスにしれっと話す。
「魔道具でそなたらの逢瀬の証拠は押さえている。恥ずかしくなければこの場で晒しても良いが。キースはそなたが気に入り国から連れてきたのであろう。髪と瞳の色を魔法で変え、名前まで変えて、親を人質にされれば従うしかないわな。可哀想に」
陛下は蔑むような目でベアトリスを見ている。
「ベアトリスとギルバートを連れていけ」
陛下の言葉に騎士がふたりを拘束し、連れていく。
「皆の者、とんだ茶番を見せてしまったな。まぁ、そういうことだ。隣国よりの貴族達はなんらかの処分があるやもしれん。身に覚えのある者は首を洗って待っておれ」
陛下は高らかに笑って、話を続ける。
「国家反逆罪であるベアトリスとヘンリーは離縁となる。ヘンリーに新たな妃が必要だな。まぁ、それはまたおいおいだがな。さぁ、皆の者、パーティーの続きを楽しんでくれ。音楽を頼む。アビー、ラウ!」
音楽が鳴りだすとアビゲイルとラウレンツ兄様がホールに出て踊り出した。
ふたりの優雅なダンスに皆うっとりしている。
国王陛下上手いなぁ。
このダンスで先程の茶番劇が影を潜めた。
◆◆◆
手筈通り、ベアトリス様とギルバートは、あらかじめ捕らえられていた、隣国からついてきた使用人達、スパイ達とともに、移動魔法で強制送還された。
強制送還と言ってもただ移動魔法で王宮前に置き去りにしただけだ。
せめてもの情けでベアトリス達の荷物も一緒に移動させた。
「ちょっと待ってよ。どういう事?」
「母上、どういう事ですか? 説明してください!」
◇◇◇
「なんだかあっけなかったね。もっとウェブ小説の断罪シーンみたいなざまぁを期待していたのだけどなぁ」
ウェブ小説? ざまぁ? なんだろう?
アンネリーゼの言うことは時々難しい。
「もっと、ベアトリス様が言い訳したり、渋ったりすると思ったのに」
「そうね。伯父様が言う隙を与えなかったからね。さすが国王、何も言わせない空気感すごかったわよね」
「うん。威圧感半端なかった。ベアトリス様固まってたよね」
私は屋敷に戻ってから、サロンでアンネリーゼとお茶を飲みながらパーティーの時の話をしている。
アルトゥール様はまだ残って、フォローをしているようだ。
「アビゲイル様と伯父さんのダンス素敵だったなぁ。私もダンス習おうかな?」
「いいと思うわ。領地の子供達集めてダンス教室しようかしら?」
「いいね~」
王宮では男性達が隣国から攻め込まれた時のシュミレーションや段取りをしているというのに、私達は気楽にお菓子をぱくつきながらお茶を飲み、話に花を咲かせていた。
256
お気に入りに追加
3,041
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

誰も残らなかった物語
悠十
恋愛
アリシアはこの国の王太子の婚約者である。
しかし、彼との間には愛は無く、将来この国を共に治める同士であった。
そんなある日、王太子は愛する人を見付けた。
アリシアはそれを支援するために奔走するが、上手くいかず、とうとう冤罪を掛けられた。
「嗚呼、可哀そうに……」
彼女の最後の呟きは、誰に向けてのものだったのか。
その呟きは、誰に聞かれる事も無く、断頭台の露へと消えた。

断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」
「恩? 私と君は初対面だったはず」
「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」
「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」
奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。
彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。
112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。
ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。
ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。
※完結しました。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる