【完結】妻に逃げられた辺境伯に嫁ぐことになりました

金峯蓮華

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35話 鑑定できました

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 **わかりにくいとのお声をいただいたので、加筆しております。
ギルバートの父の名前を間違えておりました。修正しています。


 私はアルトゥール様、アンネリーゼと一緒に登城した。

 王太子妃とギルバートに拝謁する場をヘンリー殿下が作ったのだ。

 拝謁と言ってもそんな仰々しいものではなく、ただアンネリーゼをギルバートの婚約者にどうかという顔合わせという感じで会った。もちろん嘘だ。

 アンネリーゼはすでにコンラートの息子と婚約している。近い距離でより詳しく鑑定する為に王太子妃とギルバートをたばかる事にしたのだ。

 先日、こっそり登城し、ステータスボードは見ているのだが、今回はあの時仕掛けた魔道具の確認をしたいとのアンネリーゼの意向もある。
 手に入れた髪の毛の鑑定も進んでいるが確実な決め手や証拠がほしいとのこと。国王にも同席してもらい、王太子妃の態度も見てみたかった。

 王太子妃は終始機嫌が悪かった。ギルバートの妃には母国の令嬢をと父親である隣国の国王に言われているとアビゲイルが言っていた。国王にこの縁談をまとめられては困るのだろう。

「辺境伯令嬢が次期王太子と婚約など私は反対ですわ。田舎者に王太子妃が務まるかしらね」

「私ももっと華やかで美しい令嬢がいい。こんな地味な女はいらない」

 言いたい放題だ。

「お祖父様、もういいですか? 私はこんな女とは婚約しません」

「私も拒否いたしますわ。ギルバートの妃は隣国からと考えております。まぁ、側妃か愛妾くらいなら娶ってあげてもよろしくてよ。失礼」

 扇子で口元を隠しながら失礼な事を言い、王太子妃とギルバートは退室した。

 国王がアンネリーゼに頭を下げた。

「アンネリーゼ、失礼なことを言い申し訳ない」

「陛下、頭をお上げください。私は大丈夫です。それより前よりもっと色々なことがわかりました」

 色々な事?

 アンネリーゼは前世の知識で魔導士に作らせた録画というその場の状態をそのまま映しとる魔道具で隠し撮りをしていた映像を再生させながら説明を始めた。

 その映像にはステータスボードというものもちゃんと写っていて、私達は聞いてはいたが、初めて見るステータスボードに釘付けとなった。

 アンネリーゼは映像を止めた。

「ここを見てください。ギルバート殿下の父親はやはり、ヘンリー殿下ではありません。キース・フェラーとあります。そして右上の端にいるこの男性を見てください」

 アンネリーゼの言葉に私達は右上の端を見た。

「この男性のステータスボードを見てください。名前がキース・フェラーです。このカッコ内のザシャという偽名で王太子妃付きの使用人として王太子妃の傍にいるようです」

「しかし、この者は髪も瞳も茶色ではないか?」

 国王陛下が指摘する。

 アンネリーゼはニヒっと笑った。

「ここを見てください。本来の髪色と瞳の色が書いてあります。あと、この隣国の国旗が書いてある者は皆、隣国のスパイと見て間違いないでしょう」

 思ったよりスパイが多くて驚いた。

「こんなに近くにギルバートの実の父親がいるとは驚いたな」

「そうですね。ふたりが不貞をはたらいている証拠が取れればいいのですが。あと、キースの髪の毛がほしいですね」

 陛下とヘンリー兄様は顔を見合わせてため息をついている。

「王太子妃殿下の部屋に魔道具を仕込んでおきました。回収した時何が映っているか楽しみですね」

 アンネリーゼはクスりと笑った。

◇◇◇

 私達は移動魔法でグローズクロイツ領にある自宅に戻ってきた。

「それにしても王太子妃がギルバート殿下の実の父を王妃宮に引っ張り込んでいたとは驚いたな」

「ずっと不貞をはたらいていたのかしら?」

 アンネリーゼは私達の話にふふふと笑う。

「1週間後、設置した魔道具を回収して、映っている映像を見るのが楽しみですね」

「そうだな。不貞をして生まれた子供を殿下の子と偽った罪は重い。王太子妃は国家反逆罪だな」

 国家反逆罪か。確かに国を乗っ取るつもりなのだからそうだな。

「それにしてもあのふたり、言いたい放題だったな。陛下が謝ってくれたが、まだ腹の虫がおさまらない」

 アルトゥール様は怒っているようだ。

「私もアルトゥール様がぎゅっと手を握ってくれていなければあの二人を殴っているところでしたわ」

 本当にぶん殴りそうだった。
「ふたりともよく頑張りました。暴力では何も解決しません。暴力を受ける以上のもっと酷い目に合わせましょう」

 アンネリーゼは言われた当人だからかなり怒っている。

 暴力を受ける以上の酷い目とはなんだろう?

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