【完結】妻に逃げられた辺境伯に嫁ぐことになりました

金峯蓮華

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29話 パーティーの誘い

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**若干修正いたしました。

 
 王宮から王太子殿下の子供達の誕生日パーティーの招待状が届いた。

 私にとってはいとこの子供達、ギルバートとアビゲイルは15歳になる。

 国王陛下と私の母は兄妹ではあるが、一番上と一番下なので、歳がかなり離れている。それゆえに従兄妹でも王太子のヘンリー兄様より、子供達の方が年が近いのだ。

 アビゲイルは良い子なのだが、ギルバートは昔からわがままで自分の思い通りにならないと気が済まない。傲慢で自己中な嫌な奴なのだ。
 隣国の王女だった母親が嫡男だからと溺愛しているので、なんでも自由になり、誰のいうことも聞かない困った存在だった。
 元の性格は悪くないと思うのだが母親のせいで嫌なやつとして出来上がってしまった。

 あんな奴が次期王太子とは嘆かわしいと周りの者達がこっそり話していると母から聞いた。

 アルトゥール様がお茶を一口飲み、カップを置いた。

「ふたりの15歳の誕生日パーティーだから、デビュタントも兼ねているようだな。かなり大きな規模で行われるようだ。辺境伯特権で欠席もできるが、どうする?」

「そうね。久しぶりにヘンリー兄様やアビーにも会いたいわね。でもギルやベアトリス姉様に会うのは嫌だし、どうしようかな」

 アビゲイルとヘンリー兄様は好きだが、王太子妃のベアトリス姉様と甥のギルバートは好きではない。面倒なのでできれば欠席したい。

 辺境伯はなかなか領地を空けられないということもあり、辺境伯特権で王都の社交にでなくても良いらしいのだが、国王陛下である伯父や王妃殿下の伯母はこの辺境の地が安全になったと知っているので、この特権はもう使えないかもしれない。


 隣で焼き菓子を頬張っていたアンネリーゼがゴクンとそれを飲み込み、口を開いた。

「うちの領地産のドレスを着て、宣伝してくればどうですか?」

 アルトゥール様はアンネリーゼの言葉に大きく頷く。

「そうだな。リーゼの光魔法で早く育てた蚕達から良い糸が取れていて、良い布地に仕上がっているようだ。ドレスに仕立て、ディーと母上、義母上に着て貰えば宣伝になる。リーゼ、仕立ては間に合いそうか?」

「私やお針子さん達に増強魔法をかけて貰えばすぐ仕上がるわ。早速デザインを決めましょう」

 父娘ふたりで勝手に盛り上がっている。私は行きたくないんだけど、領地の産業のためなら仕方ないか。

「魔石と鉱山で採れた宝石を組み合わせてアクセサリーを作るのもありですね。彫金職人達に制作を依頼しましょう」

 7歳とは思えないアンネリーゼはドレスやアクセサリーの提案をする。もう任せておけば良いな。

「では、出席で返事をしておくよ」

 アルトゥール様はそう言って席を立った。

 私まだ行くとは言ってないんだけどね。


サロンでアンネリーゼとふたりになった。

「行きたくないんでしょう?」

 アンネリーゼがからかう。

「嫌いなのよ。王太子妃とギルのことが。きっとリーゼもあったら嫌いになるわ。王太子妃もギルもしょうもない奴らなの。あいつの誕生日を祝うパーティーでしょう? 気乗りしないわ」

「まぁ、大人なんだから、そう言わないでよ。領地のためにドレスやアクセサリー、ワイン、果実水を宣伝してきて」
「はいはい。わかりました」

 全くこれではどちらが大人なのかわからない。私はため息をついた。

◇◇◇

 デザイナーが描いてきたデザイン画をぱらぱらとめくりながら見ていたら家令のヨハンが私を呼びにきた。

「ディー様、アビゲイル様とおっしゃるお嬢様がお見えになっておりますが、先ぶれはございましたか?」

「アビーが? 特になかったと思うけど」

 先ぶれもなしにアビゲイルが来るなんてなんだろう?

「会うわ」

 私はヨハンにそう告げ、私は玄関ホールに向かった。

 アビゲイルに会うのは久しぶりだ。背が伸びて、令嬢らしくなっている

「アビーどうしたの?」

「ディー様、急にすみません。家出してきました」

「家出!」

「はい。母に堪忍袋の尾が切れて、移動魔法で出て参りました」

 アビゲイルはぷんぷんしている。余程腹に据えかねることがあったのだろうか?

「まぁ、とりあえずおちゃでも飲んでちょうだい。領地で採れた茶葉の紅茶、なかなか美味しいのよ。焼き菓子もあるわよ」

 アビゲイルをサロンに案内した。

「ヘンリー兄様は知ってるの?」

「父も祖父母も知りません。ぶち切れてそのままここに移動しましたから」

「一応、ヘンリー兄様にだけは連絡を入れておくわね」

「はい。父にならかまいません」

 全身が怒りがみなぎっている。アビゲイルも確か火属性だったな。部屋の温度がかなり上がっているようだ。これは水属性のアルトゥール様を呼んで中和させた方がいいかもしれない。

「夫を呼んで、一緒に話を聞いてもいいかしら?」

「嫌な人でなければ、呼んでもらって結構ですが、嫌な人なら拒否いたします」

 相変わらずはっきりしているわね。

「大丈夫よ。夫はちゃんとした善良な人よ」

「それなら是非ご意見をお聞きしたいです」

 意見を聞きたい? ずいぶん大ごとのようだ。私はヨハンにアルトゥール様を呼びにいってもらった

 何があったのか話をじっくり聞かせてもらおうじゃないの。

 なんだか面倒なことが起こりそうな予感がするわね。

 私はゆっくりと深呼吸をした。
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