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26話 コンラート親子2
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リオネルはしばらくアンネリーゼが匿うらしい。
ということはエマも共犯か?
「エマも知っているの?」
「もちろんよ。エマには内緒にしてもらうように頼んでいるの。バレても私に頼まれて言えなかったとという事にしてね」
リオネルは部屋の奥でリーンハルトと遊んでいる。
コンラート様のところはリオネルの下に弟が3人いるそうで、母親が亡くなってからは、メイド達と一緒にリオネルが面倒をみているらしく、小さい子の扱いには慣れているようだ。
「ディーママ、私、将来はリオと結婚しようと思っているの」
「えっ?」
アンネリーゼの言葉に私は目を見開いた。
「愛し合っているの?」
「まだ12歳と7歳よ。それはないわ。リオは私があの女に虐げられて辛い時に支えてくれたの。リオにとっては小さい弟達と同じような感じで見ていたのだろうけど、杏音の記憶が戻るまでは本当に辛かったのよ。リオとおばさまがいなかったら完全に壊れていたと思う」
「そうだったのね。だからリオネルを慕っているのね」
「慕っているというのとは違うわね。なんだろう。リオといると楽なの。気を張らなくていいし。リオも私といると弱い自分でいてもいいから楽だと思っているみたい。でも、もし、これから先、王都の学校に行って好きな人ができたらそっちに譲ろうと思っていたけど、この領地から出ないなら私の物だわね」
アンネリーゼはヒヒヒと笑う。
「そうだ、あの女はおばさまにも嫌味をよく言っていたわ。どちらもこの領地の出身でしょう。あの女は親が王都のタウンハウスで働いていて、王都に住んでいたから、学校では、ここに住んでいたおばさまにマウントをとっていたみたい。私がリオの家に逃げていった時も田舎者のくせにとか、ネチネチ言っていたわ」
「嫌な人だったのね」
「まぁ、おばさまは『言わせとけばたいいのよ』っていつも相手にしてなかったけど、亡くなった時に『こんな田舎で野垂れ死になんて馬鹿みたい』って言ったから、リオもおじさまも敵認識したわ。全く嫌な女よ。あんな女から生まれたなんてぞっとするわ」
アンネリーゼは眉根を寄せた。私は空気を変えようとリオネルの話に戻した。
「リオが魔法医師になってこの地にいてくれたらいいわね。ラート様を説得するためには、まずはアル様を仲間に引き入れるか」
「よろしくお願いします」
私は子供部屋を出て、アルトゥール様の執務室に向かった。
◇◇◇
「アル様、お話があるの。今、大丈夫ですか?」
アルトゥール様は机に向かって書類を読んでいたが、私の声に顔を上げた。
「様はいらないって言っただろ。話って何?」
立ち上がりソファーの前に移動してきた。
「座って」
私に座るように促す。
「リオネルのことなの」
「そう、ラートも呼ぶ?」
「まずはアル様と話したい」
「様はいらない」
アルトゥール様はなかなかしつこい。様にこだらわなくてもいいのに。あっ、私もか。
「リオネルは医者になりたいらしいの」
「医者か」
「この領地には医者が少ないでしょう。お母様が亡くなった時に医者になろうと思ったそうよ。ラート様に何度も話そうとしたけど、騎士になれと頭ごなしに言うだけで全く話を聞いてくれないらしいの」
「そうか。ラートは先祖代々、嫡男が騎士団長を務めていたから、リオにもやらせたいのだろう。リオは頭もいいし、剣の腕もいい。このままいけば問題なくラートの後継になれると思うが、そんな思いがあったんだな」
アルトゥール様は腕組みをして頷いた。
「リオの思いが本物で決意が固いなら、医者になればいいと思う。あいつは優しいから医者に向いているかもしれないな。ラートはあいつがそんな理由で医者になりたいと知ったら反対はしないだろう。そこまで石頭じゃないはずだ」
「アル様から、話してみてくれない?」
「様はいらない」
「アルから話してみてくれませんか?」
「それでいい。私から話してもいいが最後はリオが話すべきだ。ふたりが話す場に私達も一緒にいて、援護射撃をしてやったらどうだろう」
それはいい。それなら、リオネルも話しやすいし、コンラート様も聞く耳を持つかもしれない。
「しかし、その前にリオに会わせてほしい。リオの口からちゃんと聞きたい。リオはまだ12歳だ。軽い気持ちで言っているのではないと思うが、どれだけ決意しているのか腹を割って話がしたい」
確かに、私を通してより、直にリオネルの口から聞く方が良い。私はアルトゥール様を子供部屋に案内した。
◆◆◇
「あら、お父様、来たの?」
「うん。リオネルと話がしたいそうよ」
「味方? 敵?」
「もちろん味方よ」
「なら、会わせてあげるわ」
アンネリーゼの検問を無事通れた。
アンネリーゼに呼ばれてリオネルが奥から顔を出し、アルトゥール様は奥のリオネルがいる場所に行った。
「リオ、ディーから話は聞いた。私はお前が医者になりたいのなら、それもいいと思う。ただ、騎士が嫌だから他のものになりたいというのなら背中は押せない。何がなんでも医者になりたいというなら、いくらでも背中を押す。お前の本当の気持ちを聞かせてほしい」
アルトゥール様はリオネルと部屋の奥でふたりで膝を突き合わせて話をしている。
私とアンネリーゼは少し離れた場所でそれを見ていた。
リオネルは涙を流しながらアルトゥール様に話をしている。やはり、真剣に医師になりたいのだろう。
ふたりをじっと見ていたらアンネリーゼが小声で話しかけてきた。
「リオのステータスボードの職業は魔法医師なの。騎士じゃないの。もちろんリオには話してないわ。私が鑑定の魔法が使えて、他人のステータスボードが見られることも言ってない。リオは騎士になるはずなのに、なんで魔法医師なんだろうと不思議だったのだけれど、リオ自身がなりたいと思っていたのね」
「そうか。そのステータスボードってなんでもわかっちゃうのね」
「分からないこともあるわ。わかるのは、持っている魔力やスキル、加護。そのレベル。そして職業。あとは善良かそうでないかくらいかしらね。ディーママは超善良よ」
ふふふと笑った。
アルトゥール様が納得したら、次はコンラート様を説得することだな。ステータスボードがそうなっている以上、リオネルは騎士団長にはならないだろう。コンラート様もリオネルとちゃんと向き合えばわかるはずだ。
「話は終わった。次はラートに会って話す」
私達はコンラート様をサロンに呼ぶ事にした。
ということはエマも共犯か?
「エマも知っているの?」
「もちろんよ。エマには内緒にしてもらうように頼んでいるの。バレても私に頼まれて言えなかったとという事にしてね」
リオネルは部屋の奥でリーンハルトと遊んでいる。
コンラート様のところはリオネルの下に弟が3人いるそうで、母親が亡くなってからは、メイド達と一緒にリオネルが面倒をみているらしく、小さい子の扱いには慣れているようだ。
「ディーママ、私、将来はリオと結婚しようと思っているの」
「えっ?」
アンネリーゼの言葉に私は目を見開いた。
「愛し合っているの?」
「まだ12歳と7歳よ。それはないわ。リオは私があの女に虐げられて辛い時に支えてくれたの。リオにとっては小さい弟達と同じような感じで見ていたのだろうけど、杏音の記憶が戻るまでは本当に辛かったのよ。リオとおばさまがいなかったら完全に壊れていたと思う」
「そうだったのね。だからリオネルを慕っているのね」
「慕っているというのとは違うわね。なんだろう。リオといると楽なの。気を張らなくていいし。リオも私といると弱い自分でいてもいいから楽だと思っているみたい。でも、もし、これから先、王都の学校に行って好きな人ができたらそっちに譲ろうと思っていたけど、この領地から出ないなら私の物だわね」
アンネリーゼはヒヒヒと笑う。
「そうだ、あの女はおばさまにも嫌味をよく言っていたわ。どちらもこの領地の出身でしょう。あの女は親が王都のタウンハウスで働いていて、王都に住んでいたから、学校では、ここに住んでいたおばさまにマウントをとっていたみたい。私がリオの家に逃げていった時も田舎者のくせにとか、ネチネチ言っていたわ」
「嫌な人だったのね」
「まぁ、おばさまは『言わせとけばたいいのよ』っていつも相手にしてなかったけど、亡くなった時に『こんな田舎で野垂れ死になんて馬鹿みたい』って言ったから、リオもおじさまも敵認識したわ。全く嫌な女よ。あんな女から生まれたなんてぞっとするわ」
アンネリーゼは眉根を寄せた。私は空気を変えようとリオネルの話に戻した。
「リオが魔法医師になってこの地にいてくれたらいいわね。ラート様を説得するためには、まずはアル様を仲間に引き入れるか」
「よろしくお願いします」
私は子供部屋を出て、アルトゥール様の執務室に向かった。
◇◇◇
「アル様、お話があるの。今、大丈夫ですか?」
アルトゥール様は机に向かって書類を読んでいたが、私の声に顔を上げた。
「様はいらないって言っただろ。話って何?」
立ち上がりソファーの前に移動してきた。
「座って」
私に座るように促す。
「リオネルのことなの」
「そう、ラートも呼ぶ?」
「まずはアル様と話したい」
「様はいらない」
アルトゥール様はなかなかしつこい。様にこだらわなくてもいいのに。あっ、私もか。
「リオネルは医者になりたいらしいの」
「医者か」
「この領地には医者が少ないでしょう。お母様が亡くなった時に医者になろうと思ったそうよ。ラート様に何度も話そうとしたけど、騎士になれと頭ごなしに言うだけで全く話を聞いてくれないらしいの」
「そうか。ラートは先祖代々、嫡男が騎士団長を務めていたから、リオにもやらせたいのだろう。リオは頭もいいし、剣の腕もいい。このままいけば問題なくラートの後継になれると思うが、そんな思いがあったんだな」
アルトゥール様は腕組みをして頷いた。
「リオの思いが本物で決意が固いなら、医者になればいいと思う。あいつは優しいから医者に向いているかもしれないな。ラートはあいつがそんな理由で医者になりたいと知ったら反対はしないだろう。そこまで石頭じゃないはずだ」
「アル様から、話してみてくれない?」
「様はいらない」
「アルから話してみてくれませんか?」
「それでいい。私から話してもいいが最後はリオが話すべきだ。ふたりが話す場に私達も一緒にいて、援護射撃をしてやったらどうだろう」
それはいい。それなら、リオネルも話しやすいし、コンラート様も聞く耳を持つかもしれない。
「しかし、その前にリオに会わせてほしい。リオの口からちゃんと聞きたい。リオはまだ12歳だ。軽い気持ちで言っているのではないと思うが、どれだけ決意しているのか腹を割って話がしたい」
確かに、私を通してより、直にリオネルの口から聞く方が良い。私はアルトゥール様を子供部屋に案内した。
◆◆◇
「あら、お父様、来たの?」
「うん。リオネルと話がしたいそうよ」
「味方? 敵?」
「もちろん味方よ」
「なら、会わせてあげるわ」
アンネリーゼの検問を無事通れた。
アンネリーゼに呼ばれてリオネルが奥から顔を出し、アルトゥール様は奥のリオネルがいる場所に行った。
「リオ、ディーから話は聞いた。私はお前が医者になりたいのなら、それもいいと思う。ただ、騎士が嫌だから他のものになりたいというのなら背中は押せない。何がなんでも医者になりたいというなら、いくらでも背中を押す。お前の本当の気持ちを聞かせてほしい」
アルトゥール様はリオネルと部屋の奥でふたりで膝を突き合わせて話をしている。
私とアンネリーゼは少し離れた場所でそれを見ていた。
リオネルは涙を流しながらアルトゥール様に話をしている。やはり、真剣に医師になりたいのだろう。
ふたりをじっと見ていたらアンネリーゼが小声で話しかけてきた。
「リオのステータスボードの職業は魔法医師なの。騎士じゃないの。もちろんリオには話してないわ。私が鑑定の魔法が使えて、他人のステータスボードが見られることも言ってない。リオは騎士になるはずなのに、なんで魔法医師なんだろうと不思議だったのだけれど、リオ自身がなりたいと思っていたのね」
「そうか。そのステータスボードってなんでもわかっちゃうのね」
「分からないこともあるわ。わかるのは、持っている魔力やスキル、加護。そのレベル。そして職業。あとは善良かそうでないかくらいかしらね。ディーママは超善良よ」
ふふふと笑った。
アルトゥール様が納得したら、次はコンラート様を説得することだな。ステータスボードがそうなっている以上、リオネルは騎士団長にはならないだろう。コンラート様もリオネルとちゃんと向き合えばわかるはずだ。
「話は終わった。次はラートに会って話す」
私達はコンラート様をサロンに呼ぶ事にした。
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