【完結】妻に逃げられた辺境伯に嫁ぐことになりました

金峯蓮華

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24話 次の計画

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 次はアルトゥール様の発案で学校を作ることになった。

 この国の貴族は16歳から3年間王都にある貴族学校に行く。

 それまでに各家で家庭教師を雇い、勉強するので、特に学校に行く必要性は感じないのだが、あわよくば高位貴族に見初められ玉の輿に乗ろうとする家や、横のつながりを作っておきたい家などには嬉しいシステムかもしれない。

 私は面倒なので最初に卒業試験を受け、飛び級卒業したので学校には在籍したことになっているが通ってはいない。アルトゥール様やコンラート様、ブルーノ様も飛び級組みらしい。

 アルトゥール様は王都の貴族学校に行った時、あまりの無意味さに開いた口が塞がらなかったそうだ。

 それなら辺境の地に学校を作ればいいと思ったが、行く者がいるのかと疑問に思い、他の忙しさにかまけ、そのままになっていたそうだ。

「私はこの地に学校を作ろうと思う。王都の貴族学校など行く意味が私にはわからない。それならここで専門的なことを学べる学校を作ればいいと思ったのだが、今まで忙し過ぎて着手できなかったのだ」

 夕食のあと、みんなでサロンでお茶を飲んでいる時に、アルトゥール様が突然言い出した。

「しかし、この領地の貴族の人数は知れている。それに王都に行きたい者もいるのではないか?」

 義父は眉をしかめる。

 私は思っていたことを告げてみた。

「それなら、貴族とか平民とか関係なしにこの領地の者なら誰でも行ける学校にしてはどうですか? この地は王都とは違い貴族とか平民とかという垣根があまりありません。平民でも学びたい者は学校で学べるようにすれば、人材発掘にもなると思います」

「だったら……」

 アンネリーゼが口を開いた。

「前世いた世界では、全ての人が小さい頃から学校のようなところに通います。そこで読み書き、計算など基礎的なことを習うのです。いっそ、この領地に学校を作るなら、貴族も平民も関係なく、全ての領民が平等に教育を受けられるようにしてはどうですか? そして16歳になった時に、王都の学校に行きたい者は行けばいいし、ここの学校に行きたい者は行く。選べるようにするといいと思います」

 すごい。アンネリーゼの前世いた場所ってすごいわ。どんな子供もみんな学べるなら、みんなちゃんとした仕事につける。それ、絶対やりたい。

 頷きながら話を聞いていたアルトゥール様が考えながらぽつりと呟いた。

「それいいな。16歳までに基礎を学べば、そこで働きに出ることもできる。それ以上学びたい者は、例えば騎士や、家令や侍女、ガヴァネスやチューター、医師や看護師、薬師、商人や技師など専門的な勉強ができる学校を作るのもありだな。他の領地の者も真剣に学びたいのであれば受け入れるのもいい。王都の学校は貴族しか入れないが、グローズクロイツ領の学校は身分問わずだ」

 なるほどそれは良い。

「でも、金銭的な問題で通えない者もいるのではないか?」

「父上、それなら義務づけます。7歳から15歳までの9年間はグローズクロイツ領の子供は全て学校で学ばなければならないと。学費は無料にします。
家の事情で行けないという者はその事情を解決します。グローズクロイツ領の全ての領民は読み書き、計算ができる。働きやすく、暮らしやすい。今までは辺境の地というだけで、顔を顰められることが多かったが、これからは、皆に行きたいと思われるような地にしたい。そう思うのです」

アンネリーゼが説明をはじめた。

「いいと思います。そして、16歳からの専門的な学校も成績の良い物は授業料を無料にしたり、卒業したらそこで働くという約束をした者はそこから授業料を払ってもらったり、グローズクロイツ家が授業料を貸し出すというやり方などいろんなやり方で貧しい家の者も学べるようにしましょう。前世生きたい国ではそんな制度が色々ありました」

 アルトゥール様やみんな目を見張る。

「貧しい家を無くさなくてはならないな。今まで、魔獣討伐に明け暮れていてできなかったことをやろう。リーゼ、父上とブルーノに、そういう色々な制度を話してくれ。父上とブルーノはそれを精査して、まとめて提案書を作ってくれ。よろしく頼む」

「承知」

 ブルーノ様もやる気に満ちた顔をしている。

「それからもうひとつ」

 アルトゥール様は人差し指を立てた、

「魔獣の被害は我が領地だけでなく、他の領地にもある。今までも討伐の手伝いを依頼されていたのだが、手が回らず断っていた。これからは騎士団をそんなところに派遣する事も考えている。そんな地に結界を張るのもいいと思っていたのだが、我が領地の結界と同じような強固な結界にするためには色々な条件があり、他の領地では難しいとアンネリーゼに言われたのだ。結界のことはまだ内密にしておけと国王陛下にも言われたし。それならば騎士団を派遣しようと思ったのだが、コンラートどう思う?」

「いいと思う。グローズクロイツの騎士は最強だからな」

 コンラート様は胸を張りガハハと笑う。


 最近は毎日こんな感じで家族で盛り上がっている。


◇◇◇


「ねぇ、リーゼ、うちと同じような結界って張るの難しいの? 条件って何?」

 私は子供部屋でリーンハルトを寝かしつけながらアンネリーゼに聞いてみた。

「簡単よ。条件なんてないわ」

「でも、さっきアル様が……」

「そう言わないとお父様は人がいいから、いくらでも張っちゃうでしょ? 利用しようって思うやからもいるのよ。だからああ言ったの。他領地に張るなら、それなりの対価をもらって仕事にしなきゃ。善意でやってはダメよ。騎士団の派遣もビジネスにしましょう。そうやって稼いだお金で自領の領民達の教育やインフラ整備なんかに使えばいいのよ」

 アンネリーゼは凄い。私はダメだわ。国中に張って、皆で幸せになればいいと思っていた。

「国王陛下が結界の事を内密にしろと言ったのも何か思惑があるのかもよ。とにかくうまく利用されないようにしなくちゃね。まずはグローズクロイツ領を豊かにしましょう。あの女が捨てたこのグローズクロイツ領を王都より栄えさせてみせるわ」

 アンネリーゼはニヤリと笑った。
 平気な顔をしているが、やはり、傷ついて、恨んでいるのだな。

「私はやられたらやり返すわ。あの女が悔しがるくらい私達は幸せになるのよ。協力してね」

 するわよ。するけど。それより先にアンネリーゼの心を癒してあげたいな。

 私はこっそりアンネリーゼの心に回復魔法をかけた。

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