【完結】公爵令嬢ルナベルはもう一度人生をやり直す

金峯蓮華

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37話 結婚式(最終話)

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 結婚式の朝を迎えた。両親とアローノは昨日からブロチゾラム家に滞在している。母の移動魔法で飛んできたのだ。

 アローノも結婚式の後、しばらくブロチゾラム家に残りミオナール様から移動魔法を習うことになっている。

 セレニカ王国の来賓の方々は馬車で国を出たそうで、式の時刻には到着する予定らしい。



 ブロチゾラム家の侍女達が私の用意をしながらいろんな話を聞かせてくれる。

「お嬢様、今日は国中が幸せな空気に包まれていますよ。女神様があちこちに現れて幸せのお裾分けをしているそうです」

「幸せのお裾分け?」

「はい。我が国では慶事があると、女神様が現れてギフトをくれるのです。どこに現れるか、誰がもらえるかわからないので民達はみんな楽しみにしているのです」

 そんなことがあるのか。女神様と民が近い国なのであるのだろう。

「特にお嬢様は愛し子なので、いつもより大盤振る舞いみたいですよ」

 侍女達は楽しげだ。しかし、大盤振る舞いって……。

 結婚式でルセフィ様と私は女神リルゾールの祝福を受けるそうだ。愛し子の私が王家に入る事を女神リルゾールも喜んでいると皆が言う。ありがたいことだと恐縮してしまう。
 
 王家が用意してくれたウエディングドレスは上質な素材でできたシンプルなドレスに刺繍がたくさん刺してある。パーティーのドレスの刺繍は刺繍の会のメンバーを中心に私側の女性達が心を込めて刺してくれたのだが、ウエディングドレスの刺繍はルセフィ様側の女性達が刺してくれたのだという。

 結婚式のドレスに刺繍をするとされた人もした人も幸せになるというリルゾール王国の素敵な風習のおかげで素晴らしいドレスが出来上がった。

「だめだ。式は中止だ。エリーゼと離宮に籠る」

 ルセフィ様は私を見るなり手をとり移動魔法で離宮に移動しようとして、クラリス様に無効化魔法で阻止さられている。

「お兄様、しっかりしなさい!」

 クラリス様は呆れた顔でダメな人を見るような目をでため息をつくがルセフィ様は全く気にしていない。

「ルナは本当に綺麗だ。いつも美しいけれど、ウエディングドレスを着たルナは本当に美し過ぎる。もったいなくて誰にも見せたくない!」

「馬鹿者! 何を言っているんだ!」

 熊みたいに大きな国王陛下に怒られている。

 本当に困ったルセフィ様だ。


 今度はアローノが私に抱きつきわーわーと声を上げて泣きだした。

 アローノのシスコンはかなりの重症のようだ。巻き戻る前の人生ではアローノもゾレアの魅了魔法でおかしくなり、私のことを嫌っていて言葉を交わすこともなかった。そのことを思えば仲良くなるのは嬉しいが少し度を越しているような気もする。

 ルセフィ様がアローノの身体をガシッと掴み、私から引き離そうとしている。結婚式の日まで二人の狭量合戦になるとは……。

 そういえばアローノはまだ婚約しないのだろうか? 巻き戻る前の世界ではもう婚約していたはずだ。そろそろ伴侶を決めて両親を安心させてあげてほしい。

 

 私が無実の罪で断罪され、死を選ぶ事はもうなくなった。これからは王太子妃となりリルゾール王国で幸せな日々を過ごしていくはずだ。ルセフィ様はちょっと狭量だけど、それすらうれしいと思ってしまう。好きな人に束縛されるのはとても幸せなのだ。


 大聖堂で、女神様に誓いをたてる。そして誓いのキス。あまりにも時間が長くて死ぬかと思った。ルセフィ様を従者やアローノが引き剥がしてくれたのでやっと呼吸ができた。

 大聖堂での式が終わり、私達は馬車に乗りパレードに出た。王都にいる沢山の人々がフラワーシャワーでお祝いをしてくれている。

 空からは女神リルゾールの七色の光がキラキラ降り注ぐ。

「今度は幸せになるのよ。まぁ、私がついているから幸せにしかなれないわね。ルセフィ、ルナベルを不幸にしたら死んだ方がましだと思ううよな罰を与えるから覚悟しなさい」

 突然現れた女神様が物騒な事を言う。

「女神リルゾール、私は私の全てをかけてルナを幸せにします。ルナは傍にいるだけで私は幸せです。ルナを不幸にすることなどありません。死ぬまで、いや、死んでも、来世でも再来世でも、未来永劫ずっとルナだけを愛します」

 ルセフィ様の言葉に女神様はご満悦の様子でルセフィ様の頭に金の花びらを降らしてくれている。

 しかし、しかし、しかし!

 ルセフィ様愛が重いわ。嬉しいけど、普通の人ならドン引きするかもしれないわね。

 パレードの馬車の中でルセフィ様が私の唇にキスを落とすと、沿道の皆さんから歓声がおこる。

「おめでとうございます」の嵐だ。

 幸せ過ぎる。時が戻らなかったらこんな幸せはなかった。感謝しかない。




 結婚式からすぐに妊娠がわかり、私は男児を出産した。その後立て続けに男児、女児を産んだ。

 セレニカ王国に嫁いだクラリス様はテオドール様を立てながらお尻に敷き影の実力者として君臨している。

 父の後を継ぎ宰相となったアローノはクラリス様に手足のように使われているらしく、しょっちゅうビデオ通話のできる魔道具で泣き言を言っている。

 リドカイン様はセレニカ王国の暗部のトップになり、これまたクラリス様に手足のように使われていると言う。

 ジュリナはザイティガ様と結婚し、リルゾール王国で二人で魔道具と魔法の研究をしている。次々と便利な魔道具を産み出し私達の生活を楽しくしてくれている。

 ジェミニーナとイグザレルト様も結婚し、リルゾール王国に住んでいる。ルセフィ様の企てで、ジェミニーナがミオナール様の仕事を手伝うようになり、リルゾールに住むようになったので、イグザレルト様もリルゾールに残り、ルセフィ様の側近になった。ルセフィ様以上に狭量で愛が重いイグザレルト様に束縛されながらもジェミニーナは幸せそうだ。


 前の世界で断罪された私達や魅了の魔法にかけられた者達は皆、幸せになった。

 地図から消えていたセレニカ王国も消えてしまったセレニカの民も時が巻き戻ったおかげで存在している。暗い未来が明るい未来に変わった。

 テオドール殿下と婚約解消だけを願いリルゾール王国に留学したのに、まさか王太子妃になってしまうなんて、愛する人と巡り合い幸せになれるなんて、前の世界で断罪されたあと破落戸に襲われ絶望して自死した私に教えてあげたい。

 ルナベル、あなたは幸せになれるのよと。

 王宮のプライベートエリアの中庭にあるガゼボでルセフィ様と一緒にお茶を飲みながら、芝生で遊ぶ子供達を見てそんな事を思った。




***

 これにてルナベルのお話は完結いたしました。最後までお読みいただきありがとうございました。



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感想 24

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みんなの感想(24件)

ジャムおばさん

完結おめでとうございます。
途中どうなるかとハラハラしましたが、ハピエンを迎えられて安心しました。
またの作品をお待ちしてます。ご披露くださると嬉しいです。

2024.11.23 金峯蓮華

最後までお読みいただきましてありがとうございました。
また、何か書けたら良いなと思っています。

解除
monomoma
2024.11.20 monomoma

更新ありがとうございます。楽しく読んでいます。
テオドール真面目堅物だから、前の記憶あったら自害するので記憶ない、とありましたが、魅了のせいとはいえ盛大にやらかしたのですから、いずれは伝えて欲しいですね。
嫁がガッチリ国を守るでしょうから、いなくなっても大丈夫かと。

2024.11.21 金峯蓮華

ありがとうございます。いずれテオドールも真相を知る時がくるのですが、まだまだ先の話です。即位したあとは表はテオドールが、裏はクラリスが取り仕切るようになるようです。いないと困るので生温かく見てあげてください。

解除
猫3号
2024.11.18 猫3号

34話
復習と時を巻き戻すと誓い修行を積んだ。 → 復讐と時を巻き戻す

2024.11.19 金峯蓮華

ありがとうございます。修正しました。

解除

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