【完結】公爵令嬢ルナベルはもう一度人生をやり直す

金峯蓮華

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36話 もうすぐ結婚式(途中からアローノ視点)

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 夜には私はリルゾール王国に戻る。結婚式の前日は両親と弟のアローノも一緒にブロチゾラム家に泊まる予定だが、私は一足先に戻ることになっている。

「ルナベル、ルセフィ殿下が来られてるわよ」

 母が部屋に呼びにきた。

 特に約束はしていなかった。どうしたのだろう。

 慌ててサロンに行くとルセフィ様とアローノが睨み合っている。

「何も迎えに来ずとも、姉様は戻りますよ。そもそも私達と一緒に向かえばいいのになぜ姉様だけ先に戻らねばならないのですか?」

「色々あるのだ」

「ないでしょ? あなたが狭量はだけではないですか?」

「お前こそ、狭量でシスコンではないか」

 不毛な言い合いをしている。似た者同士のような気がするが……。

「お待たせいたしました。ルセフィ様、何があったのですか?」

「いや、何もない。待っていられなくて迎えにきた」

「やっぱりそうではありませんか」

全くもう……。

「ありがとうございます。夕方に出発する予定でしたのでしばらくお待ちいただいてもよろしいですか?」

「もちろんだ」

「それまで、お茶でも召し上がってゆっくりしてくださいませ」

 アローノが私の顔を見る。

「姉様、私がお相手しておりますのでお支度の続きをしてきてください」

 大丈夫かしら?

 母の顔を見ると、目で「ほっといたらいい」と言っている。

「では、お願いするわ」

 私は部屋に戻った。



*****アローノ視点

「ルセフィ殿下は姉様の神託をご存知だったのですか?」

 私は思い切って殿下に尋ねてみた。

「神託と言うか時が巻き戻る前の世界の話か?」

 時が巻き戻る?

 殿下は時が巻き戻る前の世界の話を私に聞かせてくれた。

 私は姉が幼い頃に神託を受け、それで動いているとばかり今の今まで信じていた。まさかそれは本当にあったことで姉が実体験していたなんて。姉に酷い事をした私がずっと傍にいて姉はどれほど嫌な思いをしていたのだろう。申し訳ない気持ちでいっぱいになり涙が溢れてきた。

「私は何も知らなかった。神託の世界ではなく本当に姉を虐げていたなんて……。私だけが知らないかったのですか?」

「いや、テオドール殿は神託も巻き戻しも知らない。それにジュリナ嬢が言うには前の世界は小説の中の世界だったらしいぞ」

 殿下の言葉に腰が抜けそうになった。

 ジュリナ嬢が生まれ変わる前、日本という文明が発達した世界にいたこと。姉が前の世界の記憶を思い出した時と同じくらいにジュリナ嬢もそれを思い出して、父や魔導士団長殿らは秘密裏にそのことについて調べていたなんて。私は何も知らなかった。

「おいおい、そんなに凹むなよ。ルナはお前のことは愛しているし、頼りにしている。前の世界ではお前やテオドール殿は魅了の魔法にかかっていただけだ。ルナは寛容だからな」

 殿下はふっと笑う。

「しかし……」

「もう、全て終わったんだ。ペンタサ王国は消滅した。お前は精神拘束魔法無効化の魔法を自分にかけておけ。ペンタサは消えたがどこから何が出てくるかわからんからな。そして、テオドール殿とこの国を守れ。あの方は純粋で真面目過ぎる。汚い世界を知らん。表の国の顔であればいい。裏の汚れごとはクラリスがやるだろう。お前とリドカインはクラリスに加担してテオドール殿とこの国を守れ。私もできる限り助ける」

「はい。この国を守ることが姉様への贖罪になりますか?」

「そうだな。でもルナは贖罪など望まんだろう。ルナは誰も恨んでおらん。まぁ、ルナは私が幸せにするから気にするな」

 良い人なのだがなんだか腹が立つ。

「お前も我が国に滞在してミオナールに魔法を習うのだろう? その時にクラリスについてくれ」

 クラリス様か。

「姉様から、クラリス様はわがままなどではなく、姉様と殿下のために自分を犠牲にしたと姉様から聞きました」

「そうだな。クラリスに助けられた。でも犠牲というわけでもないだろ。あれは感情だけでは動かん。あれがセレニカ王国に嫁ぐことも女神の采配なのだろうな。とにかくリドカインとともにクラリスをサポートしてくれ」

 クラリス様、まだ挨拶だけしか言葉を交わしたことがないが、腹黒策士のルセフィ殿下がそう言うなら、クラリス様もなかなかの腹黒策士なのだろう。国のためというより、姉が喜ぶなら、私はすすんでクラリス様の犬になるよ。

 姉がサロンに入ってきた。

「お待たせいたしました。食事をしてから行こうと思いますがよろしいですか?」

「あぁ、それでいい」

「あら、アローノと仲良くなったみたいですわね」

「そうだな。クラリスのことを頼んでいた」

「まぁ、そうでしたの」

 姉は私の手を取り目を真っ直ぐに見つめる。

「クラリス様は私の恩人なの。クラリス様がいなかったら、私は幸せになれなかったわ。アロ、クラリス様をお願いね。誰も知っている人がいない国に私の為に嫁いでくれるのよ。誰をさておいてもクラリス様の力になってね」

「はい。姉様の望み通り、この命クラリス様に捧げます」

 私は誓った。

 隣にいたルセフィ殿下がなぜか呆れたような顔をしている。

「命まで捧げなくていい」

「それくらいの決意でということです!」

 やはりなんか腹のたつ奴だ。

 殿下と家族で食事をしたあと、姉は侍女を連れてリルゾール王国に移動魔法で旅立った。

 まぁ、私も明日にはリルゾール王国に行くのですぐに会える。

 姉の自慢の弟になれるようにクラリス様に尽くそう。姉の幸せが私の幸せだ。


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