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34話 前の世界のゾレアは?
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私達はジュリナの魔道具でパーティーの様子を見ていた。ジュリナは楽しそうだ。
「ゾレアね。間違いないわ」
「そうね。二度と会いたくなかったわ」
「会わないわよ。ここから見ているだけ」
そうか見ているだけか。
少し離れた席ではジェミニーナとイグザレルト様が一緒に魔石に映し出される映像を見ている。
ジェミニーナがイグザレルト様の手をグッと押さえている。
「あぁでもしとかなきゃ、イグザレルト様、暴れちゃいそうだものね」
イグザレルト様は前の世界でゾレアに魅了の魔法をかけられ、愛するジェミニーナを死に追いやった。国が滅亡したあとも生き残り、魔法が解け、全てを思い出し、時を巻き戻したのだ。
今にもゾレアを斬り殺しそうな目で映像を見ている。
「イグザレルト様も、本来なら会場に行って欲しいけどね」
ジュリナの言葉に苦笑いするしかない。
王弟殿下やミオナール様らの計画では、ゾレアに逆魅了の魔法をかけて、精神を拘束してしまい、ペンタサ王国の国王の元に戻すとのこと。どんな手を使っても我が国はびくともしないと見せつけるらしい。
「三文芝居ね」
クラリス様が苦笑いをしている。
ミオナール様やアラセナ様、仲間の眷属さん達は幻影魔法で私やクラリス様、王妃殿下や国王陛下に姿を変えてパーティーに参加している。
国王陛下は自分も出るとおっしゃったそうだが、ミオナール様が国王の役をやりたいとノリノリだったため、今回は諦めたらしい。
王宮でペンタサ王国に向けての指揮をとりながら「私も出たかったなぁ」と言っているとかいないとか。
私は前の世界のゾレアが最後どうなったのか知りたくなった。
「ねぇ、リナ。前の世界ではゾレアは最後はどうなったの?」
ジュリナは首を捻った。
「わからないわ。小説はセレニカ王国が滅んだところで終わりだったのよ。きっとペンタサ王国に戻って報奨金でももらったのじゃないかしらね」
きっとそうだな。
「私が殺した」
えっ? 振り返るとイグザレルト様とジェミニーナがいた。
イグザレルト様が殺した?
「私はセレニカ王国が滅亡した後、傭兵になって流れていた。その時ジオ様と出会い、魅了の魔法を解かれた。未熟な私はあんな女とペンタサ王国の罠にまんまと引っかかったのだと知り、復讐と時を巻き戻すと誓い修行を積んだ。ペンタサに潜入し、あの女と国王を始末したあと時を戻した。あの女は王宮で贅沢な暮らしをしているようだった。それが報奨だったのだろう。何度殺しても殺したりない……」
いやいや、一度殺せば充分だろう。
「もう、レルト様、そんな不穏な事は仰らないでくださいませ!」
ジェミニーナに引っ張られた。
「ベル、レルト様は私が見張っているので大丈夫よ。パーティー会場にいたら問答無用で斬りつけちゃいそうだから見張っておけとジオ様に命じられているの」
ジェミニーナはふっと笑う。
魔石に映し出された映像にはリドカイン様にエスコートされたゾレアが妖艶な笑みを浮かべている。
お~、あれは私?
眷属さん、凄いわ。私そっくりに化けてる。
「いよいよね。なんだかスパイを三文芝居で騙すのって変な感じね。兄様や叔父様がどうするのか楽しみだわ」
クラリス様がニヤリと笑う。
私はじっと魔石を見つめるしかなかった。
「ゾレアね。間違いないわ」
「そうね。二度と会いたくなかったわ」
「会わないわよ。ここから見ているだけ」
そうか見ているだけか。
少し離れた席ではジェミニーナとイグザレルト様が一緒に魔石に映し出される映像を見ている。
ジェミニーナがイグザレルト様の手をグッと押さえている。
「あぁでもしとかなきゃ、イグザレルト様、暴れちゃいそうだものね」
イグザレルト様は前の世界でゾレアに魅了の魔法をかけられ、愛するジェミニーナを死に追いやった。国が滅亡したあとも生き残り、魔法が解け、全てを思い出し、時を巻き戻したのだ。
今にもゾレアを斬り殺しそうな目で映像を見ている。
「イグザレルト様も、本来なら会場に行って欲しいけどね」
ジュリナの言葉に苦笑いするしかない。
王弟殿下やミオナール様らの計画では、ゾレアに逆魅了の魔法をかけて、精神を拘束してしまい、ペンタサ王国の国王の元に戻すとのこと。どんな手を使っても我が国はびくともしないと見せつけるらしい。
「三文芝居ね」
クラリス様が苦笑いをしている。
ミオナール様やアラセナ様、仲間の眷属さん達は幻影魔法で私やクラリス様、王妃殿下や国王陛下に姿を変えてパーティーに参加している。
国王陛下は自分も出るとおっしゃったそうだが、ミオナール様が国王の役をやりたいとノリノリだったため、今回は諦めたらしい。
王宮でペンタサ王国に向けての指揮をとりながら「私も出たかったなぁ」と言っているとかいないとか。
私は前の世界のゾレアが最後どうなったのか知りたくなった。
「ねぇ、リナ。前の世界ではゾレアは最後はどうなったの?」
ジュリナは首を捻った。
「わからないわ。小説はセレニカ王国が滅んだところで終わりだったのよ。きっとペンタサ王国に戻って報奨金でももらったのじゃないかしらね」
きっとそうだな。
「私が殺した」
えっ? 振り返るとイグザレルト様とジェミニーナがいた。
イグザレルト様が殺した?
「私はセレニカ王国が滅亡した後、傭兵になって流れていた。その時ジオ様と出会い、魅了の魔法を解かれた。未熟な私はあんな女とペンタサ王国の罠にまんまと引っかかったのだと知り、復讐と時を巻き戻すと誓い修行を積んだ。ペンタサに潜入し、あの女と国王を始末したあと時を戻した。あの女は王宮で贅沢な暮らしをしているようだった。それが報奨だったのだろう。何度殺しても殺したりない……」
いやいや、一度殺せば充分だろう。
「もう、レルト様、そんな不穏な事は仰らないでくださいませ!」
ジェミニーナに引っ張られた。
「ベル、レルト様は私が見張っているので大丈夫よ。パーティー会場にいたら問答無用で斬りつけちゃいそうだから見張っておけとジオ様に命じられているの」
ジェミニーナはふっと笑う。
魔石に映し出された映像にはリドカイン様にエスコートされたゾレアが妖艶な笑みを浮かべている。
お~、あれは私?
眷属さん、凄いわ。私そっくりに化けてる。
「いよいよね。なんだかスパイを三文芝居で騙すのって変な感じね。兄様や叔父様がどうするのか楽しみだわ」
クラリス様がニヤリと笑う。
私はじっと魔石を見つめるしかなかった。
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