25 / 39
25話 3人でお茶会1
しおりを挟む
皆がセレニカ王国に戻り、リルゾール王国では静かな日常が戻ってきた。
私はお妃教育を受けながら、ミオナール様に魔法を習っている。お妃教育はセレニカ王国で受けていた王太子妃教育とさほど変わらない。さすがに3度目ともなると何の問題もなくサクサク進んでいる。
リルゾール王国独特の文化や王家の事を学べばほぼ終了らしい。リルゾール王国の文化やマナーに関してはリオナ姉様や刺繍の会の皆さんが手取り足取り教えてくれるので有難い。恵まれているなぁと感謝しかない。
今日は留学を延長し、リルゾール王国に残ったジェミニーナ嬢とジュリナ嬢をお世話になっているブロチゾラム家の中庭にあるガゼボに呼んでお茶会をすることになった。
おふたりとゆっくりお話ししたかったのだが、ジュリナ嬢は魔道具作りで忙しそうだし、ジェミニーナ嬢はいつも横にイグザレルト様がいて、ゆっくり話ができない。留学して一年も経っているのに3人だけでゆっくり会うのははじめてかもしれない。
今日はイグザレルト様が出かけると言うので、ジェミニーナ様を奪い取ることにした。それにしてもあんなに執着されてジェミニーナ様は辛くならないのかしら? 確か前の世界でも婚約していたと思うけれど、そんなに一緒にいるところを見たことがなかった。
あの当時はいつもイグザレルト様は恋愛に興味がないのかと思っていたけど、あの女にはすぐなびいたじゃない。あの女よりジェミニーナ嬢の方が絶対可愛いのに。男なんてみんなあんな女が好きなのかしら? あぁ嫌だ嫌だ。あんな女もう二度と会いたくないわ。
幸せでもう忘れていたつもりなのに、ふとあの女を思い出し、吐き気を催す。あの女が現れてからの一年は本当に辛かったし、あの卒業パーティーでの断罪から死に至るまでの時間は本当に思い出したくない。
今日はリルゾール王国で人気のある菓子店のケーキを購入して、侍女のミレーナにお茶の用意をしてもらう。リルゾール王国のお菓子は本当に美味しいのでおふたりに食べてもらいたかった。
「ルナベルお嬢様、一緒に来たご令嬢方とやっとお話しできますね。今日は殿下もいないし、ゆっくりして下さいませ」
ミレーナは楽しげにお茶の用意をしてくれている。
ルセフィ様はイグザレルト様と一緒に魔法騎士団の団長さんにお会いしている。なので、私もジェミニーナ嬢ものんびりできるのだ。
今、思い出せば私の計画は7歳で池に落ちた時に前の人生の記憶を思い出したことにはじまった。
父には、時が戻ったと言っても信じてもらえないだろうと、熱でうなされている時に夢を見た。貴族学校の3年になったら、男爵家の養女になった変な女が現れ、殿下や側近達、アローノまでもがその女と恋に落ち、私は無実の罪を着せられ婚約解消され、国外追放になり、国境に向かう馬車を、テオドール殿下とその女の命令を受けた破落戸達に襲われて、命を落とす。だからそれを回避するために何とかして婚約を解消したいと言った。
初めはただの夢だろうと父は言っていたが、あまりにも私が悲壮な顔で訴えたせいか、御神託だということになり、何度も適当な理由をつけて婚約解消の打診をしてくれていた。
弟のアローノも自分がそんな女に夢中になり、私を貶めたなんて、自分に怒りが止まらない。殿下から私を守ると言い、それからは私とテオドール殿下のクッションになり、殿下を私に近づけないようにしてくれていた。
今回リルゾール王国の留学に私を入れたのは父で、婚約破棄され国外追放になったあと、母の親戚がいるリルゾール王国に逃げて来られるように人脈を作らせるつもりだったらしい。それがまさか、王太子と婚約することになるとは。父は結果オーライだなとセレニカ王国に戻る前に安堵していた。
ふたりがガゼボに来てくれた。挨拶の後、他愛ない話をする。ジュリナ嬢は前の世界のジュリナ嬢ときっと同一人物だと思う。前の人生では私と同じテオドール殿下のお妃候補で小さい頃は一緒に殿下のお茶会に参加していたが今の世界ではこの留学が決まるまで顔を合わすことはなかった。
ジェミニーナ嬢は前の世界では聖女だったので、いつも大聖堂で祈っていた。学校のチャペルでも祈っていた。挨拶程度しか話をしたことはなかったが、透明感があり、透き通っているようなクリアな印象は前も今も変わらない。儚げで庇護欲をそそるイメージだ。
私は今日のお茶会で前の人生の記憶があるとふたりに告白するつもりだ。時間を巻き戻してくれた人を見つけてお礼を言いたい。ふたりなら何か知っているかもしれない。
「今日は来てくださりありがとうございます。せっかくご縁があり、リルゾール王国にきたのだから、おふたりとはもっと仲良くしたいと思っていたの。年も同じだし、ちゃんと友達になってくれるとうれしいわ。私のことはルナでもベルでも良いので呼んでくださいね」
ふたりはにこやかに微笑み頷いてくれた。ジュリナがちょっと笑いながら口を開いた。
「では、ベル様にしましょうか。ルセフィ殿下がルナと呼ばれているので、同じ愛称を呼ぶと怒られそうですしね。私のことはリナと呼んでくださいませ」
ルセフィ様って、そんなふうに見られているのね。
「私のことはニーナと呼んでくださいませ」
「イグザレルト様に叱られない?」
またジュリナがチャチャを入れる。
「大丈夫ですわ。レルト様はニナと呼ぶのでちょっと違いますし……」
イグザレルト様もそっち系のキャラなのか。
私達はお互いをベル、リナ、ニーナと呼び合うことになった。
私はお茶を一口飲んだ後、意を決して二人に声をかけた。
「私、おふたりに話しておきたい事があるの。今からする話はにわかには信じられないと思うのだけれど、本当の話なので聞いてほしいの。実は私、この人生は2度目なの」
ふたりは驚いた顔をしている。そりゃ驚くわね。でも本当のことだもの。
私はふたりに前の人生で起こった事を話しだした。
⭐︎⭐︎⭐︎
しばらく夜22時の更新になります。よろしくお願いします。
私はお妃教育を受けながら、ミオナール様に魔法を習っている。お妃教育はセレニカ王国で受けていた王太子妃教育とさほど変わらない。さすがに3度目ともなると何の問題もなくサクサク進んでいる。
リルゾール王国独特の文化や王家の事を学べばほぼ終了らしい。リルゾール王国の文化やマナーに関してはリオナ姉様や刺繍の会の皆さんが手取り足取り教えてくれるので有難い。恵まれているなぁと感謝しかない。
今日は留学を延長し、リルゾール王国に残ったジェミニーナ嬢とジュリナ嬢をお世話になっているブロチゾラム家の中庭にあるガゼボに呼んでお茶会をすることになった。
おふたりとゆっくりお話ししたかったのだが、ジュリナ嬢は魔道具作りで忙しそうだし、ジェミニーナ嬢はいつも横にイグザレルト様がいて、ゆっくり話ができない。留学して一年も経っているのに3人だけでゆっくり会うのははじめてかもしれない。
今日はイグザレルト様が出かけると言うので、ジェミニーナ様を奪い取ることにした。それにしてもあんなに執着されてジェミニーナ様は辛くならないのかしら? 確か前の世界でも婚約していたと思うけれど、そんなに一緒にいるところを見たことがなかった。
あの当時はいつもイグザレルト様は恋愛に興味がないのかと思っていたけど、あの女にはすぐなびいたじゃない。あの女よりジェミニーナ嬢の方が絶対可愛いのに。男なんてみんなあんな女が好きなのかしら? あぁ嫌だ嫌だ。あんな女もう二度と会いたくないわ。
幸せでもう忘れていたつもりなのに、ふとあの女を思い出し、吐き気を催す。あの女が現れてからの一年は本当に辛かったし、あの卒業パーティーでの断罪から死に至るまでの時間は本当に思い出したくない。
今日はリルゾール王国で人気のある菓子店のケーキを購入して、侍女のミレーナにお茶の用意をしてもらう。リルゾール王国のお菓子は本当に美味しいのでおふたりに食べてもらいたかった。
「ルナベルお嬢様、一緒に来たご令嬢方とやっとお話しできますね。今日は殿下もいないし、ゆっくりして下さいませ」
ミレーナは楽しげにお茶の用意をしてくれている。
ルセフィ様はイグザレルト様と一緒に魔法騎士団の団長さんにお会いしている。なので、私もジェミニーナ嬢ものんびりできるのだ。
今、思い出せば私の計画は7歳で池に落ちた時に前の人生の記憶を思い出したことにはじまった。
父には、時が戻ったと言っても信じてもらえないだろうと、熱でうなされている時に夢を見た。貴族学校の3年になったら、男爵家の養女になった変な女が現れ、殿下や側近達、アローノまでもがその女と恋に落ち、私は無実の罪を着せられ婚約解消され、国外追放になり、国境に向かう馬車を、テオドール殿下とその女の命令を受けた破落戸達に襲われて、命を落とす。だからそれを回避するために何とかして婚約を解消したいと言った。
初めはただの夢だろうと父は言っていたが、あまりにも私が悲壮な顔で訴えたせいか、御神託だということになり、何度も適当な理由をつけて婚約解消の打診をしてくれていた。
弟のアローノも自分がそんな女に夢中になり、私を貶めたなんて、自分に怒りが止まらない。殿下から私を守ると言い、それからは私とテオドール殿下のクッションになり、殿下を私に近づけないようにしてくれていた。
今回リルゾール王国の留学に私を入れたのは父で、婚約破棄され国外追放になったあと、母の親戚がいるリルゾール王国に逃げて来られるように人脈を作らせるつもりだったらしい。それがまさか、王太子と婚約することになるとは。父は結果オーライだなとセレニカ王国に戻る前に安堵していた。
ふたりがガゼボに来てくれた。挨拶の後、他愛ない話をする。ジュリナ嬢は前の世界のジュリナ嬢ときっと同一人物だと思う。前の人生では私と同じテオドール殿下のお妃候補で小さい頃は一緒に殿下のお茶会に参加していたが今の世界ではこの留学が決まるまで顔を合わすことはなかった。
ジェミニーナ嬢は前の世界では聖女だったので、いつも大聖堂で祈っていた。学校のチャペルでも祈っていた。挨拶程度しか話をしたことはなかったが、透明感があり、透き通っているようなクリアな印象は前も今も変わらない。儚げで庇護欲をそそるイメージだ。
私は今日のお茶会で前の人生の記憶があるとふたりに告白するつもりだ。時間を巻き戻してくれた人を見つけてお礼を言いたい。ふたりなら何か知っているかもしれない。
「今日は来てくださりありがとうございます。せっかくご縁があり、リルゾール王国にきたのだから、おふたりとはもっと仲良くしたいと思っていたの。年も同じだし、ちゃんと友達になってくれるとうれしいわ。私のことはルナでもベルでも良いので呼んでくださいね」
ふたりはにこやかに微笑み頷いてくれた。ジュリナがちょっと笑いながら口を開いた。
「では、ベル様にしましょうか。ルセフィ殿下がルナと呼ばれているので、同じ愛称を呼ぶと怒られそうですしね。私のことはリナと呼んでくださいませ」
ルセフィ様って、そんなふうに見られているのね。
「私のことはニーナと呼んでくださいませ」
「イグザレルト様に叱られない?」
またジュリナがチャチャを入れる。
「大丈夫ですわ。レルト様はニナと呼ぶのでちょっと違いますし……」
イグザレルト様もそっち系のキャラなのか。
私達はお互いをベル、リナ、ニーナと呼び合うことになった。
私はお茶を一口飲んだ後、意を決して二人に声をかけた。
「私、おふたりに話しておきたい事があるの。今からする話はにわかには信じられないと思うのだけれど、本当の話なので聞いてほしいの。実は私、この人生は2度目なの」
ふたりは驚いた顔をしている。そりゃ驚くわね。でも本当のことだもの。
私はふたりに前の人生で起こった事を話しだした。
⭐︎⭐︎⭐︎
しばらく夜22時の更新になります。よろしくお願いします。
1,016
お気に入りに追加
2,141
あなたにおすすめの小説

冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)
公爵令嬢は逃げ出すことにした【完結済】
佐原香奈
恋愛
公爵家の跡取りとして厳しい教育を受けるエリー。
異母妹のアリーはエリーとは逆に甘やかされて育てられていた。
幼い頃からの婚約者であるヘンリーはアリーに惚れている。
その事実を1番隣でいつも見ていた。
一度目の人生と同じ光景をまた繰り返す。
25歳の冬、たった1人で終わらせた人生の繰り返しに嫌気がさし、エリーは逃げ出すことにした。
これからもずっと続く苦痛を知っているのに、耐えることはできなかった。
何も持たず公爵家の門をくぐるエリーが向かった先にいたのは…
完結済ですが、気が向いた時に話を追加しています。

魅了魔法…?それで相思相愛ならいいんじゃないんですか。
iBuKi
恋愛
私がこの世界に誕生した瞬間から決まっていた婚約者。
完璧な皇子様に婚約者に決定した瞬間から溺愛され続け、蜂蜜漬けにされていたけれど――
気付いたら、皇子の隣には子爵令嬢が居て。
――魅了魔法ですか…。
国家転覆とか、王権強奪とか、大変な事は絡んでないんですよね?
第一皇子とその方が相思相愛ならいいんじゃないんですか?
サクッと婚約解消のち、私はしばらく領地で静養しておきますね。
✂----------------------------
カクヨム、なろうにも投稿しています。

謹んで婚約者候補を辞退いたします
四折 柊
恋愛
公爵令嬢ブリジットは王太子ヴィンセントの婚約者候補の三人いるうちの一人だ。すでに他の二人はお試し期間を経て婚約者候補を辞退している。ヴィンセントは完璧主義で頭が古いタイプなので一緒になれば気苦労が多そうで将来を考えられないからだそうだ。ブリジットは彼と親しくなるための努力をしたが報われず婚約者候補を辞退した。ところがその後ヴィンセントが声をかけて来るようになって……。(えっ?今になって?)傲慢不遜な王太子と実は心の中では口の悪い公爵令嬢のくっつかないお話。全3話。暇つぶしに流し読んで頂ければ幸いです。

【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します
hikari
恋愛
レガローグ王国の王太子、アンドリューに突如として「側妃にする」と言われたキャサリン。一緒にいたのはアトキンス男爵令嬢のイザベラだった。
キャサリンは婚約破棄を告げ、護衛のエドワードと侍女のエスターと共に実家へと帰る。そして、魔法使いに弟子入りする。
その後、モナール帝国がレガローグに侵攻する話が上がる。実はエドワードはモナール帝国のスパイだった。後に、エドワードはモナール帝国の第一皇子ヴァレンティンを紹介する。
※ざまあの回には★がついています。

純白の牢獄
ゆる
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

婚約破棄の、その後は
冬野月子
恋愛
ここが前世で遊んだ乙女ゲームの世界だと思い出したのは、婚約破棄された時だった。
身体も心も傷ついたルーチェは国を出て行くが…
全九話。
「小説家になろう」にも掲載しています。

あなたへの想いを終わりにします
四折 柊
恋愛
シエナは王太子アドリアンの婚約者として体の弱い彼を支えてきた。だがある日彼は視察先で倒れそこで男爵令嬢に看病される。彼女の献身的な看病で医者に見放されていた病が治りアドリアンは健康を手に入れた。男爵令嬢は殿下を治癒した聖女と呼ばれ王城に招かれることになった。いつしかアドリアンは男爵令嬢に夢中になり彼女を正妃に迎えたいと言い出す。男爵令嬢では妃としての能力に問題がある。だからシエナには側室として彼女を支えてほしいと言われた。シエナは今までの献身と恋心を踏み躙られた絶望で彼らの目の前で自身の胸を短剣で刺した…………。(全13話)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる