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22話 前の世界の話をしました
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「殿下、聞いてほしいお話があるのです。これはとても信じられない話です。でも嘘偽りの無い本当の話です」
私はルセフィ殿下に巻き戻る前の話をした。ルセフィ殿下は何も言わずに話を聞いてくれている。
「ルナベル嬢、辛かったな。そんな目に合わせた奴の側にいて怖かっただろう」
ルセフィ殿下はそう言うと私を抱きしめ、子供をあやすように背中をぽんぽんと撫でてくれた。
「信じてくれるのですか」
「ああ、信じる。きっと誰かが時を巻き戻す魔法を使ったのだと思う」
時を巻き戻す魔法? そんな魔法があるのか?
殿下は魔法について私に説明をしてくれた。
「リルゾール王国には時を巻き戻す魔法がある。しかし、かなりの魔力と魔法力が必要で女神リルゾールに認められないとそれを発動できない。それくらい大変な魔法なんだ。並大抵の覚悟で繰り出せる魔法ではない。きっと自分のしたことを余程後悔した者が修行を積み発動したのかもな」
「そうなのですね。では、誰かがその魔法を使って時を巻き戻したのですね」
誰が巻き戻したのだろう。まさかテオドール殿下? いや、それはないな。テオドール殿下は前の記憶はない。
「思い残しや後悔があって、魔法を使い時を戻した人がいるのだろう。でも、巻き戻した者は必ず記憶があるはずだ。心当たりはあるか?」
私は頭を左右に振った。心当たりなんてないわ。私以外に前の記憶がある人がいるの?
ルセフィ殿下は何か考え込んでいるようだ。
「しかし、今の世界は前の世界と流れが変わってきているのだろう。誰かが意図的に変えているのかもしれないな。前の記憶を持つ者が何人かいて、それを話し、信じたものが同じにならないように手を打っているのだろうか」
「父にはそのまま話しても信じてもらえないと思い、夢でご神託が降りたと前の世界の話を伝えました。他の記憶のある方々も身近な人に伝えたと?」
「そうだな。ルナベル嬢が亡くなった後の世界がセレニカ王国にとって厳しいものだったとしたら。その記憶がある者が、自国が傾いていく予言のようなことを伝え、周りの者がそれを聞いて信じ、手を打ったのかもしれない。たとえ子供の言ったことにしても何人かが同じ事を言えば信憑性はおびてくる」
ルセフィ殿下は私を信じてくれた。そして色々考えてくれている。それが嬉しい。
「ク、クラリス様を助けなければ! あの女が現れたら私の代わりに断罪されてしまいます」
それだけは避けなければならない。クラリス様をあんな目にあわせるわけにはいかない。
「それは大丈夫だ。クラリスとテオドール殿が結婚するのは、テオドール殿が学校を卒業してからだ。それまでクラリスはこのリルゾール王国にいる。もし、その女が現れて、テオドール殿が血迷ってもリルゾール王国にいるクラリスに手は出せない」
よかった。それなら安心だ。
「それに、多分、それは魅了の魔法だな。クラリスだったら見ただけでわかるからすぐに防御もできるし、解くことができる。クラリスはセレニカ王国くらいなら国全体に結界を張れるだろう。クラリスを娶ることでセレニカ王国は利を得るだろう。もうルナベル嬢は何も心配しなくていい。ルナベル嬢もルナベル嬢の家族も、私とリルゾール王国が護る。安心して私のところに嫁いできてほしい」
私は涙が止まらなかった。これで安心できる。私はもう断罪される事も死を選ぶ事もない。クラリス様も私の代わりに断罪されない。そして、あの女が現れてもクラリス様がテオドール殿下やみんなを守ってくれる。よかった。本当によかった。私はルセフィ殿下の腕の中で泣き続けた。
時を巻き戻してくれた人にお礼を言いたい。本当にありがとうございます。あなたのおかげで私は幸せになれます。
私はルセフィ殿下に巻き戻る前の話をした。ルセフィ殿下は何も言わずに話を聞いてくれている。
「ルナベル嬢、辛かったな。そんな目に合わせた奴の側にいて怖かっただろう」
ルセフィ殿下はそう言うと私を抱きしめ、子供をあやすように背中をぽんぽんと撫でてくれた。
「信じてくれるのですか」
「ああ、信じる。きっと誰かが時を巻き戻す魔法を使ったのだと思う」
時を巻き戻す魔法? そんな魔法があるのか?
殿下は魔法について私に説明をしてくれた。
「リルゾール王国には時を巻き戻す魔法がある。しかし、かなりの魔力と魔法力が必要で女神リルゾールに認められないとそれを発動できない。それくらい大変な魔法なんだ。並大抵の覚悟で繰り出せる魔法ではない。きっと自分のしたことを余程後悔した者が修行を積み発動したのかもな」
「そうなのですね。では、誰かがその魔法を使って時を巻き戻したのですね」
誰が巻き戻したのだろう。まさかテオドール殿下? いや、それはないな。テオドール殿下は前の記憶はない。
「思い残しや後悔があって、魔法を使い時を戻した人がいるのだろう。でも、巻き戻した者は必ず記憶があるはずだ。心当たりはあるか?」
私は頭を左右に振った。心当たりなんてないわ。私以外に前の記憶がある人がいるの?
ルセフィ殿下は何か考え込んでいるようだ。
「しかし、今の世界は前の世界と流れが変わってきているのだろう。誰かが意図的に変えているのかもしれないな。前の記憶を持つ者が何人かいて、それを話し、信じたものが同じにならないように手を打っているのだろうか」
「父にはそのまま話しても信じてもらえないと思い、夢でご神託が降りたと前の世界の話を伝えました。他の記憶のある方々も身近な人に伝えたと?」
「そうだな。ルナベル嬢が亡くなった後の世界がセレニカ王国にとって厳しいものだったとしたら。その記憶がある者が、自国が傾いていく予言のようなことを伝え、周りの者がそれを聞いて信じ、手を打ったのかもしれない。たとえ子供の言ったことにしても何人かが同じ事を言えば信憑性はおびてくる」
ルセフィ殿下は私を信じてくれた。そして色々考えてくれている。それが嬉しい。
「ク、クラリス様を助けなければ! あの女が現れたら私の代わりに断罪されてしまいます」
それだけは避けなければならない。クラリス様をあんな目にあわせるわけにはいかない。
「それは大丈夫だ。クラリスとテオドール殿が結婚するのは、テオドール殿が学校を卒業してからだ。それまでクラリスはこのリルゾール王国にいる。もし、その女が現れて、テオドール殿が血迷ってもリルゾール王国にいるクラリスに手は出せない」
よかった。それなら安心だ。
「それに、多分、それは魅了の魔法だな。クラリスだったら見ただけでわかるからすぐに防御もできるし、解くことができる。クラリスはセレニカ王国くらいなら国全体に結界を張れるだろう。クラリスを娶ることでセレニカ王国は利を得るだろう。もうルナベル嬢は何も心配しなくていい。ルナベル嬢もルナベル嬢の家族も、私とリルゾール王国が護る。安心して私のところに嫁いできてほしい」
私は涙が止まらなかった。これで安心できる。私はもう断罪される事も死を選ぶ事もない。クラリス様も私の代わりに断罪されない。そして、あの女が現れてもクラリス様がテオドール殿下やみんなを守ってくれる。よかった。本当によかった。私はルセフィ殿下の腕の中で泣き続けた。
時を巻き戻してくれた人にお礼を言いたい。本当にありがとうございます。あなたのおかげで私は幸せになれます。
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