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21話 ルセフィ殿下とお話をしなくては
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ルセフィ殿下に会わなければならない。先ぶれを出して、約束を取り付けよう。いや、この時間なら図書館だ。図書館に行けば殿下に会えるはず。あそこならほとんど誰も来ない。殿下とゆっくり話ができる。
図書館に行くと、思った通りルセフィ殿下は閲覧室のソファーに腰掛け、ひとりで本を読んでいた。
私は静かに殿下の傍に近づき声をかけた。
「ルセフィ様、発言お許しいただけますか」
殿下は不思議そうな顔をして私を見つめる。
「どうしたの? いつものように普通に接してくれればいいよ」
穏やかな笑みを浮かべてくれているおかげで勇気が出る。
「ありがとうございます。婚約の話なのですが、ここでお話してもよろしいですか」
まだ内密な話なので、図書館でしてよいものか心配になったが、殿下は頷き、手に持っていた本を閉じて私にソファーに座るように促した。
「大丈夫だ。ここには王族以外入れない。心配なら誰も入れないようにしよう。レキップ、誰も入れないようにしてくれ」
「畏まりました」
側近のレキップ様が扉の外に出て、護衛に声をかけているようだ。
「殿下、私もしばらく席を外します。御用があればお呼びください」
レキップ様も図書館の閲覧室の外に出た。閲覧室の中は私とルセフィ殿下だけだ。
殿下は無表情のまま口を開く。
「ルナベル嬢、私との婚約の話を断りに来たのか?」
断りに来たと思ったのか……。
ルセフィ殿下の気持ちがわからない。やはりこの縁談は迷惑なのだろう。
「ルセフィ殿下はどうされたいですか? クラリス様の為に仕方なく私と結婚するおつもりでしょうか?」
「クラリスの為ではない」
「では、国の為ですか? クラリス様とテオドール殿下が結婚すれば国同士の縁は強固なものになります。仕方なく私を受け入れるおつもりですか? 私の事はお気になさらなくてもいいのですよ」
ルセフィ殿下は、急に驚いたような顔になり、私を見ている。
「……泣かないでくれ」
えっ? 私泣いているの。
どうやら涙が勝手にポロポロと流れているようだ。殿下はポケットからハンカチを取り出して、私の顔に当ててくれる。なんだか怖い顔だ。
「そんなに私と結婚するのが嫌か。テオドール殿がいいのか」
へ? 何でそんなふうに思うのだろう? 普通はそんなふうに思うものなのか?
「違います。嫌ではありませんし、テオドール殿下はただの政略的な婚約者です。ルセフィ殿下が好きでもない私を無理に押し付けられるなんて耐えられません。私は私を押し付けられることでルセフィ殿下を不幸にしたくありません。殿下、どうぞお好きな方と結婚して下さいませ」
ダメだ。涙が止まらない。恥ずかしくて殿下のハンカチで顔を覆った。
「好きならいいのか」
好きなら?
「私は初めて会った時からルナベル嬢のことしか考えられなくなった。でも、ルナベル嬢はテオドール殿の婚約者。諦めるしかなかった。今までどんな手を使っても欲しいものは手に入れた。だがこればかりは無理だ。私がどんなにルナベル嬢を恋慕ってもルナベル嬢の心はテオドール殿にある。酷い手を使ってルナベル嬢を私のものにしてもルナベル嬢を傷つけるだけだ。だから私はいつも友達のふりをしてルナベル嬢に会った。辛くて苦しくて仕方なかった。でも会わずにはいられない。こんな気持ちになったのは初めてで、もうどうしていいのかわからなかった。ルナベル嬢が私を愛してなくても構わない。テオドール殿と結婚せずに私を選んでよかったと必ず思わせる。だから私と結婚してほしい。クラリスの為でも、国の為でもない」
ルセフィ殿下が私の前に跪いた。
「ルナベル嬢、愛している。私は生涯ルナベル嬢ただ一人を愛し抜く。私と結婚してほしい」
ルセフィ殿下がそんな気持ちでいたなんて全く気がつかなかった。
「ルセフィ殿下、私も初めてお会いした時からルセフィ殿下をお慕いしておりました。でも、それは許されないこととずっと秘めておりました。ルセフィ殿下が本当に私を求めて下さるのなら私は迷いません。私の心にあるのはルセフィ殿下です。お側において下さいませ」
ルセフィ殿下は立ち上がり私を抱きしめた。
巻き戻った人生ではテオドール殿下に断罪されたくない。あんな死に方はしたくない。そう思って生きてきた。断罪された後、殺されないように、ひとりで生きていけるようにリルゾール王国に留学した。
留学した最初の頃はそればかり考えて動いていた。でもルセフィ殿下と一緒の時間を過ごすうちにそんな事はどうでもよくなった。ルセフィ殿下のことしか考えられなくなった。
神さま、時間が戻ったのは私へのギフトだと思ってもいいのでしょうか。
前の人生で酷い目にあった私に今の人生をプレゼントしてくれたということでしょうか? それともまたあの女が現れて、今度はルセフィ殿下に断罪されるのでしょうか? ルセフィ殿下に断罪されるなら殺してほしい。
愛する人に裏切られたらもう生きてはいられない。
私は巻き戻る前の人生の話をルセフィ殿下にすることにした。
図書館に行くと、思った通りルセフィ殿下は閲覧室のソファーに腰掛け、ひとりで本を読んでいた。
私は静かに殿下の傍に近づき声をかけた。
「ルセフィ様、発言お許しいただけますか」
殿下は不思議そうな顔をして私を見つめる。
「どうしたの? いつものように普通に接してくれればいいよ」
穏やかな笑みを浮かべてくれているおかげで勇気が出る。
「ありがとうございます。婚約の話なのですが、ここでお話してもよろしいですか」
まだ内密な話なので、図書館でしてよいものか心配になったが、殿下は頷き、手に持っていた本を閉じて私にソファーに座るように促した。
「大丈夫だ。ここには王族以外入れない。心配なら誰も入れないようにしよう。レキップ、誰も入れないようにしてくれ」
「畏まりました」
側近のレキップ様が扉の外に出て、護衛に声をかけているようだ。
「殿下、私もしばらく席を外します。御用があればお呼びください」
レキップ様も図書館の閲覧室の外に出た。閲覧室の中は私とルセフィ殿下だけだ。
殿下は無表情のまま口を開く。
「ルナベル嬢、私との婚約の話を断りに来たのか?」
断りに来たと思ったのか……。
ルセフィ殿下の気持ちがわからない。やはりこの縁談は迷惑なのだろう。
「ルセフィ殿下はどうされたいですか? クラリス様の為に仕方なく私と結婚するおつもりでしょうか?」
「クラリスの為ではない」
「では、国の為ですか? クラリス様とテオドール殿下が結婚すれば国同士の縁は強固なものになります。仕方なく私を受け入れるおつもりですか? 私の事はお気になさらなくてもいいのですよ」
ルセフィ殿下は、急に驚いたような顔になり、私を見ている。
「……泣かないでくれ」
えっ? 私泣いているの。
どうやら涙が勝手にポロポロと流れているようだ。殿下はポケットからハンカチを取り出して、私の顔に当ててくれる。なんだか怖い顔だ。
「そんなに私と結婚するのが嫌か。テオドール殿がいいのか」
へ? 何でそんなふうに思うのだろう? 普通はそんなふうに思うものなのか?
「違います。嫌ではありませんし、テオドール殿下はただの政略的な婚約者です。ルセフィ殿下が好きでもない私を無理に押し付けられるなんて耐えられません。私は私を押し付けられることでルセフィ殿下を不幸にしたくありません。殿下、どうぞお好きな方と結婚して下さいませ」
ダメだ。涙が止まらない。恥ずかしくて殿下のハンカチで顔を覆った。
「好きならいいのか」
好きなら?
「私は初めて会った時からルナベル嬢のことしか考えられなくなった。でも、ルナベル嬢はテオドール殿の婚約者。諦めるしかなかった。今までどんな手を使っても欲しいものは手に入れた。だがこればかりは無理だ。私がどんなにルナベル嬢を恋慕ってもルナベル嬢の心はテオドール殿にある。酷い手を使ってルナベル嬢を私のものにしてもルナベル嬢を傷つけるだけだ。だから私はいつも友達のふりをしてルナベル嬢に会った。辛くて苦しくて仕方なかった。でも会わずにはいられない。こんな気持ちになったのは初めてで、もうどうしていいのかわからなかった。ルナベル嬢が私を愛してなくても構わない。テオドール殿と結婚せずに私を選んでよかったと必ず思わせる。だから私と結婚してほしい。クラリスの為でも、国の為でもない」
ルセフィ殿下が私の前に跪いた。
「ルナベル嬢、愛している。私は生涯ルナベル嬢ただ一人を愛し抜く。私と結婚してほしい」
ルセフィ殿下がそんな気持ちでいたなんて全く気がつかなかった。
「ルセフィ殿下、私も初めてお会いした時からルセフィ殿下をお慕いしておりました。でも、それは許されないこととずっと秘めておりました。ルセフィ殿下が本当に私を求めて下さるのなら私は迷いません。私の心にあるのはルセフィ殿下です。お側において下さいませ」
ルセフィ殿下は立ち上がり私を抱きしめた。
巻き戻った人生ではテオドール殿下に断罪されたくない。あんな死に方はしたくない。そう思って生きてきた。断罪された後、殺されないように、ひとりで生きていけるようにリルゾール王国に留学した。
留学した最初の頃はそればかり考えて動いていた。でもルセフィ殿下と一緒の時間を過ごすうちにそんな事はどうでもよくなった。ルセフィ殿下のことしか考えられなくなった。
神さま、時間が戻ったのは私へのギフトだと思ってもいいのでしょうか。
前の人生で酷い目にあった私に今の人生をプレゼントしてくれたということでしょうか? それともまたあの女が現れて、今度はルセフィ殿下に断罪されるのでしょうか? ルセフィ殿下に断罪されるなら殺してほしい。
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