【完結】公爵令嬢ルナベルはもう一度人生をやり直す

金峯蓮華

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19話 テオドール殿下とお話をしました

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 私はテオドール殿下に呼ばれた。殿下の部屋のサロンに到着すると、殿下は白いシャツと紺のトラウザースというラフな姿で待っていた。

「久しぶりだな、ルナベル。ここに来てからは同じ城の中にいるのにゆっくり会うことがなかった。息災か?」

「はい。ご無沙汰しており申し訳ございません。夕飯の時間にお顔を見せていただいておりましたのでお元気で勉学に励んでいらっしゃると思っておりました。それでお話とは?」

 きっとクラリス様との結婚話だろう。テオドール殿下は難しい顔をしている。

「クラリス殿と結婚するようにリルゾール王国の国王陛下に言われたのだ。この話はセレニカ王国の父の元にもいっている」

「さようでございますか」
 
「リルゾール王国のような大国の国王の王命にセレニカ王国は逆らえない。ルナベルとは幼い頃から共に進むつもりで生きてきたがまさか、ここで婚約を解消することになるとは思わなかった」

 私はどう言っていいのかわからない。テオドール殿下は苦悩と言っていいくらいの苦しげな表情をしている。

「クラリス殿は私と婚約を解消するルナベルと兄のルセフィ殿下との結婚を望んでいる。ルナベル、受けてはくれぬか」

 受けてはくれぬか……か。

「私がクラリス殿と結婚し、ルナベルがルセフィ殿下と結婚してくれればセレニカ王国とリルゾール王国の間には固く太い絆ができる。我が国としては、リルゾール王国との縁は喉から手が出るくらいほしいものだ。私はセレニカ王国の王太子だ。国の利益を考えればこの縁談を断るわけにはいかない。ルナベル頼む」

 テオドール殿下は私に頭を下げる。本当にこの人は真面目な王太子だ。それなのにどうしてあんな女にひっかかったのだろう。3年後、またあんな人になるのだろうか?

「仰せのままに」

 私はそう言うとカーテシーをし、部屋から出た。私に良い返事がもらえたのでホッとした顔をしている。

 テオドール様、あの女が現れても惑わされないでくださいね。私は心の中で祈った。

 部屋に戻るとアローノが待っていた。

「姉様、おめでとうございます。できればセレニカ王国の方と結婚して欲しかったのですが、リルゾール王国なら安心です。クラリス姫様がわがままでよかった」

 アローノは嬉しそうだ。私も婚約解消はうれしいが、クラリス様が断罪されるのかもしれないと思うと居た堪れない。私なら国外追放で済むがクラリス様だとそれこそ戦争になる。クラリス様には私が断罪された時にはセレニカ王国にいないようにお願いし、了承してもらえたがはたして大丈夫なのだろうか。
 
 ルセフィ殿下にも申し訳なく思う。私なんかを押し付けられるのだ。優しいルセフィ殿下は妹の為に私と結婚するだろう。でも、好きな人に好きになってもらえず結婚するのなんか辛すぎる。
 
 ルセフィ殿下との結婚は辞退し修道院に行こう。それがいい。

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