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18話 一肌脱いでやりますか(クラリス視点)
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最近、兄の様子がおかしいと気がついた。
セレニカ王国から留学生が来た日からなんとなくそんな感じがしたが、最近本当におかしい。15年あの兄の妹をやっているが、あんな兄を見るのは初めてだ。
兄はとても忙しい。王太子としての執務以外にも自分で立ち上げている仕事がいくつもあり、いつも飛び回っているのでたいてい城にはいない。
いないはずなのだが、留学生が来てからは毎日城にいる。
それに、昔から本をよく読む人だったが、あそこまで読んでいたか? 最近は図書館に入り浸っている。しかも、“感想を語り合うお茶会”なんて、あのお兄様がそんな事を言いだすなんて信じられない。あの兄が小説なんて読むのか? 無いわ~。絶対におかしい、
きっとあの方のせいだろう。あの方に会ってから兄はおかしくなったのだ。まぁ、私と母くらいしか気はついていないが。
しかし、あの方は他国の王太子の婚約者、いくらお兄様でもどうにもならない。あの方を手に入れるためには危ない橋を渡る必要がある。セレニカ王国を占領し、王家を失脚させ、自分が王になれば奪うことはできるだろうが、セレニカ王国に非はないし、我が国の友好国だ。いくら腹黒策士のお兄様でも難しいな。それにそんなことをしたらあの方に嫌われるだろう。
兄の気持ちを確かめてみよう。
「お兄様、ルナベル様のことがお好きなの?」
私の不躾な言葉にお兄様はうろたえている。これは間違いないな。
「な、な、何を言っているんだ。ルナベル嬢はテオドール殿の婚約者だぞ。そんなことある訳がないだろう」
腹黒で策士で、しかも冷酷。感情をなかなか表に出さないお兄様がこんなにうろたえるなんて面白い。
「ルナベル様はどうなのかしら? お兄様のこと好きなのかしら?」
「馬鹿なことを言うな。私は忙しい。そんな話なら、もう行くぞ」
兄はうろたえたままサロンを後にした。
これはかなり重症だわ。あの兄でも恋をするとあんな風になるのだな。
私には“リルゾール王国のわがまま姫”という二つ名がある。確かに私は突拍子もないわがままを言うことがあり、その度に兄には尻拭いをしてもらってきた。兄には今までの恩がある。
これは私が一肌脱ぐしかないな。私のわがままということで、誰も傷付かず、リルゾール王国にもセレニカ王国にも問題が起きないやり方で、兄の願いを叶えてやろうかしら。まぁ、あれしかないわね。
テオドール様の気持ちを考えるとなんとも言えないが、彼も一国の王太子だ。国のために、犠牲になるのに異はないだろう。それにセレニカ王国からしたらこんな良い話はない。断るなんてあり得ない。
「お父様、お願いがあるの」
私は先ぶれを出し。執務室にいるお父様に会いに行った。そしていつものようにおねだりをする時の甘えた声をだし、可愛い顔を作る。
「何かな? また欲しいものがあるのか?」
欲しいもの? そうね。欲しいものと言われると欲しいものかもしれないわね。
まぁ、欲しいのは私ではなくお兄様だけどね。
セレニカ王国から留学生が来た日からなんとなくそんな感じがしたが、最近本当におかしい。15年あの兄の妹をやっているが、あんな兄を見るのは初めてだ。
兄はとても忙しい。王太子としての執務以外にも自分で立ち上げている仕事がいくつもあり、いつも飛び回っているのでたいてい城にはいない。
いないはずなのだが、留学生が来てからは毎日城にいる。
それに、昔から本をよく読む人だったが、あそこまで読んでいたか? 最近は図書館に入り浸っている。しかも、“感想を語り合うお茶会”なんて、あのお兄様がそんな事を言いだすなんて信じられない。あの兄が小説なんて読むのか? 無いわ~。絶対におかしい、
きっとあの方のせいだろう。あの方に会ってから兄はおかしくなったのだ。まぁ、私と母くらいしか気はついていないが。
しかし、あの方は他国の王太子の婚約者、いくらお兄様でもどうにもならない。あの方を手に入れるためには危ない橋を渡る必要がある。セレニカ王国を占領し、王家を失脚させ、自分が王になれば奪うことはできるだろうが、セレニカ王国に非はないし、我が国の友好国だ。いくら腹黒策士のお兄様でも難しいな。それにそんなことをしたらあの方に嫌われるだろう。
兄の気持ちを確かめてみよう。
「お兄様、ルナベル様のことがお好きなの?」
私の不躾な言葉にお兄様はうろたえている。これは間違いないな。
「な、な、何を言っているんだ。ルナベル嬢はテオドール殿の婚約者だぞ。そんなことある訳がないだろう」
腹黒で策士で、しかも冷酷。感情をなかなか表に出さないお兄様がこんなにうろたえるなんて面白い。
「ルナベル様はどうなのかしら? お兄様のこと好きなのかしら?」
「馬鹿なことを言うな。私は忙しい。そんな話なら、もう行くぞ」
兄はうろたえたままサロンを後にした。
これはかなり重症だわ。あの兄でも恋をするとあんな風になるのだな。
私には“リルゾール王国のわがまま姫”という二つ名がある。確かに私は突拍子もないわがままを言うことがあり、その度に兄には尻拭いをしてもらってきた。兄には今までの恩がある。
これは私が一肌脱ぐしかないな。私のわがままということで、誰も傷付かず、リルゾール王国にもセレニカ王国にも問題が起きないやり方で、兄の願いを叶えてやろうかしら。まぁ、あれしかないわね。
テオドール様の気持ちを考えるとなんとも言えないが、彼も一国の王太子だ。国のために、犠牲になるのに異はないだろう。それにセレニカ王国からしたらこんな良い話はない。断るなんてあり得ない。
「お父様、お願いがあるの」
私は先ぶれを出し。執務室にいるお父様に会いに行った。そしていつものようにおねだりをする時の甘えた声をだし、可愛い顔を作る。
「何かな? また欲しいものがあるのか?」
欲しいもの? そうね。欲しいものと言われると欲しいものかもしれないわね。
まぁ、欲しいのは私ではなくお兄様だけどね。
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