【完結】公爵令嬢ルナベルはもう一度人生をやり直す

金峯蓮華

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15話 いきなりですか?

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 ここはどこなのだろう。見たことのない天井だ。
 
 私はクラリス様とお話をしていて目が回って倒れてしまったようだ。 

 枕元を見ると、クラリス様と目が合った。

「ルナベル様! 良かったわ。気がついたのね。驚かせてしまったみたいでごめんなさいね」
 
 クラリス様の後ろには王妃殿下、国王陛下、がいる。ロイヤルファミリーに囲まれて寝てる私。困る困る。私は慌てて起き上がった。

 国王陛下は物凄い困り顔だ。

「ルナベル嬢、クラリスがいきなりあんなことを言ったので驚かせてしまったな。すまない。クラリスはわがままでな。言い出すと聞かないのだ。私が甘やかしたせいで稀代のわがまま姫になってしまった。本当に申し訳ない」

 国王陛下に頭を下げられるなんてどうしよう。

「陛下、頭をお上げくださいませ。クラリス様が悪いわけではありません」

 陛下はすくっと顔を上げる。

「では、許してくれるか? テオドール殿をクラリスに譲ってくれるだろうか?」

 譲るも何も……。私に取っては女神様のお導き? ギフト? だとしか思えない。でも、ゾレアのことが気にかかる。いくらクラリス様が今のテオドール殿下を好きになったとしても、ゾレアが現れたら、殿下は人格さえも変わってしまう。でも、今は……ごめんなさい、クラリス様。私は私の幸せを選ぶわ。

「仰せのままに」

 私は自分の幸せを選んだ。私の言葉に陛下はあからさまにホッとした顔をした。

 断る選択なんてない。こんなに円満に婚約を解消できるなんて。夢のようだ。もう、断罪されることも国外追放されて殺されることもない。我が家門が没落することもない。

 クラリス様ありがとう。私はもう一生クラリス様についていきます。そうだ。セレニカ王国に戻ったら女官になろう。そしてクラリス様が王太子妃になったらクラリス様付きの女官になり、一生お側にお仕えしよう。ゾレアが登場したら、魔法で殿下達に近づけないようにしよう。それがいい。薄く体の周りに結界を張って弾こう。わがまま王妃なんて噂する輩がいたら魔法でこっそりしめあげるわ。

 バタバタと慌てたような足音が聞こえてきた。

「ルナベル嬢は大丈夫か!!」

 ルセフィ殿下が息を切らしながら部屋に飛び込んできた。

「ルセフィ、落ち着け。ルナベル嬢は大丈夫だ」
 
 国王陛下がルセフィ殿下の肩に手を置くと、ルセフィ殿下はベッドの側にきて、膝をおり、私の手を取り顔をのぞき込む。

「ルナベル嬢、大丈夫か? クラリスに何かされたのか?」

 何もされてないわ。嬉しすぎて倒れたのよなんて言えない。

「いえ、クラリス様には何もされておりません。私は大丈夫ですわ。きっと貧血だと思います」
 
 ルセフィ殿下はずっと私の手を握ったままクラリス様を睨みつける。

「クラリス! どういうことだ!」

「あら、お兄様、私、お兄様に怒鳴られる筋合いはありませんわ」
 
 クラリス様はふふふと微笑みながら私の側にきた。

「ルナベル様、お約束いたしましたわよね。お兄様のことよろしくお願いしますわね」
 
 手をひらひらさせながら部屋から出ていった。

 国王陛下が申しなさそうにルセフィ殿下に向き合う。

「クラリスがテオドール殿に懸想してなぁ。ルナベル嬢にテオドール殿と婚約を解消する代償としてお前と結婚するのはどうかと言ったのだ。それが一番丸く収まると。私も王妃もそれは良いと思ったのだ。私はセレニカ王国の国王に連絡をし、リルゾール王国の国王の王命として、テオドール殿とクラリスの縁談を申し入れた。セレニカ王国の国王は飲むしかあるまい」

 ルセフィ殿下が国王陛下を睨みつける。

「父上はいつでもクラリスの言いなりだ! 母上は何故、反対しなかったのですか!」

「どうして? 私に異論はないわ。むしろ大歓迎よ」

 王妃殿下は涼しい顔だ。ルセフィ殿下は国王陛下と王妃殿下に凄い勢いで怒っている。王妃殿下は大歓迎だと仰ってくれたが、ルセフィ殿下はやっぱり私なんかと結婚するのが嫌なのだろう。

「ルセフィ殿下、皆様を怒らないで下さいませ。実は私は以前よりテオドール殿下と婚約を解消したかったのです。なのでクラリス様には感謝しかございません。ただ、婚約解消する代わりにルセフィ殿下と結婚するというのはルセフィ殿下に申し訳ないのでご辞退させていただきたく思います」
 
 私の手を握ったままのルセフィ殿下はその手に力を入れ、ぎゅっと握ってきた。

「ルナベル嬢は私が嫌か?」

「いえ、そういう訳では……」

「では、婚約しよう」

「はっ?」

「あなたが嫌でなければ私はそれでいい」

 また目が回ってきた。


 そして次の日、私はテオドール殿下に呼び出された。

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