【完結】公爵令嬢ルナベルはもう一度人生をやり直す

金峯蓮華

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6話 リルゾール王国へ

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 セレニカ王国を出発した私たちは何日も馬車に揺られ、リルゾール王国に到着した。宰相である父が国王陛下に挨拶する為に付き添ってくれているし、アローノもいるので心強い。

 リルゾール王国は我が国よりも大国で人口も多く規模も大きい。私たちが到着した王宮のある王都はとても人が多く、賑やかだ。

 この街でなら、ひとりでも生きていけるかもしれないと思えてきた。

 魔法大国のリルゾール王国では、魔力が強ければ女性でも一人で働いて生きていけると聞いた。我が国と比べて女性の働く場がたくさんあるらしいのだ。国外追放になっても、破落戸どもに捕まらないようにして、うまく生きて。この国に逃げ込めればなんとかなる。

 国外追放万々歳だ。しかも親戚がいるなんて心強い。

 そんな事を思いながら長い廊下を進むと、謁見の間に到着した。

 謁見の間にいるのは、テオドール殿下、イグザレルト様、ジェミニーナ嬢、リドカイン様、ジュリナ嬢、アローノ、私。留学生の付き添いできていた宰相である我が父、そしてテオドール殿下の護衛や付き添いの文官達だ。皆長旅で疲れているが、緊張しているのか疲労感は見えない。

 奥から国王陛下、王妃殿下、王子様、王女様らしき方々が姿を表した。

 国王陛下は大きな熊のような人だ。王妃殿下は美しく、慈悲深そうな感じ。王女様は可愛らしい。わがまま姫との噂はどうなのだろう。

 王子様は……素敵すぎる! どうしよう。私、一目惚れかもしれない。濃いブロンドの髪、夜空を思わせるタンザナイトの瞳。目が合った時、身体の中を稲光が通り過ぎたような感じがした。運命の人だったりする? いや、ただの一目惚れなだけだろう。目が合ったと思ったのも気のせいだろう。

 私には婚約者がいる。それに3年後には断罪されて国外追放になる身だ。生き残れても平民になるのだし、王太子殿下に恋をしても辛いだけだ。恋心には蓋をするしかない。


「着いたばかりで、疲れているのに、挨拶にきてくれて嬉しく思う。今夜は歓迎パーティーを催すので楽しんで欲しい。その時にゆっくり話をしよう。それまではゆるりとしてくれ」

 国王陛下は私たちを歓迎してくれているようだ。私はカーテシーをし、公爵令嬢らしく優雅に微笑んだ。

 滞在中に使用する部屋に案内された。

 私の部屋は手前にサロンに使える部屋と侍女用の部屋がついた3部屋続きの客間だった。王族でもないのに、こんないい待遇に驚いた。アローノの部屋もそうなのかと思ったら、普通の客間だった。

 私はテオドール殿下の婚約者ということでこの待遇になったのだろう。ジェミニーナ嬢もジュリナ嬢もアローノと同じタイプの部屋のようだ。それを聞いたら普通の部屋でよかったのにと思う。他国に来てまで王太子殿下の婚約者という目で見られるのは嫌だ。

 やはり、ここでも仮面を被らなければならないか。私はため息をついた。



 少し休憩したあと、パーティーの用意を始めた。

 持参したドレスと母にもらったネックレスを身につけた。共に来た侍女のミレーナが身の回りのことをしてくれる。

 ミレーナは私より7歳年上で私の乳母の娘。小さい頃から私の傍にいてくれている。侍女ではあるけれど武芸にも秀でているので護衛も兼任してくれているのだ。

「お嬢様、今日は殿下の色のドレスやアクセサリーを身につけなくてもよろしいのですか」

「いいのよ。ここではそんなの身につけるつもりはないわ」

 リルゾール王国では、殿下の色を身につけるつもりはない。今の殿下は何も悪いことなどしていない。優しい人だ。ちょっと良心が痛む。

「ふっ、お嬢様の演技力は素晴らしいです。おふたりはとても仲睦まじいそうに見えますよ。お嬢様が殿下をよく思っていないなどと誰も気がつかないでしょうね」

 ミレーナは悪い顔をしている。

「ミレーナ、内緒よ。我が家の者はみんな知っているけど他の人にはわからないようにしなければね」

「一日も早く円満に解消できるようにミレーナはじめ、ラメルテオン公爵家の使用人全て祈っております」

 我が家の私に近い使用人はみんな私が殿下と婚約解消したいと願っていることは知っている。

 理由は知らなくても私が凄く嫌がっているので、殿下に問題があるのだと思っているようだ。
 今の殿下にはなんの問題もない。前の人生では、今くらいの頃は私は殿下の事が好きだったし、信頼していた。殿下はあの頃と何も変わらないが、私は変わったので、もうあの頃の私には戻れない。

 テオドール殿下もゾレアと巡り会わず、素敵な人と結婚して幸せになってほしい。

 パーティーでは、殿下のエスコートを受ける。公爵令嬢は腹の中を顔に出してはいけない。仮面を被り、上品に微笑む。たとえ、エスコートされたくないわ~と思っても微笑むのよね。

 さぁ、気合いを入れてパーティーに挑もう。
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