6 / 39
6話 リルゾール王国へ
しおりを挟む
セレニカ王国を出発した私たちは何日も馬車に揺られ、リルゾール王国に到着した。宰相である父が国王陛下に挨拶する為に付き添ってくれているし、アローノもいるので心強い。
リルゾール王国は我が国よりも大国で人口も多く規模も大きい。私たちが到着した王宮のある王都はとても人が多く、賑やかだ。
この街でなら、ひとりでも生きていけるかもしれないと思えてきた。
魔法大国のリルゾール王国では、魔力が強ければ女性でも一人で働いて生きていけると聞いた。我が国と比べて女性の働く場がたくさんあるらしいのだ。国外追放になっても、破落戸どもに捕まらないようにして、うまく生きて。この国に逃げ込めればなんとかなる。
国外追放万々歳だ。しかも親戚がいるなんて心強い。
そんな事を思いながら長い廊下を進むと、謁見の間に到着した。
謁見の間にいるのは、テオドール殿下、イグザレルト様、ジェミニーナ嬢、リドカイン様、ジュリナ嬢、アローノ、私。留学生の付き添いできていた宰相である我が父、そしてテオドール殿下の護衛や付き添いの文官達だ。皆長旅で疲れているが、緊張しているのか疲労感は見えない。
奥から国王陛下、王妃殿下、王子様、王女様らしき方々が姿を表した。
国王陛下は大きな熊のような人だ。王妃殿下は美しく、慈悲深そうな感じ。王女様は可愛らしい。わがまま姫との噂はどうなのだろう。
王子様は……素敵すぎる! どうしよう。私、一目惚れかもしれない。濃いブロンドの髪、夜空を思わせるタンザナイトの瞳。目が合った時、身体の中を稲光が通り過ぎたような感じがした。運命の人だったりする? いや、ただの一目惚れなだけだろう。目が合ったと思ったのも気のせいだろう。
私には婚約者がいる。それに3年後には断罪されて国外追放になる身だ。生き残れても平民になるのだし、王太子殿下に恋をしても辛いだけだ。恋心には蓋をするしかない。
「着いたばかりで、疲れているのに、挨拶にきてくれて嬉しく思う。今夜は歓迎パーティーを催すので楽しんで欲しい。その時にゆっくり話をしよう。それまではゆるりとしてくれ」
国王陛下は私たちを歓迎してくれているようだ。私はカーテシーをし、公爵令嬢らしく優雅に微笑んだ。
滞在中に使用する部屋に案内された。
私の部屋は手前にサロンに使える部屋と侍女用の部屋がついた3部屋続きの客間だった。王族でもないのに、こんないい待遇に驚いた。アローノの部屋もそうなのかと思ったら、普通の客間だった。
私はテオドール殿下の婚約者ということでこの待遇になったのだろう。ジェミニーナ嬢もジュリナ嬢もアローノと同じタイプの部屋のようだ。それを聞いたら普通の部屋でよかったのにと思う。他国に来てまで王太子殿下の婚約者という目で見られるのは嫌だ。
やはり、ここでも仮面を被らなければならないか。私はため息をついた。
少し休憩したあと、パーティーの用意を始めた。
持参したドレスと母にもらったネックレスを身につけた。共に来た侍女のミレーナが身の回りのことをしてくれる。
ミレーナは私より7歳年上で私の乳母の娘。小さい頃から私の傍にいてくれている。侍女ではあるけれど武芸にも秀でているので護衛も兼任してくれているのだ。
「お嬢様、今日は殿下の色のドレスやアクセサリーを身につけなくてもよろしいのですか」
「いいのよ。ここではそんなの身につけるつもりはないわ」
リルゾール王国では、殿下の色を身につけるつもりはない。今の殿下は何も悪いことなどしていない。優しい人だ。ちょっと良心が痛む。
「ふっ、お嬢様の演技力は素晴らしいです。おふたりはとても仲睦まじいそうに見えますよ。お嬢様が殿下をよく思っていないなどと誰も気がつかないでしょうね」
ミレーナは悪い顔をしている。
「ミレーナ、内緒よ。我が家の者はみんな知っているけど他の人にはわからないようにしなければね」
「一日も早く円満に解消できるようにミレーナはじめ、ラメルテオン公爵家の使用人全て祈っております」
我が家の私に近い使用人はみんな私が殿下と婚約解消したいと願っていることは知っている。
理由は知らなくても私が凄く嫌がっているので、殿下に問題があるのだと思っているようだ。
今の殿下にはなんの問題もない。前の人生では、今くらいの頃は私は殿下の事が好きだったし、信頼していた。殿下はあの頃と何も変わらないが、私は変わったので、もうあの頃の私には戻れない。
テオドール殿下もゾレアと巡り会わず、素敵な人と結婚して幸せになってほしい。
パーティーでは、殿下のエスコートを受ける。公爵令嬢は腹の中を顔に出してはいけない。仮面を被り、上品に微笑む。たとえ、エスコートされたくないわ~と思っても微笑むのよね。
さぁ、気合いを入れてパーティーに挑もう。
リルゾール王国は我が国よりも大国で人口も多く規模も大きい。私たちが到着した王宮のある王都はとても人が多く、賑やかだ。
この街でなら、ひとりでも生きていけるかもしれないと思えてきた。
魔法大国のリルゾール王国では、魔力が強ければ女性でも一人で働いて生きていけると聞いた。我が国と比べて女性の働く場がたくさんあるらしいのだ。国外追放になっても、破落戸どもに捕まらないようにして、うまく生きて。この国に逃げ込めればなんとかなる。
国外追放万々歳だ。しかも親戚がいるなんて心強い。
そんな事を思いながら長い廊下を進むと、謁見の間に到着した。
謁見の間にいるのは、テオドール殿下、イグザレルト様、ジェミニーナ嬢、リドカイン様、ジュリナ嬢、アローノ、私。留学生の付き添いできていた宰相である我が父、そしてテオドール殿下の護衛や付き添いの文官達だ。皆長旅で疲れているが、緊張しているのか疲労感は見えない。
奥から国王陛下、王妃殿下、王子様、王女様らしき方々が姿を表した。
国王陛下は大きな熊のような人だ。王妃殿下は美しく、慈悲深そうな感じ。王女様は可愛らしい。わがまま姫との噂はどうなのだろう。
王子様は……素敵すぎる! どうしよう。私、一目惚れかもしれない。濃いブロンドの髪、夜空を思わせるタンザナイトの瞳。目が合った時、身体の中を稲光が通り過ぎたような感じがした。運命の人だったりする? いや、ただの一目惚れなだけだろう。目が合ったと思ったのも気のせいだろう。
私には婚約者がいる。それに3年後には断罪されて国外追放になる身だ。生き残れても平民になるのだし、王太子殿下に恋をしても辛いだけだ。恋心には蓋をするしかない。
「着いたばかりで、疲れているのに、挨拶にきてくれて嬉しく思う。今夜は歓迎パーティーを催すので楽しんで欲しい。その時にゆっくり話をしよう。それまではゆるりとしてくれ」
国王陛下は私たちを歓迎してくれているようだ。私はカーテシーをし、公爵令嬢らしく優雅に微笑んだ。
滞在中に使用する部屋に案内された。
私の部屋は手前にサロンに使える部屋と侍女用の部屋がついた3部屋続きの客間だった。王族でもないのに、こんないい待遇に驚いた。アローノの部屋もそうなのかと思ったら、普通の客間だった。
私はテオドール殿下の婚約者ということでこの待遇になったのだろう。ジェミニーナ嬢もジュリナ嬢もアローノと同じタイプの部屋のようだ。それを聞いたら普通の部屋でよかったのにと思う。他国に来てまで王太子殿下の婚約者という目で見られるのは嫌だ。
やはり、ここでも仮面を被らなければならないか。私はため息をついた。
少し休憩したあと、パーティーの用意を始めた。
持参したドレスと母にもらったネックレスを身につけた。共に来た侍女のミレーナが身の回りのことをしてくれる。
ミレーナは私より7歳年上で私の乳母の娘。小さい頃から私の傍にいてくれている。侍女ではあるけれど武芸にも秀でているので護衛も兼任してくれているのだ。
「お嬢様、今日は殿下の色のドレスやアクセサリーを身につけなくてもよろしいのですか」
「いいのよ。ここではそんなの身につけるつもりはないわ」
リルゾール王国では、殿下の色を身につけるつもりはない。今の殿下は何も悪いことなどしていない。優しい人だ。ちょっと良心が痛む。
「ふっ、お嬢様の演技力は素晴らしいです。おふたりはとても仲睦まじいそうに見えますよ。お嬢様が殿下をよく思っていないなどと誰も気がつかないでしょうね」
ミレーナは悪い顔をしている。
「ミレーナ、内緒よ。我が家の者はみんな知っているけど他の人にはわからないようにしなければね」
「一日も早く円満に解消できるようにミレーナはじめ、ラメルテオン公爵家の使用人全て祈っております」
我が家の私に近い使用人はみんな私が殿下と婚約解消したいと願っていることは知っている。
理由は知らなくても私が凄く嫌がっているので、殿下に問題があるのだと思っているようだ。
今の殿下にはなんの問題もない。前の人生では、今くらいの頃は私は殿下の事が好きだったし、信頼していた。殿下はあの頃と何も変わらないが、私は変わったので、もうあの頃の私には戻れない。
テオドール殿下もゾレアと巡り会わず、素敵な人と結婚して幸せになってほしい。
パーティーでは、殿下のエスコートを受ける。公爵令嬢は腹の中を顔に出してはいけない。仮面を被り、上品に微笑む。たとえ、エスコートされたくないわ~と思っても微笑むのよね。
さぁ、気合いを入れてパーティーに挑もう。
1,229
お気に入りに追加
2,141
あなたにおすすめの小説

冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)
公爵令嬢は逃げ出すことにした【完結済】
佐原香奈
恋愛
公爵家の跡取りとして厳しい教育を受けるエリー。
異母妹のアリーはエリーとは逆に甘やかされて育てられていた。
幼い頃からの婚約者であるヘンリーはアリーに惚れている。
その事実を1番隣でいつも見ていた。
一度目の人生と同じ光景をまた繰り返す。
25歳の冬、たった1人で終わらせた人生の繰り返しに嫌気がさし、エリーは逃げ出すことにした。
これからもずっと続く苦痛を知っているのに、耐えることはできなかった。
何も持たず公爵家の門をくぐるエリーが向かった先にいたのは…
完結済ですが、気が向いた時に話を追加しています。

魅了魔法…?それで相思相愛ならいいんじゃないんですか。
iBuKi
恋愛
私がこの世界に誕生した瞬間から決まっていた婚約者。
完璧な皇子様に婚約者に決定した瞬間から溺愛され続け、蜂蜜漬けにされていたけれど――
気付いたら、皇子の隣には子爵令嬢が居て。
――魅了魔法ですか…。
国家転覆とか、王権強奪とか、大変な事は絡んでないんですよね?
第一皇子とその方が相思相愛ならいいんじゃないんですか?
サクッと婚約解消のち、私はしばらく領地で静養しておきますね。
✂----------------------------
カクヨム、なろうにも投稿しています。

謹んで婚約者候補を辞退いたします
四折 柊
恋愛
公爵令嬢ブリジットは王太子ヴィンセントの婚約者候補の三人いるうちの一人だ。すでに他の二人はお試し期間を経て婚約者候補を辞退している。ヴィンセントは完璧主義で頭が古いタイプなので一緒になれば気苦労が多そうで将来を考えられないからだそうだ。ブリジットは彼と親しくなるための努力をしたが報われず婚約者候補を辞退した。ところがその後ヴィンセントが声をかけて来るようになって……。(えっ?今になって?)傲慢不遜な王太子と実は心の中では口の悪い公爵令嬢のくっつかないお話。全3話。暇つぶしに流し読んで頂ければ幸いです。

【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します
hikari
恋愛
レガローグ王国の王太子、アンドリューに突如として「側妃にする」と言われたキャサリン。一緒にいたのはアトキンス男爵令嬢のイザベラだった。
キャサリンは婚約破棄を告げ、護衛のエドワードと侍女のエスターと共に実家へと帰る。そして、魔法使いに弟子入りする。
その後、モナール帝国がレガローグに侵攻する話が上がる。実はエドワードはモナール帝国のスパイだった。後に、エドワードはモナール帝国の第一皇子ヴァレンティンを紹介する。
※ざまあの回には★がついています。

純白の牢獄
ゆる
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

婚約破棄の、その後は
冬野月子
恋愛
ここが前世で遊んだ乙女ゲームの世界だと思い出したのは、婚約破棄された時だった。
身体も心も傷ついたルーチェは国を出て行くが…
全九話。
「小説家になろう」にも掲載しています。

あなたへの想いを終わりにします
四折 柊
恋愛
シエナは王太子アドリアンの婚約者として体の弱い彼を支えてきた。だがある日彼は視察先で倒れそこで男爵令嬢に看病される。彼女の献身的な看病で医者に見放されていた病が治りアドリアンは健康を手に入れた。男爵令嬢は殿下を治癒した聖女と呼ばれ王城に招かれることになった。いつしかアドリアンは男爵令嬢に夢中になり彼女を正妃に迎えたいと言い出す。男爵令嬢では妃としての能力に問題がある。だからシエナには側室として彼女を支えてほしいと言われた。シエナは今までの献身と恋心を踏み躙られた絶望で彼らの目の前で自身の胸を短剣で刺した…………。(全13話)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる