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5話 母からの贈り物
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留学前に私とアローノが王宮に呼ばれた。
今回リルゾール王国に留学するのは、テオドール殿下、殿下の側近その①のイグザレルト様、婚約者で聖女のジェミニーナ嬢、殿下の側近その②のリドカイン様、魔導士団長令嬢のジュリナ嬢、殿下の側近その③のアローノ、そして私の7人だ。
リルゾール王国では、王宮に住まわせてもらい、それぞれに必要な事を学ぶそうだ。
私は、リルゾール王国の王妃殿下や王女様から、王族として必要な魔法を学ぶらしい。王族の方々や高位貴族の方とお会いする事が多いらしいので、ドレスやアクセサリーをどっさり持たされそうだ。
リルゾール王国のクラリス王女は“リルゾールのわがまま姫”との異名を持つお方。会う前から少々怖気付いている。
「姉様、大丈夫です。私がついています。絶対、私が守ります」とアローノが言ってくれるので心強い。
テオドール殿下とは前の人生での嫌な思い出があるからあまり近づきたくないけれど、仕方がないので、リルゾール王国でも、あたりさわりのない程度のお付き合いをしよう。
リルゾール王国では、私達のためにウェルカムパーティーも開催してくださるらしい。
私達留学生を歓迎してくれているようで有難い。
私は絶対、リルゾール国で、国外追放になった時に助けてくれる人を見つける。そして魔法を学んで、魔法で生活していけるようになる。頑張らなくちゃ。
そのためには親戚の方々と会って、時が戻った話を打ち明けようと思う。信じてもらえなくてもいいから、協力してもらおう。そして絶対に殿下と婚約解消したい。
テオドール殿下が傍にきた。
「ルナベル、身体はもう大丈夫か? 君と一緒に留学できてよかったよ。この国の為に沢山のことを一緒に学ぼう」
「ありがとう存じます。時々は体調が悪くなることもありますが、概ね大丈夫ですわ。リルゾール王国、楽しみですわね」
この頃の殿下はまだ良い人なんだけどな。本当にあれがただの夢であったならどんなによかったか。こんなに優しいテオドール殿下に嫌悪感を持ってしまう自分が嫌になる時もある。でもあれは夢ではない。現実に起こったことなのだ。
私は公爵令嬢らしい柔らかな作り笑顔を浮かべた。
屋敷に帰ると母が私達の荷物を用意していた。
「ルナベル、これは、私が嫁ぐ時に母から渡された物なの。母は祖母から渡されたの。リルゾール王国のブロチゾラム公爵家には娘に身を守る為に魔石でできたネックレスを持たせる習慣があるそうなの。まだお嫁に行くわけじゃないけど、あちらであなたが幸せになれるように、渡しておくわ」
母からオーロラ色に輝く石のついたネックレスがで渡された。今まで見たことのない石だ。魔石という魔力を込めた石でセレニカ王国には存在しない石らしい。
母は穏やかに微笑みながら使用人達と一緒に荷物を箱に詰めている。
「祖母様の姉弟がまだ元気でご健在らしいの。あなた達が行くことを連絡してもらったら、とても喜んでいらしたそうよ。あちらで親戚の方々とも会えるといいわね」
お祖父様がリルゾール王国の親戚に連絡してくれたようだ。
これは単なる偶然ではなく、絶対必然だ。向こうに着いたら曽祖母様の家族に会いに行かねば。
「お母様、曽祖母様のご家族にお会いしたいです」
「そうね。ベル、これはきっと神様がくれたチャンスよ。リルゾール王国には女神様がいるの。あなたが受け取った御神託はきっとその女神様がくれたものだと思うわ。あなたはお祖母様と同じ髪色で瞳の色をしている。リルゾール王国のブロチゾラム公爵家の色を受け継いでいるの。私はあなたが無実の罪で断罪され死んでしまうなんて耐えられないわ。リルゾールへ行けばきっと女神様が守ってくれる。ベル、運命を変えなさい」
母は私を信じてくれていたのだ。母も私と同じ髪色で同じ瞳の色をしている。これはリルゾール王国のブロチゾラム公爵家の色だったのだな。初めて知った。
「それにしてもアロの奴、そんな気持ち悪い女に騙されてあなたを裏切るなんて信じられない。愚かな子になるなんて許せないわ」
母は私が御神託の話をしてからアローノを厳しく鍛えている。前の人生では一人息子のアローノを甘やかしていたのだが、今は真逆だ。アローノにとってはいい迷惑かもしれない。
「お母様、アローノは大丈夫よ。きっと御神託のようにはならないわ」
「当たり前よ。そんなことになったら廃嫡するわ」
母はくすくす笑っている。前の人生では母の祖母の話を聞いたことがない。ひょっとすると祖母は普通のセレニカ人だったのかもしれない。
今の人生では、親戚がリルゾール王国にいるなんて有難い。親戚なら匿ってもらえるかもしれない。
来週にはリルゾール王国に行く。リルゾール王国でどんな出会いがあるのか? どんな魔法を学べるのか? そしてうまく逃げられるか?
私はワクワクしていた。
今回リルゾール王国に留学するのは、テオドール殿下、殿下の側近その①のイグザレルト様、婚約者で聖女のジェミニーナ嬢、殿下の側近その②のリドカイン様、魔導士団長令嬢のジュリナ嬢、殿下の側近その③のアローノ、そして私の7人だ。
リルゾール王国では、王宮に住まわせてもらい、それぞれに必要な事を学ぶそうだ。
私は、リルゾール王国の王妃殿下や王女様から、王族として必要な魔法を学ぶらしい。王族の方々や高位貴族の方とお会いする事が多いらしいので、ドレスやアクセサリーをどっさり持たされそうだ。
リルゾール王国のクラリス王女は“リルゾールのわがまま姫”との異名を持つお方。会う前から少々怖気付いている。
「姉様、大丈夫です。私がついています。絶対、私が守ります」とアローノが言ってくれるので心強い。
テオドール殿下とは前の人生での嫌な思い出があるからあまり近づきたくないけれど、仕方がないので、リルゾール王国でも、あたりさわりのない程度のお付き合いをしよう。
リルゾール王国では、私達のためにウェルカムパーティーも開催してくださるらしい。
私達留学生を歓迎してくれているようで有難い。
私は絶対、リルゾール国で、国外追放になった時に助けてくれる人を見つける。そして魔法を学んで、魔法で生活していけるようになる。頑張らなくちゃ。
そのためには親戚の方々と会って、時が戻った話を打ち明けようと思う。信じてもらえなくてもいいから、協力してもらおう。そして絶対に殿下と婚約解消したい。
テオドール殿下が傍にきた。
「ルナベル、身体はもう大丈夫か? 君と一緒に留学できてよかったよ。この国の為に沢山のことを一緒に学ぼう」
「ありがとう存じます。時々は体調が悪くなることもありますが、概ね大丈夫ですわ。リルゾール王国、楽しみですわね」
この頃の殿下はまだ良い人なんだけどな。本当にあれがただの夢であったならどんなによかったか。こんなに優しいテオドール殿下に嫌悪感を持ってしまう自分が嫌になる時もある。でもあれは夢ではない。現実に起こったことなのだ。
私は公爵令嬢らしい柔らかな作り笑顔を浮かべた。
屋敷に帰ると母が私達の荷物を用意していた。
「ルナベル、これは、私が嫁ぐ時に母から渡された物なの。母は祖母から渡されたの。リルゾール王国のブロチゾラム公爵家には娘に身を守る為に魔石でできたネックレスを持たせる習慣があるそうなの。まだお嫁に行くわけじゃないけど、あちらであなたが幸せになれるように、渡しておくわ」
母からオーロラ色に輝く石のついたネックレスがで渡された。今まで見たことのない石だ。魔石という魔力を込めた石でセレニカ王国には存在しない石らしい。
母は穏やかに微笑みながら使用人達と一緒に荷物を箱に詰めている。
「祖母様の姉弟がまだ元気でご健在らしいの。あなた達が行くことを連絡してもらったら、とても喜んでいらしたそうよ。あちらで親戚の方々とも会えるといいわね」
お祖父様がリルゾール王国の親戚に連絡してくれたようだ。
これは単なる偶然ではなく、絶対必然だ。向こうに着いたら曽祖母様の家族に会いに行かねば。
「お母様、曽祖母様のご家族にお会いしたいです」
「そうね。ベル、これはきっと神様がくれたチャンスよ。リルゾール王国には女神様がいるの。あなたが受け取った御神託はきっとその女神様がくれたものだと思うわ。あなたはお祖母様と同じ髪色で瞳の色をしている。リルゾール王国のブロチゾラム公爵家の色を受け継いでいるの。私はあなたが無実の罪で断罪され死んでしまうなんて耐えられないわ。リルゾールへ行けばきっと女神様が守ってくれる。ベル、運命を変えなさい」
母は私を信じてくれていたのだ。母も私と同じ髪色で同じ瞳の色をしている。これはリルゾール王国のブロチゾラム公爵家の色だったのだな。初めて知った。
「それにしてもアロの奴、そんな気持ち悪い女に騙されてあなたを裏切るなんて信じられない。愚かな子になるなんて許せないわ」
母は私が御神託の話をしてからアローノを厳しく鍛えている。前の人生では一人息子のアローノを甘やかしていたのだが、今は真逆だ。アローノにとってはいい迷惑かもしれない。
「お母様、アローノは大丈夫よ。きっと御神託のようにはならないわ」
「当たり前よ。そんなことになったら廃嫡するわ」
母はくすくす笑っている。前の人生では母の祖母の話を聞いたことがない。ひょっとすると祖母は普通のセレニカ人だったのかもしれない。
今の人生では、親戚がリルゾール王国にいるなんて有難い。親戚なら匿ってもらえるかもしれない。
来週にはリルゾール王国に行く。リルゾール王国でどんな出会いがあるのか? どんな魔法を学べるのか? そしてうまく逃げられるか?
私はワクワクしていた。
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