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4話 15歳になりました
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これといって殿下との婚約のことは何も進展しないまま私は15歳になった。
あれから何度も婚約解消を申し出たがその度に却下され、いまだ王太子殿下の婚約者のままだ。いつまでも身体が不調とも言えず、あの後、半年くらいしてからまた王太子妃教育が始まった。
王太子妃教育は何の問題もなくサクサク進んでいる。
『ルナベル様は素晴らしいです。一度勉強したことは全て頭に入っていますし、マナーもダンスも完璧です。魔力もあるし、聡明で美しい。王太子妃になっても何の問題もありません」と王太子妃教育の先生方は口を揃えて仰る。
そりゃそうでしょう。
だって私は前の人生ですでに王太子妃教育を修了しておりますもの。
7歳で婚約者になってから18歳で断罪されて死ぬまでの間、王太子妃教育を受けていましたのよ。今はただの復習なだけ。
テオドール殿下のことが好きだったから、相応しい妃になりたくて、死に物狂いで、血反吐を吐くくらいの根性で頑張ったのだもの。時間が巻き戻っても身体や心、頭に染み込んでいるのよ。
それなのにあんな目に遭うなんて。復讐もいいけど、それはどうしても逃げられない時ね。とにかく今は殿下の婚約者じゃなければそれでいい。
王太子妃教育があまりにもサクサク進むので、今の人生では、護身のために近衛騎士団のモーバー団長から直々に剣も習っている。もしもの時に自分の身は自分で守るためよ。
しかし、自分の非力さに情けなくなる。同じ年で団長の子息のイグザレルト様も一緒に鍛錬しているのだが、あまりの力の違いに情けなくなる時もある。まぁ、あちらは騎士の血筋だし、身体も大きいから仕方ない。
今は地道に筋力をつけるしかない。団長の話では、魔法が盛んな国では、剣に魔力を乗せて戦う方法もあるらしい。魔法で身体強化も可能らしく、私にはそちらの方がいいかもしれないとのこと。やはり魔法だなぁ。
イグザレルト様とは幼い頃から王太子殿下のお茶会でよく顔を合わせていた。無口で無表情、何を考えているのかさっぱりわからない。どちらかといえば感じの悪い男だ。確か、前の人生でも殿下の側近だった。イグザレルト様、外務大臣の令息のリドカイン様、そして弟のアローノもあのゾレアに夢中になり、それぞれの婚約者を私と同じように婚約破棄して、断罪していた。
そういえばアローノの婚約者はイグザレルト様の妹のリーゼ嬢のはず。今はまだ婚約はしていない。絶対にアローノとの婚約を結ばないように邪魔しなければ。姉の特権を使ってでも阻止するわ。リーゼ嬢をあんな目に合わせることはできない。まぁ、アローノがゾレアにボケなければ問題無いのだが。
それにしても、不思議に思うことがある。
前の人生では、それほど仲が良いとは思えなかったイグザレルト様と婚約者のジェミニーナ嬢が今の人生ではラブラブなのだ。ラブラブと言うと語弊があるかな。
私の見た感じではイグザレルト様が一方的にジェミニーナ嬢を溺愛していて、ジェミニーナ嬢は半ば諦めている風に思う。
愛想が無く、口数の少ないイグザレルト様はジェミニーナ嬢にだけ豹変し、ベタベタデレデレになる。
あんなに溺愛しているのに、ゾレアが来たらジェミニーナ嬢を捨てるのかしら?
そして、リドカイン様の婚約者だった魔導士団長の令嬢のジュリナ嬢がいない。貴族名鑑に名前はあるので存在はしているようだが、まだ会ってない。前の人生では結構仲がよかったのでどうしているのか気になっている。
ジュリナ嬢とイグザレルト様や、すっかり姉様命になっているアローノの変わりようを見ていると前の人生と今の人生は似ているが違う世界なのかもしれないと思う。
でも、いくら違う世界であったとしても、私のトラウマは消えない。
今でもテオドール殿下が信じられない。このまま結婚するなんて絶対に無理だ。
だから毎日、『結婚したくないの。婚約を解消したい。ずっとここでアローノと一緒にいたい』と悪魔のような囁きを繰り返して、アローノを洗脳している。アローノよ、悪い姉でごめん。
父が公務を終え、屋敷に戻ってきた。
「ルナベル、アローノ、殿下がリルゾール王国に一年間留学する事になった。貴族学校に入る前に友好国であるリルゾール王国で見聞を広げることになったのだ。お前達も一緒に留学する者として内定したが、どうする?」
留学? 前の人生ではそんなのはなかった。
リルゾール王国か、これはチャンスかもしれない。
魔法大国のリルゾール王国でみっちり魔法を学び、国外追放された時に助けてくれる人を探すことにしよう。
一年の間に色々な手を尽くし、追放後の人生はリルゾール王国で過ごせるようにするのが、今はベストに思える。
これはチャンスが舞い込んできたと私はうれしくなった。
「お父様、私、留学いたしますわ」
父に向かってにこやかに微笑んだ。
「姉様が行くなら私も行きます。私は殿下からお姉様を守らなくてはいけない!」
アローノよ、ありがとう。毎日洗脳したおかげでアローノは殿下の側近候補にも関わらず、私と殿下を近づけないようにしてくれている。
将来、殿下が国王陛下になる頃は父の跡を継ぎこの国の宰相となる身なのに、殿下との関係は大丈夫なのかと少し心配になるが、弟はなかなかの腹黒なようで、表向きは殿下の腹心の部下を演じているようだ。
前の人生のアローノはもっと普通だった気がするけれど。やっぱり違う世界なのかしら?
その日の夕飯の席で母が言った言葉は衝撃だった。
「リルゾール王国は私の祖母の故郷なの。祖母は早くに亡くなったけど、確か祖母の弟が後を継いだと母から聞いたような気がするわ。向こうには親戚がいるから貴方達が行くことを連絡してもらっておくわね」
私の曽祖母はリルゾール人だったの? 魔法大国の出身で魔力が強かったと聞いたことがあったがリルゾール王国の出身だったのか。向こうに親戚がいるなんて驚きだ。
しかし、前の世界では魔力の強い曽祖母などいなかった。それに私は魔法など全く使えなかったはず。
やっぱり神様が私を可哀想だと思い、時が戻るときにスペシャルなオプションをつけてくれているようだ。私は心の中で神様にお礼を言った。
あれから何度も婚約解消を申し出たがその度に却下され、いまだ王太子殿下の婚約者のままだ。いつまでも身体が不調とも言えず、あの後、半年くらいしてからまた王太子妃教育が始まった。
王太子妃教育は何の問題もなくサクサク進んでいる。
『ルナベル様は素晴らしいです。一度勉強したことは全て頭に入っていますし、マナーもダンスも完璧です。魔力もあるし、聡明で美しい。王太子妃になっても何の問題もありません」と王太子妃教育の先生方は口を揃えて仰る。
そりゃそうでしょう。
だって私は前の人生ですでに王太子妃教育を修了しておりますもの。
7歳で婚約者になってから18歳で断罪されて死ぬまでの間、王太子妃教育を受けていましたのよ。今はただの復習なだけ。
テオドール殿下のことが好きだったから、相応しい妃になりたくて、死に物狂いで、血反吐を吐くくらいの根性で頑張ったのだもの。時間が巻き戻っても身体や心、頭に染み込んでいるのよ。
それなのにあんな目に遭うなんて。復讐もいいけど、それはどうしても逃げられない時ね。とにかく今は殿下の婚約者じゃなければそれでいい。
王太子妃教育があまりにもサクサク進むので、今の人生では、護身のために近衛騎士団のモーバー団長から直々に剣も習っている。もしもの時に自分の身は自分で守るためよ。
しかし、自分の非力さに情けなくなる。同じ年で団長の子息のイグザレルト様も一緒に鍛錬しているのだが、あまりの力の違いに情けなくなる時もある。まぁ、あちらは騎士の血筋だし、身体も大きいから仕方ない。
今は地道に筋力をつけるしかない。団長の話では、魔法が盛んな国では、剣に魔力を乗せて戦う方法もあるらしい。魔法で身体強化も可能らしく、私にはそちらの方がいいかもしれないとのこと。やはり魔法だなぁ。
イグザレルト様とは幼い頃から王太子殿下のお茶会でよく顔を合わせていた。無口で無表情、何を考えているのかさっぱりわからない。どちらかといえば感じの悪い男だ。確か、前の人生でも殿下の側近だった。イグザレルト様、外務大臣の令息のリドカイン様、そして弟のアローノもあのゾレアに夢中になり、それぞれの婚約者を私と同じように婚約破棄して、断罪していた。
そういえばアローノの婚約者はイグザレルト様の妹のリーゼ嬢のはず。今はまだ婚約はしていない。絶対にアローノとの婚約を結ばないように邪魔しなければ。姉の特権を使ってでも阻止するわ。リーゼ嬢をあんな目に合わせることはできない。まぁ、アローノがゾレアにボケなければ問題無いのだが。
それにしても、不思議に思うことがある。
前の人生では、それほど仲が良いとは思えなかったイグザレルト様と婚約者のジェミニーナ嬢が今の人生ではラブラブなのだ。ラブラブと言うと語弊があるかな。
私の見た感じではイグザレルト様が一方的にジェミニーナ嬢を溺愛していて、ジェミニーナ嬢は半ば諦めている風に思う。
愛想が無く、口数の少ないイグザレルト様はジェミニーナ嬢にだけ豹変し、ベタベタデレデレになる。
あんなに溺愛しているのに、ゾレアが来たらジェミニーナ嬢を捨てるのかしら?
そして、リドカイン様の婚約者だった魔導士団長の令嬢のジュリナ嬢がいない。貴族名鑑に名前はあるので存在はしているようだが、まだ会ってない。前の人生では結構仲がよかったのでどうしているのか気になっている。
ジュリナ嬢とイグザレルト様や、すっかり姉様命になっているアローノの変わりようを見ていると前の人生と今の人生は似ているが違う世界なのかもしれないと思う。
でも、いくら違う世界であったとしても、私のトラウマは消えない。
今でもテオドール殿下が信じられない。このまま結婚するなんて絶対に無理だ。
だから毎日、『結婚したくないの。婚約を解消したい。ずっとここでアローノと一緒にいたい』と悪魔のような囁きを繰り返して、アローノを洗脳している。アローノよ、悪い姉でごめん。
父が公務を終え、屋敷に戻ってきた。
「ルナベル、アローノ、殿下がリルゾール王国に一年間留学する事になった。貴族学校に入る前に友好国であるリルゾール王国で見聞を広げることになったのだ。お前達も一緒に留学する者として内定したが、どうする?」
留学? 前の人生ではそんなのはなかった。
リルゾール王国か、これはチャンスかもしれない。
魔法大国のリルゾール王国でみっちり魔法を学び、国外追放された時に助けてくれる人を探すことにしよう。
一年の間に色々な手を尽くし、追放後の人生はリルゾール王国で過ごせるようにするのが、今はベストに思える。
これはチャンスが舞い込んできたと私はうれしくなった。
「お父様、私、留学いたしますわ」
父に向かってにこやかに微笑んだ。
「姉様が行くなら私も行きます。私は殿下からお姉様を守らなくてはいけない!」
アローノよ、ありがとう。毎日洗脳したおかげでアローノは殿下の側近候補にも関わらず、私と殿下を近づけないようにしてくれている。
将来、殿下が国王陛下になる頃は父の跡を継ぎこの国の宰相となる身なのに、殿下との関係は大丈夫なのかと少し心配になるが、弟はなかなかの腹黒なようで、表向きは殿下の腹心の部下を演じているようだ。
前の人生のアローノはもっと普通だった気がするけれど。やっぱり違う世界なのかしら?
その日の夕飯の席で母が言った言葉は衝撃だった。
「リルゾール王国は私の祖母の故郷なの。祖母は早くに亡くなったけど、確か祖母の弟が後を継いだと母から聞いたような気がするわ。向こうには親戚がいるから貴方達が行くことを連絡してもらっておくわね」
私の曽祖母はリルゾール人だったの? 魔法大国の出身で魔力が強かったと聞いたことがあったがリルゾール王国の出身だったのか。向こうに親戚がいるなんて驚きだ。
しかし、前の世界では魔力の強い曽祖母などいなかった。それに私は魔法など全く使えなかったはず。
やっぱり神様が私を可哀想だと思い、時が戻るときにスペシャルなオプションをつけてくれているようだ。私は心の中で神様にお礼を言った。
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