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真実(ランドルフ視点)

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 ラックノーラン国は我が国から馬車で1ヶ月ほどかかる。

 国交はあるがそれほど親密な付き合いではない。

 我が国出身の住民もいないようで、今の私には気が休まるような気がした。


 私が乗った馬車はこの国で私が滞在することになっているルリッド伯爵家に到着した。

「お待ちしておりました。ランドルフ殿下」

 家令だろうか。私を出迎えてくれた。

「お世話になります」

「家令のスティーブと申します。何なりとお申し付け下さいませ」

 使用人はそれほど多くないが皆、礼儀正しくすっきりしている。

 私は案内された部屋に入った。

「殿下、よろしいでしょうか」

 扉の向こうから声がした。

「もし、宜しければ旦那様が挨拶したいと申しておりますのでご案内いたします」

 これから世話になる人だ挨拶しておかないといけないな。

 私は家令に案内されたこの屋敷の主人、ルリッド伯爵の執務室に向かった。

「失礼いたします。ランドルフ殿下をお連れいたしました」

「入ってもらってくれ」

 どんな方だろう。緊張するな。

 私は扉を開け部屋に入った。


 そこにいたのは……。


「殿下、ご無沙汰しております。騙すようなことになり申し訳ございません」

「侯爵生きていたのか……」

 私は涙が止まらなかった。


 私は侯爵からこのことについての話を聞いた。

 この計画を立てたのはレオンハルト王弟殿下とミランダ様だそうだ。

 そして母も侯爵も侯爵の弟の現レミナッド侯爵夫妻、友人のメイラック夫妻も共犯らしい。

 話はそれだけではなく、私にとって何よりも嬉しい告白があった。

「今まで本当のことを告げることが出来ずに本当に申し訳なかった。恨むなら私を恨んで欲しい。私が騎士になどならなければこんなことにならなかった。1番守りたい人を守れず何が騎士だ」

 侯爵はこうべを垂れる。

「頭を上げてください。私は嬉しいです。これで私は生きていけます」

 私は生きる力が湧いていた。今までずっと自分の存在を否定していた。私は母を不幸にしたとずっと自分を呪っていた。私は幸せになどなってはいけないと。

「私は幸せになっても良いのですね?」

「当たり前だ。私の全てをかけて幸せにする」

 私は涙が止まらなかった。

 生まれた時からこの人が父であればいいとどれほど思ったことか。

 この人は最初から私を愛してくれていた。

 私の心の支えだった。

 生きていてくれただけでも神に感謝したのに。

 私の本当の父親であったなんて。

「父上と呼んでもよろしいですか」

「こんな私を受け入れていただけるのなら」

「もちろん、受け入れない理由がありません。父上、生きていてくださったってありがとうございます」

「殿下……」

「ランディと、ランディと呼んでください」

 私と父上はその夜、明け方まで話をした。

 私は計画が全て終わるまでこの地で父上と暮らすそうだ。
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