3 / 21
シンシアを助けなければ(ミランダ視点・シンシア視点・レオンハルト視点)
しおりを挟む
*順番に3人の視点になります*
ーミランダ視点ー
それから1週間程経った朝、シンシアの様子を見に行った私は部屋の中を見て愕然とする。
シンシアの姿がどこにもないのだ。
同じ部屋の中でシンシアを警護していた女性騎士と側に仕えていた侍女は倒れていた。薬のようなもので眠らされているようだ。
部屋の前には公爵家の騎士を配置していた。誰も入ってきた様子はない。シンシアはまだ捻挫が完治していない。そのためゆっくりとしか歩けない。誰にも見つからず部屋を出る事は難しい。窓近くにも騎士を配置していたので窓からの侵入も無理なはず。
しかし、護衛の女性騎士やメイドの様子から見ても間違いなくシンシアは連れ去られた。
しかし、どうやって? この屋敷の守りは鉄壁なはずだ。
私達は必死でシンシアを探してがシンシアは見つからなかった。
ーシンシア視点ー
ここは?
目が覚めたら全く見たこともない場所にいた。
私はミランダの屋敷に匿われていたはず。
「目が覚めたのですね」
気がつくと側に男がふたり立っていた。
「ここはどこなのですか?」
自分でも驚くくらい力の無い声しか出ない。
「王宮ですよ」
王宮?
何故?
ミランダの屋敷の守りは鉄壁のはず。部屋の扉前や窓近くにも施設騎士団の騎士が配置されているとミランダは言っていた。部屋の中にも女性騎士とメイドがいたはず。
「どうしてと思っているのでしょうな。魔法ですよ。転移魔法。王宮には転移魔法を使える魔導士もおります」
男は無表情でそう言う。
突然、部屋の扉がバン!と大きな音を立て開いた。
開いた扉から入ってきたのは、私が一番会いたくない王太子殿下だった。
「シンシア、大丈夫だったか? 公爵家に軟禁されていたのを私とこの者が助け出したのだよ。もう安心だからね」
王太子殿下はそう言うと私を抱きしめようと手を伸ばし近づいてきた。
私は咄嗟に痛めていない方の足で思い切り王太子殿下の鳩尾を蹴った。
「チッ」
王太子殿下は鳩尾を押さえながら顔を歪ませ私を見た。
そして、私を殴りつけた。
「お前、自分の立場がわかっているのか? 私に危害を加え、怪我をさせたのだぞ。無かったことにしてやろうと思っているのにその態度はなんだ! お前が大人しくしていれば、コレット子爵家にもヴァーナリアン公爵家もお咎めなしだが、今のようにお前が反抗するなら、王太子に怪我をさせた犯人のお前の生家は取り潰し、連帯責任でお前の家族は処刑、お前を匿ったヴァーナリアン公爵家も……そうだな。王太子を亡き者にして謀反を起こそうとして手先にお前を使ったとかにして取り潰すのも面白いな。大人しく言う事を聞くんだな」
そう言うと、私の髪を引っ張り壁に向かって放り投げた。
私は壁に頭を打ちつけ、頭から生暖かいモノが流れ落ちてきた。血のようだ。どうやら頭を打った時に切れてしまったようだ。みるみるうちに足元は血溜まりができている。それを見て私は意識を手放してしまった。
ーレオンハルト視点ー
私はミランダから連絡を受け、すぐにヴァーナリアン公爵家に飛んだ。
「レオン、シンシアが消えたの。どこを探しても見つからなくて……」
ミランダは涙を流しながら私にそう言う。
シンシアがいた部屋に行ってその状態を見てこれは奴らの仕業だとすぐにわかった。
「ミランダ、これは魔導士の仕業だ。多分兄上が絡んでいる。まさか、魔導士を使うとはな。私も油断していた」
「王太子殿下が? シンシアは? シンシアは大丈夫なの?」
ミランダは兄上が絡んでいると知り狼狽している。
「影に探らせる。少し待ってくれ」
そう告げて私は踵を返した。
「シンシアがどうなっているか調べてくれ」
私は影に伝えた。
暫くすると影から報告が入った。シンシアは兄上に暴力を振るわれ怪我をして意識不明だと。
こんな事ならシンシアに影をつけておくのだった。まさか魔導士まで使うとは。油断していた。
あいつ、許さない。私は拳をにぎりしめた。
私と兄上は腹違いの兄弟だ。兄上は側妃の子供であるが、私より半年早く産まれた。父である国王が寵愛している側妃の子供とあって、父は溺愛している。私は政略結婚をした王妃の子供。
父は仕事のできる母と母に似ている私が煙たいらしく、私の事は無い者のように扱っていた。
私は母の力と、先代の国王と王妃である祖父と祖母、そして母の実家の公爵家の力で守られ第2王子として生きていた。
影から兄上がシンシアに言った話を聞いて怒りが込み上げてきた。
コレット子爵家とヴァーナリアン公爵家を潰すと脅していたのか。きっと既に両家にも秘密裏に同様の事を告げる使者が来ているだろう。
さて、どうしたものか?
私は任務の為に辺境の地にいるシンシアの恋人に連絡をとった。
ーミランダ視点ー
それから1週間程経った朝、シンシアの様子を見に行った私は部屋の中を見て愕然とする。
シンシアの姿がどこにもないのだ。
同じ部屋の中でシンシアを警護していた女性騎士と側に仕えていた侍女は倒れていた。薬のようなもので眠らされているようだ。
部屋の前には公爵家の騎士を配置していた。誰も入ってきた様子はない。シンシアはまだ捻挫が完治していない。そのためゆっくりとしか歩けない。誰にも見つからず部屋を出る事は難しい。窓近くにも騎士を配置していたので窓からの侵入も無理なはず。
しかし、護衛の女性騎士やメイドの様子から見ても間違いなくシンシアは連れ去られた。
しかし、どうやって? この屋敷の守りは鉄壁なはずだ。
私達は必死でシンシアを探してがシンシアは見つからなかった。
ーシンシア視点ー
ここは?
目が覚めたら全く見たこともない場所にいた。
私はミランダの屋敷に匿われていたはず。
「目が覚めたのですね」
気がつくと側に男がふたり立っていた。
「ここはどこなのですか?」
自分でも驚くくらい力の無い声しか出ない。
「王宮ですよ」
王宮?
何故?
ミランダの屋敷の守りは鉄壁のはず。部屋の扉前や窓近くにも施設騎士団の騎士が配置されているとミランダは言っていた。部屋の中にも女性騎士とメイドがいたはず。
「どうしてと思っているのでしょうな。魔法ですよ。転移魔法。王宮には転移魔法を使える魔導士もおります」
男は無表情でそう言う。
突然、部屋の扉がバン!と大きな音を立て開いた。
開いた扉から入ってきたのは、私が一番会いたくない王太子殿下だった。
「シンシア、大丈夫だったか? 公爵家に軟禁されていたのを私とこの者が助け出したのだよ。もう安心だからね」
王太子殿下はそう言うと私を抱きしめようと手を伸ばし近づいてきた。
私は咄嗟に痛めていない方の足で思い切り王太子殿下の鳩尾を蹴った。
「チッ」
王太子殿下は鳩尾を押さえながら顔を歪ませ私を見た。
そして、私を殴りつけた。
「お前、自分の立場がわかっているのか? 私に危害を加え、怪我をさせたのだぞ。無かったことにしてやろうと思っているのにその態度はなんだ! お前が大人しくしていれば、コレット子爵家にもヴァーナリアン公爵家もお咎めなしだが、今のようにお前が反抗するなら、王太子に怪我をさせた犯人のお前の生家は取り潰し、連帯責任でお前の家族は処刑、お前を匿ったヴァーナリアン公爵家も……そうだな。王太子を亡き者にして謀反を起こそうとして手先にお前を使ったとかにして取り潰すのも面白いな。大人しく言う事を聞くんだな」
そう言うと、私の髪を引っ張り壁に向かって放り投げた。
私は壁に頭を打ちつけ、頭から生暖かいモノが流れ落ちてきた。血のようだ。どうやら頭を打った時に切れてしまったようだ。みるみるうちに足元は血溜まりができている。それを見て私は意識を手放してしまった。
ーレオンハルト視点ー
私はミランダから連絡を受け、すぐにヴァーナリアン公爵家に飛んだ。
「レオン、シンシアが消えたの。どこを探しても見つからなくて……」
ミランダは涙を流しながら私にそう言う。
シンシアがいた部屋に行ってその状態を見てこれは奴らの仕業だとすぐにわかった。
「ミランダ、これは魔導士の仕業だ。多分兄上が絡んでいる。まさか、魔導士を使うとはな。私も油断していた」
「王太子殿下が? シンシアは? シンシアは大丈夫なの?」
ミランダは兄上が絡んでいると知り狼狽している。
「影に探らせる。少し待ってくれ」
そう告げて私は踵を返した。
「シンシアがどうなっているか調べてくれ」
私は影に伝えた。
暫くすると影から報告が入った。シンシアは兄上に暴力を振るわれ怪我をして意識不明だと。
こんな事ならシンシアに影をつけておくのだった。まさか魔導士まで使うとは。油断していた。
あいつ、許さない。私は拳をにぎりしめた。
私と兄上は腹違いの兄弟だ。兄上は側妃の子供であるが、私より半年早く産まれた。父である国王が寵愛している側妃の子供とあって、父は溺愛している。私は政略結婚をした王妃の子供。
父は仕事のできる母と母に似ている私が煙たいらしく、私の事は無い者のように扱っていた。
私は母の力と、先代の国王と王妃である祖父と祖母、そして母の実家の公爵家の力で守られ第2王子として生きていた。
影から兄上がシンシアに言った話を聞いて怒りが込み上げてきた。
コレット子爵家とヴァーナリアン公爵家を潰すと脅していたのか。きっと既に両家にも秘密裏に同様の事を告げる使者が来ているだろう。
さて、どうしたものか?
私は任務の為に辺境の地にいるシンシアの恋人に連絡をとった。
11
お気に入りに追加
355
あなたにおすすめの小説
王太子に婚約破棄されたら、王に嫁ぐことになった
七瀬ゆゆ
恋愛
王宮で開催されている今宵の夜会は、この国の王太子であるアンデルセン・ヘリカルムと公爵令嬢であるシュワリナ・ルーデンベルグの結婚式の日取りが発表されるはずだった。
「シュワリナ!貴様との婚約を破棄させてもらう!!!」
「ごきげんよう、アンデルセン様。挨拶もなく、急に何のお話でしょう?」
「言葉通りの意味だ。常に傲慢な態度な貴様にはわからぬか?」
どうやら、挨拶もせずに不躾で教養がなってないようですわね。という嫌味は伝わらなかったようだ。傲慢な態度と婚約破棄の意味を理解できないことに、なんの繋がりがあるのかもわからない。
---
シュワリナが王太子に婚約破棄をされ、王様と結婚することになるまでのおはなし。
小説家になろうにも投稿しています。
【完結・7話】召喚命令があったので、ちょっと出て失踪しました。妹に命令される人生は終わり。
BBやっこ
恋愛
タブロッセ伯爵家でユイスティーナは、奥様とお嬢様の言いなり。その通り。姉でありながら母は使用人の仕事をしていたために、「言うことを聞くように」と幼い私に約束させました。
しかしそれは、伯爵家が傾く前のこと。格式も高く矜持もあった家が、機能しなくなっていく様をみていた古参組の使用人は嘆いています。そんな使用人達に教育された私は、別の屋敷で過ごし働いていましたが15歳になりました。そろそろ伯爵家を出ますね。
その矢先に、残念な妹が伯爵様の指示で訪れました。どうしたのでしょうねえ。
私、侯爵令嬢ですが、家族から疎まれ、皇太子妃になる予定が、国難を救うとかの理由で、野蛮な他国に嫁ぐことになりました。でも、結果オーライです
もぐすけ
恋愛
カトリーヌは王国有数の貴族であるアードレー侯爵家の長女で、十七歳で学園を卒業したあと、皇太子妃になる予定だった。
ところが、幼少時にアードレー家の跡継ぎだった兄を自分のせいで事故死させてしまってから、運命が暗転する。両親から疎まれ、妹と使用人から虐められる日々を過ごすことになったのだ。
十二歳で全寮制の学園に入ってからは勉学に集中できる生活を過ごせるようになるが、カトリーヌは兄を事故死させた自分を許すことが出来ず、時間を惜しんで自己研磨を続ける。王妃になって世のため人のために尽くすことが、兄への一番の償いと信じていたためだった。
しかし、妹のシャルロットと王国の皇太子の策略で、カトリーヌは王国の皇太子妃ではなく、戦争好きの野蛮人の国の皇太子妃として嫁がされてしまう。
だが、野蛮だと思われていた国は、実は合理性を追求して日進月歩する文明国で、そこの皇太子のヒューイは、頭脳明晰で行動力がある超美形の男子だった。
カトリーヌはヒューイと出会い、兄の呪縛から少しずつ解き放され、遂にはヒューイを深く愛するようになる。
一方、妹のシャルロットは王国の王妃になるが、思い描いていた生活とは異なり、王国もアードレー家も力を失って行く……
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
死んで巻き戻りましたが、婚約者の王太子が追いかけて来ます。
拓海のり
恋愛
侯爵令嬢のアリゼは夜会の時に血を吐いて死んだ。しかし、朝起きると時間が巻き戻っていた。二度目は自分に冷たかった婚約者の王太子フランソワや、王太子にべったりだった侯爵令嬢ジャニーヌのいない隣国に留学したが──。
一万字ちょいの短編です。他サイトにも投稿しています。
残酷表現がありますのでR15にいたしました。タイトル変更しました。
【完結】すべての縁談を断り続けていた次期侯爵様ですが、なぜか私だけは溺愛されているようです
よどら文鳥
恋愛
生活環境が原因で、どのような縁談も断り続けて、恋愛などすることはないだろうと確信していたレイラ=ミリシャス。
そのことで考えごとをしていたレイラは突然事故に遭う。
レイラに怪我をさせてしまったガルアラム次期侯爵は、貴族界では名前も顔も知らない者はいないくらいの国宝級のイケメン。
しかし、極度に責任感が強いため、レイラの怪我が完治するまで責任をもって看病をしようとしていた。
レイラは過去のトラウマから誰に対しても恋愛感情など持つはずがない。
ガルアラムもまた、縁談を全て断り続けるような人だから恋愛などあり得ないとレイラは確信していた。
だが、毎日の治療生活によって徐々に二人の感情にも変化がでて……。
同時にガルアラムの計らいで、レイラが事故に遭うまでがどのような生活だったのかを知っていくことになり……。
誰とも縁談や恋愛などする気もなかった二人が、恋に堕ちていくお話です。
※ざまぁ要素はありますが、物語の中盤から後半にかけてになります。前半は伏線のみです。
※長編設定にしていますが、まだ完結まで書けていません。状況によっては短編に切り替えるかもしれません。(4万字以下で完結させる場合は短編の変更します)
辺境の獣医令嬢〜婚約者を妹に奪われた伯爵令嬢ですが、辺境で獣医になって可愛い神獣たちと楽しくやってます〜
津ヶ谷
恋愛
ラース・ナイゲールはローラン王国の伯爵令嬢である。
次期公爵との婚約も決まっていた。
しかし、突然に婚約破棄を言い渡される。
次期公爵の新たな婚約者は妹のミーシャだった。
そう、妹に婚約者を奪われたのである。
そんなラースだったが、気持ちを新たに次期辺境伯様との婚約が決まった。
そして、王国の辺境の地でラースは持ち前の医学知識と治癒魔法を活かし、獣医となるのだった。
次々と魔獣や神獣を治していくラースは、魔物たちに気に入られて楽しく過ごすこととなる。
これは、辺境の獣医令嬢と呼ばれるラースが新たな幸せを掴む物語。
【短編】悪役令嬢と蔑まれた私は史上最高の遺書を書く
とによ
恋愛
婚約破棄され、悪役令嬢と呼ばれ、いじめを受け。
まさに不幸の役満を食らった私――ハンナ・オスカリウスは、自殺することを決意する。
しかし、このままただで死ぬのは嫌だ。なにか私が生きていたという爪痕を残したい。
なら、史上最高に素晴らしい出来の遺書を書いて、自殺してやろう!
そう思った私は全身全霊で遺書を書いて、私の通っている魔法学園へと自殺しに向かった。
しかし、そこで謎の美男子に見つかってしまい、しまいには遺書すら読まれてしまう。
すると彼に
「こんな遺書じゃダメだね」
「こんなものじゃ、誰の記憶にも残らないよ」
と思いっきりダメ出しをされてしまった。
それにショックを受けていると、彼はこう提案してくる。
「君の遺書を最高のものにしてみせる。その代わり、僕の研究を手伝ってほしいんだ」
これは頭のネジが飛んでいる彼について行った結果、彼と共に歴史に名を残してしまう。
そんなお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる