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記憶が戻る
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*途中からリュカ視点になります。
私はうとうとしていた。
眠くて仕方ない。
私を助けてくれたリュカ様とふたりきり。お礼を言わなきゃならないのに眠い。
スーッと眠りに引き込まれた。
あれ? 私は死んだのではなかったのかしら? ここはどこ?
私はあの時、あの人を庇って刺客に刺された。
あの時のあの人の辛そうな顔は忘れられない。
「この国とあの子をお願い。幸せになって。愛しているわ」と言いこと切れた気がする。
言いたかったことは言えたし、あの人を守れたんだもの。私は幸せだ。
そりゃずっと生きてあの人のそばで子供の成長を見たかったけど、そこまで望んではいけない。
愛する人を助けられてよかった。
あの人はこんなところで死んではならない。
「気がついたか」
誰だろう?
「ルカディオ様?」
部屋の中は眩しい光に包まれた。
「ヴェルミーナ、やっと会えた」
「ルカ様? ルカ様なのですか?」
会いたくて会いたくってたまらなかった最愛の人。
でもどうしてここにいるのだろう。
うっ、痛い、
酷い頭痛が私を襲う。
そして私の頭の中に王妃ヴェルミーナの記憶と迫害されていた王女アルヴィーナの記憶が流れ込んできた。
ーリュカ視点―
「ミーナ大丈夫か?」
ミーナ? ミーナって誰だ?
俺の頭の中に忘れていた記憶が流れ込んできた。
ミーナ……ヴェルミーナ。妻だ。俺の妻だ!
思い出した。全て思い出した。
俺はノルスバン王国を建国したルカディオ・ノルスバン。
そしてリュカ・フェノバールとして再びこの国に舞い降りた。
神から使命を帯びて。
神と約束した。この国を直してやるそのかわりにヴェルミーナと会わせろと。
ヴェルミーナなのか? 本当にまた会えたのか?
「ルカ様? ルカ様なのですか?」
神はどうやら約束を守ってくれたようだな。
それなら俺も約束を守るしかない。
「ミーナ、俺だ。姿形は少し違うが間違いなく俺だ」
ミーナは手を伸ばし俺の顔を触る。
「私は……」
ミーナは自分の姿を見て、まだわけがわからないようだ。
「ずいぶん若返ったな」
俺はミーナの頬に触れた。
「いくつなのでしょう?」
「8歳らしい」
そう言うとミーナは目を丸くした。
「まぁ、20歳も若返ってしまいましたのね」
ミーナは笑っている。相変わらずあっけらかんとしている。
「それより身体は大丈夫か? モディオダールの城の中でずいぶんな目にあっていたのだろう」
俺はミーナの身体が心配だった。食事をちゃんと食べてなかったのだろう。あちこちに打撲の痕もある。本当にひどい状態だった。
ジェットとふたりで回復魔法や栄養魔法、成長魔法をかけたがまだ8歳にしては小さい。
ミーナは首を傾げた。そして思い出したかのように頷いた。
「あっ、そうですわね。あなた様に会えた喜びですっかり忘れてしまいましたわ」
そう言うとクスッと笑った。
「ミーナで亡くなった時に神様に生まれ変わってまたルカ様と恋がしたいと直談判いたしましたの。その時に神様が『少し辛い目にあってもらうぞ。その方がドラマチックだからな』とおっしゃいましたの。私はほどほどでお願いしますと言ったのですが、まぁまぁキツかったですわ」
神め!
「ルカ様、どうして、私があの場所にいると? どうして私をあの場所から助けてくださいましたの?」
ミーナは何も知らないようだった。俺はあの国に起こった革命の話をミーナに聞かせた。
そして場所は身体があの場に飛んだこととジェットが誘導してくれたことを伝えた。
ミーナは驚いているようだったが少し悲しそうな顔をした。
「王家と城の使用人たちは自業自得ですわね。でも、中には良い人もいたのに」
俺はミーナを抱きしめた。
「ミーナ、今度は死なせない。必ず守る。だから俺のそばでずっと笑っていてほしい」
ミーナは顔を上げ俺の目をじっと見る。
「いいのですか? 今の私は亡国の王家の生き残りですわ。迷惑ではありませんか?」
そんなもん関係ない。ミーナが何者でも俺には大事なミーナだ。
「そんなことは何も問題ない。問題があるとすればお前がまだ8歳だということだな。あと7年は娶れない」
俺がそう言うとミーナは嬉しそうに顔を赤らめて微笑む。
「いいではありませんか。前は恋人時代がありませんでしたもの。今回は恋人時代を楽しみましょう」
それにしても神は酷い。何がドラマチックだ! なぜあんな迫害を受ける姫に転生させたんだ。あとで、ジェットに文句を言ってもらおう。
文句だけじゃダメだな。気がおさまらない。
コンコン
扉を叩く音がする。
「はい」
俺は返事をして、扉を少し開けた。
隙間からジェットが顔を出した。
「兄上、食事はどうしますか? 食べられそうならふたり分こちらに運んでもらいましょうか?」
ニヤニヤしながら俺たちを見ている。
「運んでくれ」
「承知しました」
俺は踵を変えようとしているジェットをつかまえた。
「ジェット、お前知ってたのか?」
「何をです?」
「俺とミーナのことをだ?」
「さぁどうでしょうね。ただ私たちの仕事にはヴィーナやマティも必要ですからね」
そう言ってまたニヤッと笑う。
「では、邪魔者は消えます。食事を運ぶまでしばらくお待ちくださいませ」
ジェットは消えた。
俺はミーナの頭に手を乗せた。
ミーナ早く大きくなってくれ。
私はうとうとしていた。
眠くて仕方ない。
私を助けてくれたリュカ様とふたりきり。お礼を言わなきゃならないのに眠い。
スーッと眠りに引き込まれた。
あれ? 私は死んだのではなかったのかしら? ここはどこ?
私はあの時、あの人を庇って刺客に刺された。
あの時のあの人の辛そうな顔は忘れられない。
「この国とあの子をお願い。幸せになって。愛しているわ」と言いこと切れた気がする。
言いたかったことは言えたし、あの人を守れたんだもの。私は幸せだ。
そりゃずっと生きてあの人のそばで子供の成長を見たかったけど、そこまで望んではいけない。
愛する人を助けられてよかった。
あの人はこんなところで死んではならない。
「気がついたか」
誰だろう?
「ルカディオ様?」
部屋の中は眩しい光に包まれた。
「ヴェルミーナ、やっと会えた」
「ルカ様? ルカ様なのですか?」
会いたくて会いたくってたまらなかった最愛の人。
でもどうしてここにいるのだろう。
うっ、痛い、
酷い頭痛が私を襲う。
そして私の頭の中に王妃ヴェルミーナの記憶と迫害されていた王女アルヴィーナの記憶が流れ込んできた。
ーリュカ視点―
「ミーナ大丈夫か?」
ミーナ? ミーナって誰だ?
俺の頭の中に忘れていた記憶が流れ込んできた。
ミーナ……ヴェルミーナ。妻だ。俺の妻だ!
思い出した。全て思い出した。
俺はノルスバン王国を建国したルカディオ・ノルスバン。
そしてリュカ・フェノバールとして再びこの国に舞い降りた。
神から使命を帯びて。
神と約束した。この国を直してやるそのかわりにヴェルミーナと会わせろと。
ヴェルミーナなのか? 本当にまた会えたのか?
「ルカ様? ルカ様なのですか?」
神はどうやら約束を守ってくれたようだな。
それなら俺も約束を守るしかない。
「ミーナ、俺だ。姿形は少し違うが間違いなく俺だ」
ミーナは手を伸ばし俺の顔を触る。
「私は……」
ミーナは自分の姿を見て、まだわけがわからないようだ。
「ずいぶん若返ったな」
俺はミーナの頬に触れた。
「いくつなのでしょう?」
「8歳らしい」
そう言うとミーナは目を丸くした。
「まぁ、20歳も若返ってしまいましたのね」
ミーナは笑っている。相変わらずあっけらかんとしている。
「それより身体は大丈夫か? モディオダールの城の中でずいぶんな目にあっていたのだろう」
俺はミーナの身体が心配だった。食事をちゃんと食べてなかったのだろう。あちこちに打撲の痕もある。本当にひどい状態だった。
ジェットとふたりで回復魔法や栄養魔法、成長魔法をかけたがまだ8歳にしては小さい。
ミーナは首を傾げた。そして思い出したかのように頷いた。
「あっ、そうですわね。あなた様に会えた喜びですっかり忘れてしまいましたわ」
そう言うとクスッと笑った。
「ミーナで亡くなった時に神様に生まれ変わってまたルカ様と恋がしたいと直談判いたしましたの。その時に神様が『少し辛い目にあってもらうぞ。その方がドラマチックだからな』とおっしゃいましたの。私はほどほどでお願いしますと言ったのですが、まぁまぁキツかったですわ」
神め!
「ルカ様、どうして、私があの場所にいると? どうして私をあの場所から助けてくださいましたの?」
ミーナは何も知らないようだった。俺はあの国に起こった革命の話をミーナに聞かせた。
そして場所は身体があの場に飛んだこととジェットが誘導してくれたことを伝えた。
ミーナは驚いているようだったが少し悲しそうな顔をした。
「王家と城の使用人たちは自業自得ですわね。でも、中には良い人もいたのに」
俺はミーナを抱きしめた。
「ミーナ、今度は死なせない。必ず守る。だから俺のそばでずっと笑っていてほしい」
ミーナは顔を上げ俺の目をじっと見る。
「いいのですか? 今の私は亡国の王家の生き残りですわ。迷惑ではありませんか?」
そんなもん関係ない。ミーナが何者でも俺には大事なミーナだ。
「そんなことは何も問題ない。問題があるとすればお前がまだ8歳だということだな。あと7年は娶れない」
俺がそう言うとミーナは嬉しそうに顔を赤らめて微笑む。
「いいではありませんか。前は恋人時代がありませんでしたもの。今回は恋人時代を楽しみましょう」
それにしても神は酷い。何がドラマチックだ! なぜあんな迫害を受ける姫に転生させたんだ。あとで、ジェットに文句を言ってもらおう。
文句だけじゃダメだな。気がおさまらない。
コンコン
扉を叩く音がする。
「はい」
俺は返事をして、扉を少し開けた。
隙間からジェットが顔を出した。
「兄上、食事はどうしますか? 食べられそうならふたり分こちらに運んでもらいましょうか?」
ニヤニヤしながら俺たちを見ている。
「運んでくれ」
「承知しました」
俺は踵を変えようとしているジェットをつかまえた。
「ジェット、お前知ってたのか?」
「何をです?」
「俺とミーナのことをだ?」
「さぁどうでしょうね。ただ私たちの仕事にはヴィーナやマティも必要ですからね」
そう言ってまたニヤッと笑う。
「では、邪魔者は消えます。食事を運ぶまでしばらくお待ちくださいませ」
ジェットは消えた。
俺はミーナの頭に手を乗せた。
ミーナ早く大きくなってくれ。
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