14 / 21
【閑話】ウィルヘルムの独白
しおりを挟む*ウィルヘルムは素の時は私ではなく俺になります。
ベルからアデライドが改心したと聞いた。
友達になってと言われたらしい。
甘い。やっぱりベルは甘いな。
セレスを護衛につけているが、わざとアデライドや側妃が接触しやすいように王太子妃教育の時は付き添わせていない。
もちろん影は付けている。
やっとアデライドが引っかかった。
ベルは喜怒哀楽が激しい。普段はうまく隠せているが俺やセレスやヒューイ殿にはすぐわかる。
今回のアデライドのこともマジで喜んでいるようだ。
疑えよ。なんで疑わないんだ?
側妃側もグリーデン公爵の具合が良くなくて焦り出したのだろう。
どの医者もお手上げで原因不明な病だからな。
前の世界の俺と同じ。
俺はグリーデン公爵夫人を仲間に引き込んだ。
夫人は自分を裏切り愛妾を沢山囲っている公爵を恨んでいる。
そして側妃と愛人関係になり、子供を作り、その子供を国王の子と謀ったことに心を悩ませていた。
バレてしまえば国家反逆罪に問われるかもしれない。家はお取り潰しになり、全く関係の無い自分と嫡男にも被害が及ぶ。
あの男のせいでそんな事になったら大変だと思っていた。
俺は秘密裏に夫人に接触し、囁いた。
「公爵は私を亡き者にして、自分の娘のアデライドを女王にし、自分が操ろうとしている。これは国家反逆罪だ。そもそも自分の娘を国王の娘だと騙した時点で国家反逆罪だろう」
夫人は真っ青になり震えている。
「申し訳ございません。私は何も知らなかったのです」
「わかっています。夫人に罪はない。私に協力してもらえませんか。協力していただければ私は何も言いません。アデライドは国王の娘ですよ」
俺が微笑むと夫人は頷いた。
「何でも協力いたします。どうかグリーデン公爵家と嫡男のディックだけは助けてください」
「もちろんです。ディック殿は次期グリーデン公爵になり、我が国を支えていただくつもりです」
俺はグリーデン公爵家を味方につけた。
俺の息のかかった料理人と何人かのメイドをグリーデン家に入れた。
そして前の世界で俺がされたように毎日少しづつ毒を与えた。
即効性のない、緩やかに身体に影響をもたらす毒だ。
毒はヨーセット王国で作っているモノをヒューイ殿経由で手に入れ、料理人に渡し、毎日の食事に入れる。
銀に反応しないように開発した特別な毒だ。
公爵の毒味役の侍女はもちろん俺の手のモノだ。公爵と愛人関係にあるので公爵は信用して側に置いている。
暗部のモノは毒に免疫があるので毒味くらいの少量の毒では全く問題ない。念の為毒消しの薬も飲んでいる。
そしてハニートラップはお手のモノだ。公爵が若い女を求めるたびに次々と暗部の女性を与え、毒で弱った身体を閨事でも弱らせていく。
5年が経ち公爵の身体は緩やかに毒に蝕まれている。あと10年くらいは生きていてもらいたいな。
嫡男は清廉潔白な男だ。野心もない。公爵のように悪事に手を染めることはないだろう。
俺を敵に回すとどうなるか父親を見て知っているからね。
さて、アデライドをどうしようか。このままベルにはアデライドを信用させておいた方が面白いな。
「殿下はひどいですわね。婚約者を囮にするのですか?」
セレスに非難された。
「でも、それが1番手っ取り早いだろう? ベルには影も付けている。ジェフリーにベルを守るように言っておくよ。アデライドが嫉妬するようにね」
「腹黒ですわね」
「王太子だからね。この国を潰すわけにはいかないんだよ」
ベルを危険な目に合わせるつもりはない。
でも囮にはなってもらう。
ベルは優しくて甘いから必要以上に俺達が何をやっているのか情報は与えない。もちろん自分が囮にされているのも気がつかない。
「私もジェフリーと一緒にベルティーユ嬢の側にいるようにしよう」
「あぁ、頼みます。ジェフリーとふたりでベルをチヤホヤしてアデライドを煽って下さい」
「任せてくれ」
ヒューイ殿は頼りになる。
亡くなった侍女の弟を仲間に引き入れ、側妃の側近として近づけている。
弟は側妃に危ない薬を与えている。薬が切れると精神が落ち着かなくなり、イライラするようで側妃は薬をくれる侍女の弟の言いなりになってきている。
目には目を毒には毒を、凌辱にはハニートラップをだ。
そうそうジェフリーはどうやらベルが好きなようだ。
でも根っからの貴族なので今の世界でも王女とベルを二股をかけたいらしい。
だが、ジェフリーがベルに近づこうとしていると、なぜかヒューイ殿が邪魔している。
ノバック公爵とジェフリーを見張るためにノバック家に滞在してもらうことにしたのだが、まさかヒューイ殿がベルに懸想するとは面白い。
復讐が全て終わってからどうするか考えよう。
俺達の復讐は長期戦だ。まだまだ先は長い。気を引き締めて前に進もう。
96
お気に入りに追加
2,506
あなたにおすすめの小説
【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します
hikari
恋愛
レガローグ王国の王太子、アンドリューに突如として「側妃にする」と言われたキャサリン。一緒にいたのはアトキンス男爵令嬢のイザベラだった。
キャサリンは婚約破棄を告げ、護衛のエドワードと侍女のエスターと共に実家へと帰る。そして、魔法使いに弟子入りする。
その後、モナール帝国がレガローグに侵攻する話が上がる。実はエドワードはモナール帝国のスパイだった。後に、エドワードはモナール帝国の第一皇子ヴァレンティンを紹介する。
※ざまあの回には★がついています。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
婚約破棄ですか? 理由は魔法のできない義妹の方が素直で可愛いから♡だそうです。
hikari
恋愛
わたくしリンダはスミス公爵ご令息エイブラハムに婚約破棄を告げられました。何でも魔法ができるわたくしより、魔法のできない義理の妹の方が素直で可愛いみたいです。
義理の妹は義理の母の連れ子。実父は愛する妻の子だから……と義理の妹の味方をします。わたくしは侍女と共に家を追い出されてしまいました。追い出された先は漁師町でした。
そして出会ったのが漁師一家でした。漁師一家はパーシヴァルとポリー夫婦と一人息子のクリス。しかし、クリスはただの漁師ではありませんでした。
そんな中、隣国からパーシヴァル一家へ突如兵士が訪問してきました。
一方、婚約破棄を迫ってきたエイブラハムは実はねずみ講をやっていて……そして、ざまあ。
ざまあの回には★がついています。
従姉妹に婚約者を奪われました。どうやら玉の輿婚がゆるせないようです
hikari
恋愛
公爵ご令息アルフレッドに婚約破棄を言い渡された男爵令嬢カトリーヌ。なんと、アルフレッドは従姉のルイーズと婚約していたのだ。
ルイーズは伯爵家。
「お前に侯爵夫人なんて分不相応だわ。お前なんか平民と結婚すればいいんだ!」
と言われてしまう。
その出来事に学園時代の同級生でラーマ王国の第五王子オスカルが心を痛める。
そしてオスカルはカトリーヌに惚れていく。
王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるラルリアは、優秀な妹に比べて平凡な人間であった。
これといって秀でた点がない彼女は、いつも妹と比較されて、時には罵倒されていたのである。
しかしそんなラルリアはある時、王太子の婚約者に選ばれた。
それに誰よりも驚いたのは、彼女自身である。仮に公爵家と王家の婚約がなされるとしても、その対象となるのは妹だと思っていたからだ。
事実として、社交界ではその婚約は非難されていた。
妹の方を王家に嫁がせる方が有益であると、有力者達は考えていたのだ。
故にラルリアも、婚約者である王太子アドルヴに婚約を変更するように進言した。しかし彼は、頑なにラルリアとの婚約を望んでいた。どうやらこの婚約自体、彼が提案したものであるようなのだ。
もうすぐ婚約破棄を宣告できるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ。そう書かれた手紙が、婚約者から届きました
柚木ゆず
恋愛
《もうすぐアンナに婚約の破棄を宣告できるようになる。そうしたらいつでも会えるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ》
最近お忙しく、めっきり会えなくなってしまった婚約者のロマニ様。そんなロマニ様から届いた私アンナへのお手紙には、そういった内容が記されていました。
そのため、詳しいお話を伺うべくレルザー侯爵邸に――ロマニ様のもとへ向かおうとしていた、そんな時でした。ロマニ様の双子の弟であるダヴィッド様が突然ご来訪され、予想だにしなかったことを仰られ始めたのでした。
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
どうかこの偽りがいつまでも続きますように…
矢野りと
恋愛
ある日突然『魅了』の罪で捕らえられてしまった。でも誤解はすぐに解けるはずと思っていた、だって私は魅了なんて使っていないのだから…。
それなのに真実は闇に葬り去られ、残ったのは周囲からの冷たい眼差しだけ。
もう誰も私を信じてはくれない。
昨日までは『絶対に君を信じている』と言っていた婚約者さえも憎悪を向けてくる。
まるで人が変わったかのように…。
*設定はゆるいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる