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番外編 アマーリエの恋
そして現在
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フリューゲル王国に留学したあの時から7年が過ぎた。
私はなぜか自国、ベルメール王国で女王をしている。
こんなつもりじゃなかった。
あの時、フリューゲル王国で魔獣の破片が火の玉となり、凄い勢いで私に向かって飛んできた。私は死を覚悟し意識を失ったが、気がついたら辺境伯家の客間のベッドの上だった。
火の玉からは魔法で瞬間移動をしたアルフォンスに危機一髪で助けられたそうなのだが、私は魔力を使い過ぎ、魔力不足を起こしてたらしい。
魔力が回復するまでアルフォンスやマインラート殿下に回復魔法をかけてもらいながら1週間も眠っていたようだ。
そこでアルフォンスからミリー嬢とのことを聞いた。
ミリー嬢は魅了の魔法を使って、王太子や、その側近達、そして第2王子のアルフォンスまでも意のままに動かそうとしていたらしい。
王族は精神拘束魔法には耐性があるし、普段からそんな魔法にかからない訓練をしたり、魔道具をつけているのでかかるわけないのだが、黒幕を誘き寄せる為にかかったふりをして、ミリー嬢を泳がせていたらしい。
まさか留学先にまでくるとは思わなかったがフリューゲル王国でも暴れてくれたので、揺るがぬ証拠をあつめられ、捕えることができたという。
ミリー嬢が私に婚約者と言っていたことは全く知らなかったらしい。その話を手紙に書いていたが、心を閉ざした私は拒否し、捨ててしまって読んでなかった。馬鹿だわ。
捨てたはずの手紙は侍女頭のハンナがちゃんと取っておいてくれていて、自国に帰ってから全て読んで泣いたわ。
それからは素直になってアルフォンスにはなんでも話すし、なんでも聞くようになったの。
フリューゲル王国とヨードル王国の東西の魔法大国は手を取り合い、お互いの国の魔獣封鎖に力を入れ、両国の魔獣問題はあらかた解決した。
あの時、外遊先から戻ってきたフリューゲル王国の国王夫妻がロルフに激怒し、王位継承権を剥奪し、ただの魔導士にした。
ロルフは元は良い子だからしっかり反省し、今はフリューゲル王国の魔法省で働いている。
マインラート殿下はゾイゼ卿ことアーニー嬢と結婚し、今はフリューゲル王国の国王夫妻となった。
我が国とは友好国として、色々交流をしている。
私はフリューゲル王国でアルフォンスと一緒に1年過ごした後、一旦自国に戻り、今度はヨードル王国に留学した。アルフォンスと婚約していたので、ヨードル王国の王族や貴族との顔つなぎもあった。
ヨードル王国はみんな大柄で、自国ではデカくて威圧感のある鬼姫と呼ばれている私がなぜか可愛いとみんなから可愛がってもらえた。
ところ変われば持っている感覚は変わるもんだなぁと思った。
ヨードル王国での生活がすっかり気に入った私は結婚したらヨードル王国でのんびり暮らそうと思っていた……のに、我が国でも魅了の魔法事件が起きた。
私は国王である父に備えあれば憂いなしだから精神拘束魔法対策をしないといけないと何度も進言したのに、呑気な父は「我が国に限ってそんなことあるわけがない。大丈夫大丈夫」と聞く耳を持たずだった。
魅了の魔法にひっかかった弟で王太子だったエーベルハルトを廃嫡になり、父は国王を退き、第2王子のモーリッツが成人するまで私が国王代理となり、モーリッツが国王になった時に仕事がしやすいように国を改革した。
アルフォンスには私の補佐をしてもらいながら、国王代理から解放され、ヨードル王国に行ける日が来るのを待ってもらっていた。
しかし、モーリッツが突然「私は国王の器ではありません。デルフィーヌとも話し合ったのですが、私は臣下に下ろうと思います」と言い出した。
「じゃあ、国王はどうするの?」
「そのまま姉上がおやりになればいいのではないですか。私も今までどおり側で姉上のお手伝いを致します」
「女王なんかになりたくないわ。死ぬまで働かなきゃならないじゃないの!!」
私は抵抗していたが、議会でも満場一致で承認され、我が国初めての女王が誕生してしまった。
「そうなるような気がしたよ。モーリッツに国王は無理だし、即位しても君はここを離れられないだろうと思っていた。まさか国王自体を放棄するとは、モーリッツやるなぁ」
アルフォンスはケラケラ笑っている。
「笑い事じゃないわよ。私はあなたと結婚してヨードル王国でのんびり暮らしたいのよ。女王になんかなりたくないわ!」
私は頭から湯気を出す勢いで、文句を言いまくっていた。
「ヨードルには退位してからいけば良いじゃないか。私は王配でいいよ。この国はこれからだ。今アマーリエが抜けると大変なことになる。乗りかかった船だ、私が支えるから一緒にやり遂げよう」
王配? そんなこと考えてもいなかった。ひょっとしたら、モーリッツは私に話す前にアルフォンスと話をしている了承を得ていたのかもしれない。
苛烈な鬼姫の手綱をひけるのはアルフォンスだけだし。
ということで、アルフォンスの力を借りながらなんとか女王として一年が過ぎた。
今日は私の在位1年の式典、夜会、そしてアルフォンスと私の婚姻式がある。知り合ってから9年、婚約してから6年、やっとアルフォンスの妻になれる。
長かったわ~。
式典が終わり、婚姻式のためのドレスに着替える。いつもアップにして引っ詰めている髪も下ろして可愛く見えるようなお化粧をしてもらう。
「アマーリエ様、用意はよろしいですか? そろそろ会場にはいる時間ですよ。アルフォンス様がお迎えに来られてます。あら、可愛いですね。そんな感じのアマーリエ様初めて見ましたわ。これからは他国との話合いの時はそれで優しい女王だと騙してマウント取りましょう!」
ひとこと多い奴だ。
私付き女官のシルフィアが呼びにきた。シルフィアは子供の頃からの付き合いで気心のしれた信頼のできるまさに腹心の部下だ。
「シルはエミールと一緒に参列するの?」
「まさか! エミールはエミールの仕事、私は私の仕事がありますからね。私は忙しいですからあんなのに構う時間などありませんわ」
相変わらずのツンデレだ。
もうすぐ白い結婚の申立てができる期日がくるらしいが私から見てもふたりは仲良いけどね。
まぁ、シルフィアとエミールにはこれからもベルメール王国のためにガンガン働いてもらうつもりだから夫婦でいてもらった方がいいような気もするのだけど……。
「アマーリエ、凄く綺麗だ。式典の赤いドレスも綺麗だったけど、その白いドレスはアマーリエの純真な可愛らしさを表しているようだよ」
「ありがとう」
アルフォンスだけだわ素直に褒めてくれるのは。まぁ、ヨードル王国の女性は皆大きいからそう思うのかもね。
まぁ、これからも他国から侮られないように、ベルメール王国の女王は苛烈で手厳しい、王配はキレ者策士で曲者と噂操作をしておこう。
私はこの国を良い国にして次に繋げるだけ。そして退任後はヨードル王国でアルフォンスとのんびり暮らすのよ。
さて、婚姻式と夜会頑張るか。
〈了〉
*番外編 アマーリエの恋もこれにて終了でございます。
駆け足でしたがいかがでしたでしょうか。
今後は途中で止まっている2作と新しい1作をぼちぼち載せていこうと思っています。
よかったらまた読んでもらえたら嬉しいです。
最後まで読んでいただきましてありがとうございました。
私はなぜか自国、ベルメール王国で女王をしている。
こんなつもりじゃなかった。
あの時、フリューゲル王国で魔獣の破片が火の玉となり、凄い勢いで私に向かって飛んできた。私は死を覚悟し意識を失ったが、気がついたら辺境伯家の客間のベッドの上だった。
火の玉からは魔法で瞬間移動をしたアルフォンスに危機一髪で助けられたそうなのだが、私は魔力を使い過ぎ、魔力不足を起こしてたらしい。
魔力が回復するまでアルフォンスやマインラート殿下に回復魔法をかけてもらいながら1週間も眠っていたようだ。
そこでアルフォンスからミリー嬢とのことを聞いた。
ミリー嬢は魅了の魔法を使って、王太子や、その側近達、そして第2王子のアルフォンスまでも意のままに動かそうとしていたらしい。
王族は精神拘束魔法には耐性があるし、普段からそんな魔法にかからない訓練をしたり、魔道具をつけているのでかかるわけないのだが、黒幕を誘き寄せる為にかかったふりをして、ミリー嬢を泳がせていたらしい。
まさか留学先にまでくるとは思わなかったがフリューゲル王国でも暴れてくれたので、揺るがぬ証拠をあつめられ、捕えることができたという。
ミリー嬢が私に婚約者と言っていたことは全く知らなかったらしい。その話を手紙に書いていたが、心を閉ざした私は拒否し、捨ててしまって読んでなかった。馬鹿だわ。
捨てたはずの手紙は侍女頭のハンナがちゃんと取っておいてくれていて、自国に帰ってから全て読んで泣いたわ。
それからは素直になってアルフォンスにはなんでも話すし、なんでも聞くようになったの。
フリューゲル王国とヨードル王国の東西の魔法大国は手を取り合い、お互いの国の魔獣封鎖に力を入れ、両国の魔獣問題はあらかた解決した。
あの時、外遊先から戻ってきたフリューゲル王国の国王夫妻がロルフに激怒し、王位継承権を剥奪し、ただの魔導士にした。
ロルフは元は良い子だからしっかり反省し、今はフリューゲル王国の魔法省で働いている。
マインラート殿下はゾイゼ卿ことアーニー嬢と結婚し、今はフリューゲル王国の国王夫妻となった。
我が国とは友好国として、色々交流をしている。
私はフリューゲル王国でアルフォンスと一緒に1年過ごした後、一旦自国に戻り、今度はヨードル王国に留学した。アルフォンスと婚約していたので、ヨードル王国の王族や貴族との顔つなぎもあった。
ヨードル王国はみんな大柄で、自国ではデカくて威圧感のある鬼姫と呼ばれている私がなぜか可愛いとみんなから可愛がってもらえた。
ところ変われば持っている感覚は変わるもんだなぁと思った。
ヨードル王国での生活がすっかり気に入った私は結婚したらヨードル王国でのんびり暮らそうと思っていた……のに、我が国でも魅了の魔法事件が起きた。
私は国王である父に備えあれば憂いなしだから精神拘束魔法対策をしないといけないと何度も進言したのに、呑気な父は「我が国に限ってそんなことあるわけがない。大丈夫大丈夫」と聞く耳を持たずだった。
魅了の魔法にひっかかった弟で王太子だったエーベルハルトを廃嫡になり、父は国王を退き、第2王子のモーリッツが成人するまで私が国王代理となり、モーリッツが国王になった時に仕事がしやすいように国を改革した。
アルフォンスには私の補佐をしてもらいながら、国王代理から解放され、ヨードル王国に行ける日が来るのを待ってもらっていた。
しかし、モーリッツが突然「私は国王の器ではありません。デルフィーヌとも話し合ったのですが、私は臣下に下ろうと思います」と言い出した。
「じゃあ、国王はどうするの?」
「そのまま姉上がおやりになればいいのではないですか。私も今までどおり側で姉上のお手伝いを致します」
「女王なんかになりたくないわ。死ぬまで働かなきゃならないじゃないの!!」
私は抵抗していたが、議会でも満場一致で承認され、我が国初めての女王が誕生してしまった。
「そうなるような気がしたよ。モーリッツに国王は無理だし、即位しても君はここを離れられないだろうと思っていた。まさか国王自体を放棄するとは、モーリッツやるなぁ」
アルフォンスはケラケラ笑っている。
「笑い事じゃないわよ。私はあなたと結婚してヨードル王国でのんびり暮らしたいのよ。女王になんかなりたくないわ!」
私は頭から湯気を出す勢いで、文句を言いまくっていた。
「ヨードルには退位してからいけば良いじゃないか。私は王配でいいよ。この国はこれからだ。今アマーリエが抜けると大変なことになる。乗りかかった船だ、私が支えるから一緒にやり遂げよう」
王配? そんなこと考えてもいなかった。ひょっとしたら、モーリッツは私に話す前にアルフォンスと話をしている了承を得ていたのかもしれない。
苛烈な鬼姫の手綱をひけるのはアルフォンスだけだし。
ということで、アルフォンスの力を借りながらなんとか女王として一年が過ぎた。
今日は私の在位1年の式典、夜会、そしてアルフォンスと私の婚姻式がある。知り合ってから9年、婚約してから6年、やっとアルフォンスの妻になれる。
長かったわ~。
式典が終わり、婚姻式のためのドレスに着替える。いつもアップにして引っ詰めている髪も下ろして可愛く見えるようなお化粧をしてもらう。
「アマーリエ様、用意はよろしいですか? そろそろ会場にはいる時間ですよ。アルフォンス様がお迎えに来られてます。あら、可愛いですね。そんな感じのアマーリエ様初めて見ましたわ。これからは他国との話合いの時はそれで優しい女王だと騙してマウント取りましょう!」
ひとこと多い奴だ。
私付き女官のシルフィアが呼びにきた。シルフィアは子供の頃からの付き合いで気心のしれた信頼のできるまさに腹心の部下だ。
「シルはエミールと一緒に参列するの?」
「まさか! エミールはエミールの仕事、私は私の仕事がありますからね。私は忙しいですからあんなのに構う時間などありませんわ」
相変わらずのツンデレだ。
もうすぐ白い結婚の申立てができる期日がくるらしいが私から見てもふたりは仲良いけどね。
まぁ、シルフィアとエミールにはこれからもベルメール王国のためにガンガン働いてもらうつもりだから夫婦でいてもらった方がいいような気もするのだけど……。
「アマーリエ、凄く綺麗だ。式典の赤いドレスも綺麗だったけど、その白いドレスはアマーリエの純真な可愛らしさを表しているようだよ」
「ありがとう」
アルフォンスだけだわ素直に褒めてくれるのは。まぁ、ヨードル王国の女性は皆大きいからそう思うのかもね。
まぁ、これからも他国から侮られないように、ベルメール王国の女王は苛烈で手厳しい、王配はキレ者策士で曲者と噂操作をしておこう。
私はこの国を良い国にして次に繋げるだけ。そして退任後はヨードル王国でアルフォンスとのんびり暮らすのよ。
さて、婚姻式と夜会頑張るか。
〈了〉
*番外編 アマーリエの恋もこれにて終了でございます。
駆け足でしたがいかがでしたでしょうか。
今後は途中で止まっている2作と新しい1作をぼちぼち載せていこうと思っています。
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最後まで読んでいただきましてありがとうございました。
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