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番外編 アマーリエの恋
フリューゲル王国に到着しました。
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中継地点のタールベルク王国に到着した。王都ではなく、地方都市を指定された。
そこは田舎町といった感じだった。
「アマーリエ様、本当にここであっているんでしょうか?」
一緒についてきている侍女のドロシーは不安そうだ。
「大丈夫よ。ドロシーは心配症ね」
私はそう言ってドロシーを励ました。私もちょっと不安だったりする。
フリューゲル王国へ行くのは2度目だけど、前回は転移魔法ではなく馬車で長い時間かかって行った。
「アマーリエ様、あれでしょうか?」
護衛のヴィムが声を上げる。ヴィムの指差す方の建物に目をやるとそこには黒いローブを着た長身の人が立っていた。
フードをすっぽり被っているのでここからでは性別すらわからない。とにかくあの建物の前で停めることになった。
馬車を停め、扉を開け、まずヴィムが降り、そのローブの人に声をかけた。
「ベルメール王国から来たアマーリエ王女の一行です。フリューゲル王国の方でしょうか?」
「ふっ、相変わらず平和ボケしているようだね。こちらを確認する前に名乗っては危険で。私がもし、フリューゲル王国からの使いでなかったら、殺害され、強奪されていたかもしれないよ」
確かにこの方の言う通りね。私もやっぱり平和ボケだわ。
「確かにそのとおりですわね。全くお恥ずかしいですわ」
私が馬車の中から言葉をかけるとローブの人はフードをはずした。
「アマーリエ久しぶりだね」
「ロルフ! 久しぶり。迎えにきてくれたのね。ありがとう。会いたかったわ!」
私は馬車の中から腕を伸ばし、ロルフに抱きついた。
「全く無防備だなぁ。私に化けた間者だったらどうするんだ?」
「大丈夫よ。前に短期留学した時に鑑定の魔法を身につけたもの」
私は以前短期留学した時に鑑定の魔法という便利な魔法を手に入れた。
それは一瞬にして相手のプロフィールや思惑が分かる。国に戻ってからそれを使い王宮は狸だらけだと知りショックを受けた。
「そうだったね。あの魔法は役にたった?」
「ええ、王宮は狸だらけだとわかり凹んだわ」
ロルフはケラケラ笑っている。
「だから止めたでしょう。便利だけど知らない方が幸せなこともあるって」
ロルフとは前の短期留学の時に知り合った。
私よりふたつ年下でこの国の第2王子だ。
魔法の腕が凄いらしく、魔法学園に飛び級で入学し卒業した。今は学園で自分より年上の生徒達に魔法理論を教えている。それにこの国の魔法省の役人でもある。
私とは前の留学時代に意気投合し、ベルメール王国に戻ってからも手紙のやりとりをしたり、転移魔法でこっそり我が国に遊びに来たりしている。
「ではこのまま、馬車の中で待っていて」
ロルフはそう言うとヴィムと私を馬車の中に押し込みドアを閉めた。
何か呪文のような言葉が聞こえてきた。歌のようにも聞こえる。心地良い響だった。
しばらくロルフから流れてくる調べを聴いていると馬車の中にキラキラとした光が入り込んできた。
そして音がしなくなった。
コンコン。
ドアを叩く音がする。ヴィムが扉を開けた。
「扉を開ける前は誰か確認をした方がよろしいですよ」
そこにいたロルフは口角を上げている。
やっぱりき平和ボケだと思っているのだな。
「もうしわけございません。何がご用でしょうか?」
ヴィムが尋ねる。
「到着しました」
? 到着?
あれから1~2分くらいよね?
「どうぞ、降りていただいても大丈夫です」
ロルフのエスコートで馬車の外に出る。
そこは王宮の玄関のようだ。
「ようこそ、フリューゲル王国へ、アマーリエ殿下お待ち申し上げておりました」
沢山の使用人に出迎えられた。前回の短期留学の時に親しくなった使用人も何人かいた。
「アマーリエ王女、後ほど父母のところに案内しますが、まずは部屋に行きましょう」
ロルフは私達を部屋に案内してくれるようだ。
「前回滞在させていただいていた部屋とは違うの?」
前と同じ部屋とは通路が違うようだ。同じでいいのに。
「はい。今回はプライベートスペースなんだ。前の部屋では手狭でしょう?」
プライベートスペース?
「私の部屋の隣。侍女や護衛の部屋もあるよ」
ロルフはにこやかに微笑む。
ん? ロルフの部屋の隣?
振り返り後ろを歩くドロシーとヴィムを見るとなんだか生温かい目で私とロルフを見ている。
いやいやいやいや。無いわ。無いよね。私達は友人よ。誤解よ誤解。
案内された部屋は広くて綺麗な部屋だった。ベルメール王国の王宮にある私の部屋と同じくらい広い。
「こっちの扉は主寝室と繋がっているんだ。まぁ、今回は父上に鍵を閉められてしまったのでこちらから入ることはできないけど、今度この部屋を使う時は主寝室で一緒に休もう」
? 何を言っているんだ。これは笑うところなのか?
「アマーリエ様……」
ドロシーが後ろからツンツンする。
「アマーリエ様は、これから荷解きや着替えなどしたいので一旦これで失礼してよろしいですしょうか? 後ほど陛下に謁見される時にまたお呼びいただけますでしょうか?」
ドロシーはロルフにキッパリと言う。
「そうだね。少しゆっくりするといい。1時間後に迎えに来るよ」
ロルフはそう言うと手を振りながら部屋を出ていった。
「アマーリエ様、そういうことですか?」
「知らないわよ。私はそんなつもりはないわ」
「そういうわけにはいかない感じじゃないですか? アマーリエ様、誑かしたのですか?」
ヴィムまでそんなことを言う。
「誑かしてないわよ。本当に知らないのよ~」
何故ロルフがそんな誤解をしたのかさっぱりわからないが、この国にいる間に、できるだけ早く誤解を解かねば。
私は冷や汗を拭いながらこれからどうすればいいか考えあぐねていた。
そこは田舎町といった感じだった。
「アマーリエ様、本当にここであっているんでしょうか?」
一緒についてきている侍女のドロシーは不安そうだ。
「大丈夫よ。ドロシーは心配症ね」
私はそう言ってドロシーを励ました。私もちょっと不安だったりする。
フリューゲル王国へ行くのは2度目だけど、前回は転移魔法ではなく馬車で長い時間かかって行った。
「アマーリエ様、あれでしょうか?」
護衛のヴィムが声を上げる。ヴィムの指差す方の建物に目をやるとそこには黒いローブを着た長身の人が立っていた。
フードをすっぽり被っているのでここからでは性別すらわからない。とにかくあの建物の前で停めることになった。
馬車を停め、扉を開け、まずヴィムが降り、そのローブの人に声をかけた。
「ベルメール王国から来たアマーリエ王女の一行です。フリューゲル王国の方でしょうか?」
「ふっ、相変わらず平和ボケしているようだね。こちらを確認する前に名乗っては危険で。私がもし、フリューゲル王国からの使いでなかったら、殺害され、強奪されていたかもしれないよ」
確かにこの方の言う通りね。私もやっぱり平和ボケだわ。
「確かにそのとおりですわね。全くお恥ずかしいですわ」
私が馬車の中から言葉をかけるとローブの人はフードをはずした。
「アマーリエ久しぶりだね」
「ロルフ! 久しぶり。迎えにきてくれたのね。ありがとう。会いたかったわ!」
私は馬車の中から腕を伸ばし、ロルフに抱きついた。
「全く無防備だなぁ。私に化けた間者だったらどうするんだ?」
「大丈夫よ。前に短期留学した時に鑑定の魔法を身につけたもの」
私は以前短期留学した時に鑑定の魔法という便利な魔法を手に入れた。
それは一瞬にして相手のプロフィールや思惑が分かる。国に戻ってからそれを使い王宮は狸だらけだと知りショックを受けた。
「そうだったね。あの魔法は役にたった?」
「ええ、王宮は狸だらけだとわかり凹んだわ」
ロルフはケラケラ笑っている。
「だから止めたでしょう。便利だけど知らない方が幸せなこともあるって」
ロルフとは前の短期留学の時に知り合った。
私よりふたつ年下でこの国の第2王子だ。
魔法の腕が凄いらしく、魔法学園に飛び級で入学し卒業した。今は学園で自分より年上の生徒達に魔法理論を教えている。それにこの国の魔法省の役人でもある。
私とは前の留学時代に意気投合し、ベルメール王国に戻ってからも手紙のやりとりをしたり、転移魔法でこっそり我が国に遊びに来たりしている。
「ではこのまま、馬車の中で待っていて」
ロルフはそう言うとヴィムと私を馬車の中に押し込みドアを閉めた。
何か呪文のような言葉が聞こえてきた。歌のようにも聞こえる。心地良い響だった。
しばらくロルフから流れてくる調べを聴いていると馬車の中にキラキラとした光が入り込んできた。
そして音がしなくなった。
コンコン。
ドアを叩く音がする。ヴィムが扉を開けた。
「扉を開ける前は誰か確認をした方がよろしいですよ」
そこにいたロルフは口角を上げている。
やっぱりき平和ボケだと思っているのだな。
「もうしわけございません。何がご用でしょうか?」
ヴィムが尋ねる。
「到着しました」
? 到着?
あれから1~2分くらいよね?
「どうぞ、降りていただいても大丈夫です」
ロルフのエスコートで馬車の外に出る。
そこは王宮の玄関のようだ。
「ようこそ、フリューゲル王国へ、アマーリエ殿下お待ち申し上げておりました」
沢山の使用人に出迎えられた。前回の短期留学の時に親しくなった使用人も何人かいた。
「アマーリエ王女、後ほど父母のところに案内しますが、まずは部屋に行きましょう」
ロルフは私達を部屋に案内してくれるようだ。
「前回滞在させていただいていた部屋とは違うの?」
前と同じ部屋とは通路が違うようだ。同じでいいのに。
「はい。今回はプライベートスペースなんだ。前の部屋では手狭でしょう?」
プライベートスペース?
「私の部屋の隣。侍女や護衛の部屋もあるよ」
ロルフはにこやかに微笑む。
ん? ロルフの部屋の隣?
振り返り後ろを歩くドロシーとヴィムを見るとなんだか生温かい目で私とロルフを見ている。
いやいやいやいや。無いわ。無いよね。私達は友人よ。誤解よ誤解。
案内された部屋は広くて綺麗な部屋だった。ベルメール王国の王宮にある私の部屋と同じくらい広い。
「こっちの扉は主寝室と繋がっているんだ。まぁ、今回は父上に鍵を閉められてしまったのでこちらから入ることはできないけど、今度この部屋を使う時は主寝室で一緒に休もう」
? 何を言っているんだ。これは笑うところなのか?
「アマーリエ様……」
ドロシーが後ろからツンツンする。
「アマーリエ様は、これから荷解きや着替えなどしたいので一旦これで失礼してよろしいですしょうか? 後ほど陛下に謁見される時にまたお呼びいただけますでしょうか?」
ドロシーはロルフにキッパリと言う。
「そうだね。少しゆっくりするといい。1時間後に迎えに来るよ」
ロルフはそう言うと手を振りながら部屋を出ていった。
「アマーリエ様、そういうことですか?」
「知らないわよ。私はそんなつもりはないわ」
「そういうわけにはいかない感じじゃないですか? アマーリエ様、誑かしたのですか?」
ヴィムまでそんなことを言う。
「誑かしてないわよ。本当に知らないのよ~」
何故ロルフがそんな誤解をしたのかさっぱりわからないが、この国にいる間に、できるだけ早く誤解を解かねば。
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