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顛末
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アマーリエ様はお茶のカップを置きゆっくりと話し出した。
「父達が内密にザラを連れ出すはずだから、その時に阻止して、こちらでザラを預かろうと待ち構えていたら、なんとステファンが現れたのよ。まさかステファンが父達の手先なの? とも思ったけど、そんなわけない。見張りもあらかじめザラを奪いに行くと聞いていたから、簡単にやられて鍵を奪えたし、ステファンはきっと弱い見張りだと思ったでしょうね。まわりは父達からザラを仲間が脱獄させたと見せかけて連れ出すと連絡がいっているからすんなり王宮も抜け出せたわ。まぁ、私の影達としたら、相手が父達の手のものでもステファンでも関係なく任務を遂行するだけ。とりあえず後をつけたの。ステファンは森の中の小さな小屋にザラを連れ込んでザラを殺して自分も死のうと思っていたみたい」
やっぱりそうか。
「ステファン様はザラに危害を?」
「大丈夫よ。寸前で阻止したわ」
良かった。
「良かった。あいつに罪を犯さたくない」
エミール様がつぶやく。
「影が魔道具で撮影した映像があるけど見る?」
アマーリエ様が笑いならが魔道具を取り出した。
「これあなた達が見たら破棄するわ。アンリも見たくないだろうし。ステファンっていつも穏やかで優しげでしょう? だから私は彼のことを、たいして買ってなかったんだけどこれを見て側近に欲しくなったわ」
ステファン様は別の顔があるのか?
私達は魔道具が映し出す映像を見た。そこには冷酷にザラをいたぶるステファン様がいた。
まぁ、いたぶると言っても暴力を加えるとかではなく、言葉で静かに追い詰めていく、あれなら怒鳴られた方がマシだ。ザラ嬢は精神が崩壊したかもしれないな。愛する者を失った愛が重い男はあんな風になるのか? 自白剤より怖い。
隣で見ているエミール様は悲痛な顔をしている。ザラ嬢のこと可哀想だと思っているのかしら?
「ステファンを見るのが辛いな。全身から絶望感や心の痛みを感じる。何があってもアンリエッタ嬢と添い遂げさせてやりたいな」
お~、ちゃんと見てるんだ。ちょっと見直した。
アマーリエ様はふふふと笑った。
「ねっ、なかなかやるでしょ? この後、多分ナイフで少しづつ斬りながら更なる恐怖を味あわせて殺そうと思ったんでしょうね。ナイフを出したところでうちの影に薬を嗅がされて、2人とも意識をうしなわせてから別の場所に移したの」
良かった。それなら罪にはならないよね?
「アマーリエ様、ステファン様は罪になるのですか?」
「罪? なぜ? ステファンは何もしてないわよ。ザラを牢から出したのは父達の手の者だもの。じゃあこの魔道具は破棄するわね」
アマーリエ様が指をパチンと鳴らすと魔道具はバラバラと崩れた。
「ステファンは王女宮の客間で寝かしてるわ。アンリを呼んでいるから、目が覚めたらふたりで話をするでしょう」
さすがアマーリエ様、粋な事をするなぁ。
「ザラ嬢は?」
「ザラ嬢は北の鉱山に送ったわ。魔法大国の魔導士に転移魔法で連れて行ってもらったの。適当に置いてきてって言っといたわ。北の鉱山は凶悪犯が労働刑で行くところだから、絶対逃げることは不可能よ。ほとんどが屈強な男ばかりだから、シモの緩いザラなら楽しいんじゃないかしらね。ハーレム状態とでも言うのかしらね。でも日に何十人もの飢えた男達と交わるのは結構きついんじゃない? ザラには魔法封じの魔道具を身体に埋め込んだからもう魔法は使えないしね。ふふふふふ」
アマーリエ様は笑っているが想像するだけで吐き気がする。よくそんな罰を考えるものだ。
この人とは良好な友好関係を築いておこうと心に誓った。
「それで、シルには私の側付き女官として、モーリッツが即位するまで王女宮で働いてほしいの。エクセグラン公爵の了承はとってるわ。まぁ、住み込みじゃなく通いでいいわよ。拒否はなしね」
いやいや、あなたに拒否できる人なんかいないでしょう。アマーリエ様の側付き女官なんて絶対楽しいわね。
私はウキウキしてしまったが足のことがちょっと気になる。
「あぁ、足は魔法大国の魔導士が回復魔法という魔法で元通りにしてくれるから安心してね」
えっ、アマーリエ様、心が読めるのか? それにしても魔法ってそんなこともできるのか。魔法大国恐るべしだな。
「エミールはステファンと一緒に私の側近として働いてもらうわ。あなた意外と使えるってわかったしね。夫婦共働きしなさい」
「仰せのままに」
夫婦共働き?
「アマーリエ様、私は白い結婚を目指しているんですけど」
アマーリエ様はニヤッと笑う。
「じゃあ、住み込みにする?」
「ダメです! 絶対ダメです!」
「まぁ、エミールが勝つか、シルが勝つか楽しみだわ。ふたりともよろしくね」
それからすぐ、国王陛下の退位と宰相閣下の辞職が報じられた。
エーベルハルト殿下は廃太子となり、モーリッツ殿下が王太子となった。婚約者はデルフィーヌ様がそのままスライドする。
モーリッツ殿下が成人し、即位するまでの間はアマーリエ様が国王代理になることも同時に発表された。
*このあと、ステファンとアンリエッタの純愛話を1話挟んで最終話となります。
どこがショートショートやねん!とお怒りの皆様すみません。やはり短いのは難しいです。
あと2話お付き合い下さいませ。
「父達が内密にザラを連れ出すはずだから、その時に阻止して、こちらでザラを預かろうと待ち構えていたら、なんとステファンが現れたのよ。まさかステファンが父達の手先なの? とも思ったけど、そんなわけない。見張りもあらかじめザラを奪いに行くと聞いていたから、簡単にやられて鍵を奪えたし、ステファンはきっと弱い見張りだと思ったでしょうね。まわりは父達からザラを仲間が脱獄させたと見せかけて連れ出すと連絡がいっているからすんなり王宮も抜け出せたわ。まぁ、私の影達としたら、相手が父達の手のものでもステファンでも関係なく任務を遂行するだけ。とりあえず後をつけたの。ステファンは森の中の小さな小屋にザラを連れ込んでザラを殺して自分も死のうと思っていたみたい」
やっぱりそうか。
「ステファン様はザラに危害を?」
「大丈夫よ。寸前で阻止したわ」
良かった。
「良かった。あいつに罪を犯さたくない」
エミール様がつぶやく。
「影が魔道具で撮影した映像があるけど見る?」
アマーリエ様が笑いならが魔道具を取り出した。
「これあなた達が見たら破棄するわ。アンリも見たくないだろうし。ステファンっていつも穏やかで優しげでしょう? だから私は彼のことを、たいして買ってなかったんだけどこれを見て側近に欲しくなったわ」
ステファン様は別の顔があるのか?
私達は魔道具が映し出す映像を見た。そこには冷酷にザラをいたぶるステファン様がいた。
まぁ、いたぶると言っても暴力を加えるとかではなく、言葉で静かに追い詰めていく、あれなら怒鳴られた方がマシだ。ザラ嬢は精神が崩壊したかもしれないな。愛する者を失った愛が重い男はあんな風になるのか? 自白剤より怖い。
隣で見ているエミール様は悲痛な顔をしている。ザラ嬢のこと可哀想だと思っているのかしら?
「ステファンを見るのが辛いな。全身から絶望感や心の痛みを感じる。何があってもアンリエッタ嬢と添い遂げさせてやりたいな」
お~、ちゃんと見てるんだ。ちょっと見直した。
アマーリエ様はふふふと笑った。
「ねっ、なかなかやるでしょ? この後、多分ナイフで少しづつ斬りながら更なる恐怖を味あわせて殺そうと思ったんでしょうね。ナイフを出したところでうちの影に薬を嗅がされて、2人とも意識をうしなわせてから別の場所に移したの」
良かった。それなら罪にはならないよね?
「アマーリエ様、ステファン様は罪になるのですか?」
「罪? なぜ? ステファンは何もしてないわよ。ザラを牢から出したのは父達の手の者だもの。じゃあこの魔道具は破棄するわね」
アマーリエ様が指をパチンと鳴らすと魔道具はバラバラと崩れた。
「ステファンは王女宮の客間で寝かしてるわ。アンリを呼んでいるから、目が覚めたらふたりで話をするでしょう」
さすがアマーリエ様、粋な事をするなぁ。
「ザラ嬢は?」
「ザラ嬢は北の鉱山に送ったわ。魔法大国の魔導士に転移魔法で連れて行ってもらったの。適当に置いてきてって言っといたわ。北の鉱山は凶悪犯が労働刑で行くところだから、絶対逃げることは不可能よ。ほとんどが屈強な男ばかりだから、シモの緩いザラなら楽しいんじゃないかしらね。ハーレム状態とでも言うのかしらね。でも日に何十人もの飢えた男達と交わるのは結構きついんじゃない? ザラには魔法封じの魔道具を身体に埋め込んだからもう魔法は使えないしね。ふふふふふ」
アマーリエ様は笑っているが想像するだけで吐き気がする。よくそんな罰を考えるものだ。
この人とは良好な友好関係を築いておこうと心に誓った。
「それで、シルには私の側付き女官として、モーリッツが即位するまで王女宮で働いてほしいの。エクセグラン公爵の了承はとってるわ。まぁ、住み込みじゃなく通いでいいわよ。拒否はなしね」
いやいや、あなたに拒否できる人なんかいないでしょう。アマーリエ様の側付き女官なんて絶対楽しいわね。
私はウキウキしてしまったが足のことがちょっと気になる。
「あぁ、足は魔法大国の魔導士が回復魔法という魔法で元通りにしてくれるから安心してね」
えっ、アマーリエ様、心が読めるのか? それにしても魔法ってそんなこともできるのか。魔法大国恐るべしだな。
「エミールはステファンと一緒に私の側近として働いてもらうわ。あなた意外と使えるってわかったしね。夫婦共働きしなさい」
「仰せのままに」
夫婦共働き?
「アマーリエ様、私は白い結婚を目指しているんですけど」
アマーリエ様はニヤッと笑う。
「じゃあ、住み込みにする?」
「ダメです! 絶対ダメです!」
「まぁ、エミールが勝つか、シルが勝つか楽しみだわ。ふたりともよろしくね」
それからすぐ、国王陛下の退位と宰相閣下の辞職が報じられた。
エーベルハルト殿下は廃太子となり、モーリッツ殿下が王太子となった。婚約者はデルフィーヌ様がそのままスライドする。
モーリッツ殿下が成人し、即位するまでの間はアマーリエ様が国王代理になることも同時に発表された。
*このあと、ステファンとアンリエッタの純愛話を1話挟んで最終話となります。
どこがショートショートやねん!とお怒りの皆様すみません。やはり短いのは難しいです。
あと2話お付き合い下さいませ。
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