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お前が妬ましい(ステファン視点)
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殿下にまとわりついているあの女が嫌いだった。女を売り物にして近づいてくる。殿下とパトリック、アーノルドはすぐに引っかかった。
エミールはいつも3人を諌めていたが、私は距離をとるくらいだった。
あの女と目が合うと何故だかあの女を愛しく思ってしまう。私には愛するアンリがいるというのに。
あの女は殿下達とズブズブになっているようで毎日、殿下の部屋に入り浸るようになった。
私は近づかないようにしていたが、側近の仕事もあり、あの女と同じ部屋にいなくてはならない日もあった。同じ空気を吸うのも苦痛だった。
殿下、パトリック、アーノルドはあの女を聖女だ、女神だともてはやす。気持ちが悪くて吐きそうになる。
でも、気がつくと私もあの女に夢中になっていた。
あの女のためならなんでもする。私を見て欲しい、私を愛して欲しいと思うようになった。
しかし、いくら誘われても交わることはしなかった。いやできなかった。きっと私の魂が拒絶していたのだろう。
エミールが結婚式の為に父親が来て、縄でぐるぐる巻きにされて連れて帰られた。
エミールは婚約者が卒園パーティーに骨折したために出席していなかったので、あの場で私達と一緒に婚約破棄を言い渡すことができなかった。
「エミールも可哀想だな。ザラ以外の女となんか結婚したくないだろうに」
アーノルドは笑っている。
「俺達は婚約破棄したから、ザラだけだ」
パトリックは呟く。
婚約破棄……頭が割れそうに痛い。
その日は頭痛が酷く一日中寝ていた。夜中に目が覚めた。私は何をしているんだ? なぜ家じゃないこんなところで寝ているんだろう?
アンリに会いたい。アンリ……。
私はアンリに何をした?
もうアンリには会えない。アンリは私を許さない。
なぜあの女を愛しいと思ったのだろう?
なぜアンリに酷いことをしてしまったのだろう。
もうこんなところにいたくない。そう思っていた時にエミールが戻ってきた。
私の顔を見るなり言った。
「ステファン、お前正気だよな」
正気? なんのことだ? 私はエミールの顔を見た。
「エミール、なんで戻ってきたんだ? 好きな女と結婚できたんだろ。もう戻ってこないと思った」
「戻りたくなかったんだが、フィアに良いとこ見せたくて戻ってきた」
相変わらず、婚約者のことが好きなんだな。良いところをみせるとは?
エミールは急に私の足元に跪き足首に細いチェーンを巻きつけた。そして立ち上がりポケットから何かを取り出して私の口に放り込んだ。それは口の中で溶けた。
「これはなんだ?」
「魅了の魔法と別れるための薬と魔道具だ。お前は私と同じでかかりが浅い気がしたから1番先に解呪させてもらった」
魅了の魔法?
まさか、私は魅了の魔法にかかっていたのか? だからあんなことをやらかしてしまったのか。
思い出さない方が幸せだったかもしれない。
アンリにはもう会えない。私は魔法が解けた喜びより、アンリを失った絶望感でいっぱいになった。
「酷いな。これで完全に正気に戻ってしまったよ。私は魔法にかかっている間にやらかしたんだろ? アンリに酷いことをしてしまったんだよな」
「あぁ、そうだよ。だから私に協力してくれ、ザラが魅了の魔法を使って私達を操っていたことを暴いて、ザラに罪を償ってもらう。そしたらアンリエッタ嬢ももう一度会って話をしてくれるかもしれない。このままでいいのか?」
もう無理なんだよ。お前と私は違う。お前は婚約破棄をしていない。好きな女と結婚したんだ。
あの女を捕まえたところで私とアンリは元に戻れない。
「魅了の魔法なんかにかかった私達が間抜けだったんだ。アンリをこれ以上傷つけたくない。悪いが私は協力できない。このまま消えるよ。殿下の側近も辞める。ふっ、殿下も終わりだろうな」
エミール、私はお前が羨ましいよ、いや妬ましい。だから協力はしない。
私は私のやりたいようにやらせてもらうよ。
エミールはいつも3人を諌めていたが、私は距離をとるくらいだった。
あの女と目が合うと何故だかあの女を愛しく思ってしまう。私には愛するアンリがいるというのに。
あの女は殿下達とズブズブになっているようで毎日、殿下の部屋に入り浸るようになった。
私は近づかないようにしていたが、側近の仕事もあり、あの女と同じ部屋にいなくてはならない日もあった。同じ空気を吸うのも苦痛だった。
殿下、パトリック、アーノルドはあの女を聖女だ、女神だともてはやす。気持ちが悪くて吐きそうになる。
でも、気がつくと私もあの女に夢中になっていた。
あの女のためならなんでもする。私を見て欲しい、私を愛して欲しいと思うようになった。
しかし、いくら誘われても交わることはしなかった。いやできなかった。きっと私の魂が拒絶していたのだろう。
エミールが結婚式の為に父親が来て、縄でぐるぐる巻きにされて連れて帰られた。
エミールは婚約者が卒園パーティーに骨折したために出席していなかったので、あの場で私達と一緒に婚約破棄を言い渡すことができなかった。
「エミールも可哀想だな。ザラ以外の女となんか結婚したくないだろうに」
アーノルドは笑っている。
「俺達は婚約破棄したから、ザラだけだ」
パトリックは呟く。
婚約破棄……頭が割れそうに痛い。
その日は頭痛が酷く一日中寝ていた。夜中に目が覚めた。私は何をしているんだ? なぜ家じゃないこんなところで寝ているんだろう?
アンリに会いたい。アンリ……。
私はアンリに何をした?
もうアンリには会えない。アンリは私を許さない。
なぜあの女を愛しいと思ったのだろう?
なぜアンリに酷いことをしてしまったのだろう。
もうこんなところにいたくない。そう思っていた時にエミールが戻ってきた。
私の顔を見るなり言った。
「ステファン、お前正気だよな」
正気? なんのことだ? 私はエミールの顔を見た。
「エミール、なんで戻ってきたんだ? 好きな女と結婚できたんだろ。もう戻ってこないと思った」
「戻りたくなかったんだが、フィアに良いとこ見せたくて戻ってきた」
相変わらず、婚約者のことが好きなんだな。良いところをみせるとは?
エミールは急に私の足元に跪き足首に細いチェーンを巻きつけた。そして立ち上がりポケットから何かを取り出して私の口に放り込んだ。それは口の中で溶けた。
「これはなんだ?」
「魅了の魔法と別れるための薬と魔道具だ。お前は私と同じでかかりが浅い気がしたから1番先に解呪させてもらった」
魅了の魔法?
まさか、私は魅了の魔法にかかっていたのか? だからあんなことをやらかしてしまったのか。
思い出さない方が幸せだったかもしれない。
アンリにはもう会えない。私は魔法が解けた喜びより、アンリを失った絶望感でいっぱいになった。
「酷いな。これで完全に正気に戻ってしまったよ。私は魔法にかかっている間にやらかしたんだろ? アンリに酷いことをしてしまったんだよな」
「あぁ、そうだよ。だから私に協力してくれ、ザラが魅了の魔法を使って私達を操っていたことを暴いて、ザラに罪を償ってもらう。そしたらアンリエッタ嬢ももう一度会って話をしてくれるかもしれない。このままでいいのか?」
もう無理なんだよ。お前と私は違う。お前は婚約破棄をしていない。好きな女と結婚したんだ。
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「魅了の魔法なんかにかかった私達が間抜けだったんだ。アンリをこれ以上傷つけたくない。悪いが私は協力できない。このまま消えるよ。殿下の側近も辞める。ふっ、殿下も終わりだろうな」
エミール、私はお前が羨ましいよ、いや妬ましい。だから協力はしない。
私は私のやりたいようにやらせてもらうよ。
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