【完結】婚約破棄し損ねてしまったので白い結婚を目指します

金峯蓮華

文字の大きさ
上 下
1 / 26

プロローグ

しおりを挟む
 今日は私の婚姻式だ。

 5歳で婚約してから13年。私達が学園を卒業すると同時に婚姻するのは前々から決まっていた。

 私と婚約者のエミール様はある時期までは、仲睦まじく過ごしていた。

 両親達が仲が良く、誕生日も近かった私達は生まれた頃からほぼ一緒だった。

 そして5歳になった時に双方の両親達の強い希望で婚約者となった。

 燃えるような愛はなくとも家族のような情はあった。

 だが婚約者のエミール様は変わってしまった。

 エミール様はこの国の王太子殿下の側近。学園に入ってからは他の側近方と一緒にいつも殿下の側にいた。

 1、2年生の時は殿下の婚約者のデルフィーヌ様や他の側近方の婚約者の方々を交え、一緒にランチやお茶会をして過ごしていたのだが、3年になり、ザラ・トピナ男爵令嬢が転校してきた。

 ザラ嬢はつい最近まで平民だったらしく、貴族になったばかりだった。

 貴族令嬢達とは違い、マナーはさっぱりできていないのだが、それが新鮮に映ったのか、男子生徒達は皆ザラ嬢に夢中になった。

 中でもエーベルハルト殿下とその側近達はひどかった。

 ザラはデルフィーヌ様や側近達の婚約者にいじめられていると、殿下達に泣きついていたようだ。

 もちろん私達はいじめなどしない。私達はザラ嬢と接点がないし、皆それぞれに忙しい。ザラ嬢の言うように教科書を破いたり、靴を隠したりする暇などない。

 そしてあの日、私はザラ嬢に階段の1番上から突き落とされた。ザラ嬢は私に突き落とされたと装い、自分が落ちるつもりだったようだが、タイミングのせいで私が落ちてしまい、骨折した。
 その時もエミール様はは落ちた私のことなど全く気にする様子はない。
 階段の上にいたザラ嬢のことを心配していた。

 こんなやつもういらん! その時心の底からそう思った。

 階段から落ち、骨折したせいで、私は卒園式にも卒園パーティーにも参加できなかった。

 まぁ、エミール様はドレスもプレゼントしてくれない、エスコートもないので、でなくても良かったのだが、その卒園パーティーでは、エーベルハルト殿下や側近達が皆揃って、婚約者を断罪し、婚約破棄を突きつけたらしい。

 まぁ、みんなもう婚約者に愛想つかしていたので、婚約破棄は喜んで受け入れたみたい。

 いいなぁ。私も婚約破棄したかったわ。松葉杖で出ればよかったなぁ。

 出遅れた私は婚約破棄できず、骨折も治ったため前々から決まっていた今日の婚姻式を迎えてしまった。

 婚約者のエミール様は来るのかしらね?

 階段から落ちてから一度も会ってないのだけれど。
しおりを挟む
感想 111

あなたにおすすめの小説

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい

高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。 だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。 クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。 ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。 【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない

曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが── 「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」 戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。 そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……? ──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。 ★小説家になろうさまでも公開中

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

私達、政略結婚ですから。

恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。 それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。

愛されていたのだと知りました。それは、あなたの愛をなくした時の事でした。

桗梛葉 (たなは)
恋愛
リリナシスと王太子ヴィルトスが婚約をしたのは、2人がまだ幼い頃だった。 それから、ずっと2人は一緒に過ごしていた。 一緒に駆け回って、悪戯をして、叱られる事もあったのに。 いつの間にか、そんな2人の関係は、ひどく冷たくなっていた。 変わってしまったのは、いつだろう。 分からないままリリナシスは、想いを反転させる禁忌薬に手を出してしまう。 ****************************************** こちらは、全19話(修正したら予定より6話伸びました🙏) 7/22~7/25の4日間は、1日2話の投稿予定です。以降は、1日1話になります。

愛を求めることはやめましたので、ご安心いただけますと幸いです!

風見ゆうみ
恋愛
わたしの婚約者はレンジロード・ブロフコス侯爵令息。彼に愛されたくて、自分なりに努力してきたつもりだった。でも、彼には昔から好きな人がいた。 結婚式当日、レンジロード様から「君も知っていると思うが、私には愛する女性がいる。君と結婚しても、彼女のことを忘れたくないから忘れない。そして、私と君の結婚式を彼女に見られたくない」と言われ、結婚式を中止にするためにと階段から突き落とされてしまう。 レンジロード様に突き落とされたと訴えても、信じてくれる人は少数だけ。レンジロード様はわたしが階段を踏み外したと言う上に、わたしには話を合わせろと言う。 こんな人のどこが良かったのかしら??? 家族に相談し、離婚に向けて動き出すわたしだったが、わたしの変化に気がついたレンジロード様が、なぜかわたしにかまうようになり――

あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。

ふまさ
恋愛
 楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。  でも。  愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。

処理中です...