魅了が解けた元王太子と結婚させられてしまいました。 なんで私なの!? 勘弁してほしいわ!

金峯蓮華

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番外編・アーサーとルシア

外堀から埋められていた

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 馬車がフェノバール公爵家に到着した。ルシアは自宅からの通いなので、このまま家に帰っても問題ないが、とりあえずフェノバール公爵邸に着けた。

「お帰りなさいませ、中でリカルド様とミディア様がお待ちです」

 セバスがむかえてくれたので、私はきちんとエスコートしてルシアを馬車から降ろした。

 リカルド様達はサロンでお茶を飲んでいた。

「ただいま戻りました。これはエレノア様よりお預かりしたものです」

 私はミディア様に手渡した。


◇◇◆

 しばらくして、ミディア様に呼び出された。

 サロンに行くとリカルド様、それにルシアがいた。

「待っていたわアーサー様、アリシア様から聞いたのだけれどアーサー様、ルシア、貴方達結婚するの? 早く言ってくれればいいのに。アリシア様に先越されちゃったわ」

「アーサー、ルシアおめでとう。母上からも義母上から聞いたと連絡があったよ。母上はルシアのことを大切に思っているから、喜んでいたよ」

 えっ? 確かに義姉とはエレノア様の店で会ったが、ルシアを紹介しただけだ。なんでそんな話になっているんだ?

 ミディア様はニコニコ顔で話を続ける。
「アリシア様がルシアのお家に申し込みに行ったら、おふたりとも最初は戸惑っていらしたけど、最後はルシアをよろしくお願いしますって仰ったって。も~、私もリカルド様も一緒に行きたかったわ」

 はぁ~? 何のことだ? まさかあの腹黒策士、ゴードンさんのところに行ったのか?

 私が黙っているとミディア様はイエスととったようだ。

「もう、ふたりとも恥ずかしがっちゃって、ウエディングドレスはエレノア姉様に頼んでもいい? エレノア姉様がゴードンさんの蚕さん達が頑張った絹織物で作らせて欲しいって言ってるの」

「ミディア様、何かの間違いではないですか? 私などアーサー様と釣り合うはずがありません。私は平民ですし、それに以前背中の傷を理由に婚約を解消された女です。侯爵家の子息であり、天才魔導士でもあるアーサー様と私なんかが……」

 ルシアは肩を揺らしている。

「身分も傷も関係ないです。傷はもうないし、身分も私は家を出た身です」

 私がそう言うとルシアは驚いた顔をした。

「傷がもうない? えっ?」

 慌てて背中に手をやる。

「ちょっと失礼」

 ミディア様が立ち上がりルシアの後ろに回った。

「ちょっと見てもいい?」
「えっ?」

 ミディア様は襟ぐりから私の背中を覗き込む。

「メアリーちょっと来て~」

 ミディア様はメアリーを呼んだ。慌てて来たメアリーに何やら耳打ちしている。

 ミディア様とメアリーはルシアを引っ張りサロンから消えた。

 サロンには私とリカルド様が残った。リカルド様が困ったような顔をしている。

「アリシア様の勇足か?」

 私はどう答えるべきか迷う。

「ルシアの気持ちを大事にしてやらないといけないよ」

 リカルド様はふっとため息をついた。

「ミディアには、余計なことをするなと釘をさしていたのだが、ミディアの他にもいたとはな」

「リカルド様、義姉が申し訳ありません。ただ義姉とミディア様は全く違います。ミディア様は天然ですが、義姉は違います。腹黒策士です。もし義姉がこのことを勇足したのであれば、それは何か理由があってのことです」

 私の言葉にリカルド様が眉根をよせた。

「それならば、アリシア様は君たちのことを考えて、こうすることがベストだと思ったのだろうな。きっとエレノアさんの工房で会った時に二人の気持ちを見抜いたのだろう。さぁ、どうする? アーサー」

 いや、どうする? と言われても……。

◆◆  ◆ルシア視点

「ルシア様、こちらに」

 私が連れられてきたのは客間だった。

「じゃあね、あとはメアリーに任せるわ。私はこちらの部屋で待っているから。あとでね」

 ミディア様はウインクをして消えた。

「お召し替え致しましょう。こちらはアリシア様からお預かりしたドレスです」

 メアリーさんがドレスを持ってきた。

 アリシア様、何か勘違いしたのね。困ったわ。私なんかがアーサー様と結婚できるわけないのよ。それにこんなに背中のあいたデザインのドレスなんて着たら、傷が丸見えになるわ。

 あの傷を見たらアーサー様だって嫌になるに決まっている。

「メアリーさん、ダメです。無理です」

「ルシア様諦めてくださいまし、着てもらわないと私がミディア様に叱られます。私の顔を立てて下さい」

 メアリーさんにはいつもお世話になっている。着るだけ着るか。背中の傷を見たらすぐに脱がせてくれるだろう。

「ルシア様、ピッタリですわね」

 メアリーさんが褒めてくれた。

「どう、出来上がった?」

 ミディア様の声だ。

「できましたよ」

 メアリーさんが返事をし、ミディア様が部屋に入ってきた。

「綺麗だわ。さすがアリシア様、ルシアに似合う形と色ね。背中がすごく開いていて、アーサー様が見たら鼻血出しちゃうかもね」

 ミディア様はふふふと笑っている。

「ミディア様、私は背中に醜い傷があります。丸見えになってますよね?」

 ミディア様は不思議な顔をした。

「傷? どこに? 傷なんてひとつもないわよ。ツルツルで真っ白よ」

 ミディア様は何を言っているのだろう?

「ほらほら。ルシア様、見て下さいまし」

 メアリーさんが鏡を持ってきてくれた。合わせ鏡にすれば私が自分の背中を見ることができる。

 うそ? 傷がない。

「ね、傷なんてないでしょう? きっと神様が消してくれたのね。ギフトは受け取っておきましょう」

 ミディア様はふふふと笑ったまんまだ。

「傷はクリアしたわね。あとは何? 身分? 身分はマイスタン侯爵家側は問題ないと言ってるし、ゴードンさん達もあなたに任すと言っているそうよ。アーサー様のことが嫌いなら断る? あの男は嫌いって言わないとわからないわよ」

「き、嫌いなんてとんでもないです」

 私はつい本音を口走ってしまった。

***
皆様、今年も応援していただきましてありがとうございました。
今年は3月末に第16回恋愛小説大賞の優秀賞をいただき、11月末には書籍化していただきました。まさか昨年末にはこんなことが起きるなんて夢にも思っていませんでした。これも応援してくださっている皆様のおかげだと感謝しています。
これからも楽しい作品を書いていきたいと
思っています。来年もよろしくお願いします。
良いお年をお迎えください。
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