魅了が解けた元王太子と結婚させられてしまいました。 なんで私なの!? 勘弁してほしいわ!

金峯蓮華

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番外編・アーサーとルシア

回復魔法

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 帰りの馬車の中でルシアは窓の外を見ていた。

私が話しかけてもうわの空だ。

 あんな奴が婚約者だったのか。解消になって良かった。あんな酷い男は酷い目に遭えばいい。ルシアの苦しみをあいつが代わればいい。

 そうだ。あいつにはなんかささやかな罰魔法をかけてやろう。
苦しめ、苦しめ。私はルシアを苦しめる奴を絶対許さない。

「ルシア、気にすることなんかない。傷が気になるなら私の魔法で跡形もなく消せばいい」

「無理です」

「なぜ?」

 ルシアはやっぱり黙り込んでいる。

 私はルシアの顔を覗き込んだ。

「なぜ無理なのか教えてほしい」

 ルシアは顔を逸らした。少し震えているようだ。

「医師に言われたのです。魔法でも完治しないし、痕も消えないと」

 ヤブ医者め。医者なんてやめろ。

 私はできるだけ優しい声でルシアに言った。

「私は消せるよ。そんな医者より私を信じてほしい。治してみせる。消してみせる」

 私は勝手にルシアの背中に手を当てた。

 スキャンしてみると、ルシアの傷は結構深かった。奥がまだじゅくじゅくして熱を持っている。膿んでいるようだ。
 その時、治療した医者は本当にヤブ医者だったようだ。この状態だと、今でも時々痛みがあるんじゃないのか?

 私はあの男に更に怒りが湧いてきた。あいつのせいでルシアは苦しんでいる。ささやかな罰魔法なんてダメだな。もうちょっとキツいやつにしよう。

 そんなことよりルシアの傷だ。

「ルシア、勝手に治させてもらうよ」

 ルシアは何も言わない。それをイエスと勝手に決めた。
 私は回復魔法をルシアに流した。私の手から光が溢れ出し、ルシアの背中の傷に吸い込まれていく。

 ガラスか? ガラスの破片が全て取り除かれていなかったのか。きちんと処置されていればこんなにひどくならなかったはずだ。

 ヤブ医者にもささやかな罰魔法をかけてやる。
 回復魔法の光が薄くなってきた。もう一息だ。

 ルシアは眠っているようだ。

 このままフェノバール領まで寝ているといい。

 私はルシアが眠っているので、ルシアの心にも回復魔法をかけた。

 ルシアの心の傷が治るといいな。

***
今日は短めですみません。
ガラスに関しましてはこの世界の話として読んでください。この世界のガラスは体内に残るとそんなことになる感じで書いてみました。
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