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番外編・アーサーとルシア

私の思い(ルシア視点)

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 アーサー様と二人でミディア様のお使いに行く事になった。

 アーサー様だけだと魔法で飛ぶ事ができるのに、私がいるばっかりに馬車で長時間の往復をしなくてならない。なんだか申し訳がない。

「アーサー様すみません。私は足手纏いですよね?」

 私の言葉にアーサー様は驚いたような顔をしている。

「なんで? 全然そんなことはないよ。むしろミディア様はルシアはめちゃくちゃ頑張っているから、ご褒美に何か好きなものを買ったり、美味しいものを食べさせてあげなさいと言われているんだ」

 へ? まさか。

「今日のお使いはエレノア様のところに行った後はルシアの行きたいところに付き合うよ」

 アーサー様はにっこり笑う。急にそんなことを言われてもどうしていいのかわからない。

「まぁ、デートみたいなもんかな?」

「へ?」

「うそうそ、冗談だよ」


アーサー様は目の前で手をバタバタさせた。

 デート? 何がどうしたら私がアーサー様とデートになるのよ。

 アーサー様は公爵令息で私はただの平民。農家の娘よ。

 アーサー様は私の憧れだった。

 小さい頃にアーサー様は天才魔導士。ゆくゆくは魔法省に入って大臣になるのではないか? お兄様を抜いて家督を継ぐのではないかと囁かれていた。

 アーサー様は私のことなど知らないだろうが、実は私とアーサー様は子供の頃に会っている。
 王宮に10歳以下の子供が集められ大お茶会が行われたことがあった。私は平民だがその時は家が裕福だったため呼んでもらえた。

 あの時、従姉妹の子爵令嬢が教えてくれた。

「ルシア、あの子が天才魔法使いよ。将来は魔法大臣になるってお父様が言ってたわ。私は子爵令嬢だから結婚は無理だって。残念だわ~」

 あの頃のアーサー様はキラキラしていた。

 私はただ、遠くから見ていた。

 私は学園に通わせてもらえた。ひょっとしたらアーサー様に会えるかもと楽しみにしていたのに、ひと学年上の従姉妹の話では何年か前の卒業パーティーで何か事件が起こり、アーサー様が壊れたと聞いたと言っていた。
 その日を境にアーサー様は学園から消えたらしい。

 私のような者が何故消えたのか知る由もなかった。アーサー様ははじめから遠い人だったのだ。

 あの日、アーサー様が私の家を訪ねてきた時は心臓が止まるかと思った。アーサー様は子供の頃と少しも変わってなかった。背が高くなり、身体も大きくなっていたが雰囲気は同じままだった。
 そして私をまた事務方に戻してくれた。


 王都まで片道3時間。途中何とか馬車を停めて休憩する。旅人用の馬車が休憩できるような場所がその領地領地にある。そこでは簡単な食事ができたり特産品を売っている。

「フェノバールにはこんなところがないだろう?」

「そうですね。以前はあったのですが災害で壊れてしまってから、皆それどころではなくて。これからできるといいですね」

「うん。一緒に作っていこう」

「はい」

 はいと返事はしたものの、私なんかに何ができるのだろう。


 私は学園に通っていた頃に婚約者がいた。平民ではあったが、祖父と父は養蚕業を手広く営んでいて、まぁまぁ裕福だった。それに父は子爵家出身ということもあり、平民でも下位貴族の令息との縁談が来た。私は男爵家の令息と婚約していた。

 でも、私が怪我をし、それを理由に婚約解消されてしまった。

「そんな大きな傷がある女を嫁にする奴などいない。婚約は解消だ!」

 元はと言えば彼を庇って怪我をした。二人でいるところに馬車が突っ込んで来た。彼は咄嗟に私を盾にしたのだ。もちろんかなりの慰謝料はもらえたが虚しかった。

 もう結婚できないのなら一人で身を立てなければと思い、私は王宮の女官の試験を受けたのだ。

 母が怪我をして仕事ができなくなった為に実家に戻り、慣れない機織りや桑畑の仕事をした。

 やっぱり事務方の仕事が好きだと思った。でももう戻れない。父母の為に頑張らなきゃと毎日思っていた。

 まさか、領主様のお屋敷で働けるなんて、憧れのアーサー様と一緒に働けるなんて夢みたいだ。

 私は本当に幸せだ。

 アーサー様と一緒に王都に行けるなんてやっぱりミディア様は女神様なのかもしれない。

 今日だけ。今日だけは楽しもう。そして明日からはまた地味に生きていこう。

 私がアーサー様と……なんてあり得ないものね。

 私は馬車の中から窓の外の景色を眺めながらため息をついた。


***
Merry Xmas
全く関係ない内容ですが、Merry Xmas♡
ノルスバン王国にクリスマスがあるのかどうか微妙ですがとにかくMerry Xmas♡
皆様、素敵なクリスマスの夜をお過ごし下さいませ♡


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