143 / 161
番外編のおまけ
フェノバール商会は今日も商売繁盛
しおりを挟む*もうおしまいと言ったのに番外編のおまけです。歳を重ねても仲良しのリカルドとミディアです。
別のお話の主人公のミオリアも出てきます。
アーサーの末の息子のアイザックと我が家に下宿をして魔法医療学校に通っていたレミニール王国から来たミオリアが結婚することになった。
今日はふたりでうちに挨拶にきている。別に私達に挨拶なんてしなくてもいいのに真面目なふたりだ。
「それで、このフェノバールで結婚式と披露パーティーがしたいんです。レミニールからの参列客は父が乗合馬車を移動魔法で動かしてくれる予定です。許可をしていただけませんか?」
アイザックがリカルド様に頼んでいる。ふたりはここで知りあった。だからここで誓いを立てたいという。素敵だわ。
「私に異存はないよ。うちのチャペルを使えばいいし、パーティーはどこがいいかな?」
リカルド様は私の顔を見た。
「そうね~。どこがいいかしら?」
つんつんとされ、私は思わず隣にいた次男のシャルのお嫁さんのリリの顔を見た。リリは何やらニヤニヤとしている。
「アイザック、ミオリアちゃん、あなた達の結婚式と披露パーティー、フェノバール商会に任せてくれない? 全てフェノバール商会からのお祝い。その代わり、フェノバール商会が提案したことはみんなやってほしいの。変なことは何もないわ。素敵なことばかりよ。お義父さま、ママ、いいわよね? ふたりともどうかしら?」
リリは押しが強い。若いふたりはタジタジだ。
「「よろしくお願いします」」
「任せて。ノルスバン国イチ素敵な結婚式と披露パーティーにするからね」
リリは気合い十分だ。フェノバール商会からのお祝いか……。
「でも、リリのことだから何かあるよな?」
リカルド様は小声で私に言う。
「そうね。でも素敵な式と披露パーティーにするって言っているんだし、私達は見守りましょう」
「そうだね」
リカルド様はきゅっと私の腰を自分の方に寄せた。
◆◇◆
今日はアイザックとミオリアの結婚式だ。ふたりはフェノバール魔法医療学校で知り合い愛を育んだ。結婚してミオリアの母の実家を継ぐそうだ。
ふたりはレミニール王国ではなく、このフェノバール領で結婚式と披露パーティーを希望し、フェノバール商会が取り仕切ってすることになった。
ミオリアは我が家に下宿して、学校に通っていたので、知り合いや恩人、友人がたくさんいるこのフェノバールで結婚式をやりたいと思ったそうだ。
アイザックは学校を卒業してから、ノルスバン国の医務局で魔法医師として勤務し、魔法省の魔導士、魔道具師としても活躍している。ミオリアも魔法医師、魔法薬師としてノルスバン国、レミニール王国を飛び回りながら、魔法医療学校で魔法薬師科の授業を受け持ち生徒に魔法で薬を作る方法を教えている。フェノバールと縁は深い。
ミオリアは前世で公爵令嬢だった時の辛い記憶を持って生まれてきたため色々あって大変だった。
私の友達のアルプラゾラム王国のミッシェル殿下の紹介でうちにやって来た。うちに来る課程でアーサー様が色々絡んだので、ミオリアのことをアーサー様も気になっていたようだ。
たまたま末っ子のアイザックがミオリアと同級生だったため、気にかけてやれとアイザックに言っていたら、同じ方向を向いていた二人はすっかり意気投合し、愛を育んでいたようだ。
アイザックは末っ子だし、婿に出すのは問題ない。元よりアーサー様もルシアさんもそんなことは気にしないタイプだ。あちらのおうちも貴族とはいえ、医師や薬師の家なので特殊らしく、母親のルシアさんが平民だとかそんなことは全く気にしないみたいだ。
それに当主とは名ばかりでいいらしく、とりあえず家を存続させるための跡継ぎらしい。
もし、ふたりの子供が後を継ぐのを嫌がったら、また、親戚筋から魔力が強く、医師や薬師をしている者を養子をとるという。色んな家があるのだな。
まぁ、私とリカルド様も跡継ぎのことには無頓着だし、うちもかなり特殊な家だもの。私達は、子供達が、それぞれやりたいようにやればいいと思う。
フェノバール公爵家のチャペルで式を挙げ、庭でガーデンパーティーをする。
アーサー様が作った移動魔法乗合馬車でレミニールからノルスバン国のフェノバール領までミオリア側の参列客を連れてきた。
挙式はジェットが取り仕切った。誓いの言葉、誓いのキス、最後は聖女デーアの祝福の光が天から降り注いだ。
「ミディア様~、今日はありがとうございます」
アイザックとミオリアが挨拶に来てくれた。
「ふたりともおめでとう。ミオリア、綺麗よ。アイザック、こんな素敵なひとがお嫁さんになってくれて良かったわね」
「リカルド様とミディア様のおかげです。こんな素敵な結婚式と披露パーティーをありがとうございます」
アイザックは嬉しそうだ。
「ウエディングドレスもこのドレスも素敵過ぎて夢みたいです。あの時は驚きましたが、フェノバール商会にお任せして本当に良かったです。このご恩は生涯忘れません」
ミオリア、ちょっと大袈裟だわ。
ミオリアが着ているのはルシアさんのお父さんのゴードンさんと弟達が手塩にかけて育てた蚕さんたちの糸で作ったウエディングドレスとお色直しのアイザックの瞳の水色のドレス。蚕さんたちの糸で生地を作ったゴードンさんはアイザックのお祖父さんだ。うちの父もちょっとお手伝いした。お色直しのドレスはその生地を領地で栽培したクサギの実で水色に染めた。そしてふたりの恩師のチャーリー先生の夫人であり、フェノバールドレスサロンの責任者のレベッカさんがデザインし、フェノバール領の奥さん達が心をこめて縫ったドレス。もちろん両方に超人気刺繍作家の我が義妹、ソフィアが刺繍を刺した。ソフィアが刺繍をしたドレスを着て嫁いだお嫁さんは必ず幸せになると言われている。
「結婚式も素敵な式だったわね」
みんな口々にそう言っている。
本当にみんなが祝福してくれていていいお式だった。
「今日の式もパーティーも素敵過ぎて、友達はみんなこんな結婚式とパーティーがしたいと言ってます。本当に皆さんありがとうございます」
涙ながらにお礼を言っているミオリアとそれを見守るアイザック。私の横にいるリリはお腹の中でヒヒヒとほくそ笑んでいるのだろう。
帰りにみんなに手渡された袋には焼き菓子と記念品、そしてフェノバール商会のウエディングプランのパンフレットが入っている。商魂逞しいリリはぬかりない。
ガーデンウエディングパーティーはリリの自信のウエディングプラン。リリは前世の記憶を生かし、結婚式と披露パーティーの企画を売り出そうと考えている。今回のアイザックとミオリアの結婚式と披露パーティーはリリ的には大切な宣伝なのだそうだ。
「参列した女の子達や親達はこんな結婚式や披露パーティーをやりたい。自分達の時もフェノバール商会に頼もうと思うに違いないわ。損して得とれよ」
リリはニマニマ笑う。
そして、アイザックとミオリアはエスタゾラム王国へ新婚旅行に旅立った。
もちろんこれもフェノバール商会のウエディングパック旅行。新婚旅行も流行らせるつもりらしい。
◆◇◆
フェノバール商会のウエディングパックは大流行した。
リリは今度は何を流行らせるつもりなのだろう?
「ママ、お義父様、フェノバール商会で客船を買おうかと思うのだけど、シャルとリュカ義兄様からはOKをもらっているの。どうかしら? ソフィア義叔母様のご実家のランタス伯爵と合同事業なのよ。ランタス領の港を母港にしようと思うの」
今度は客船か。
「いいんじゃないか、客船が来たら私はミディアとまた旅に出たいな」
リカルド様は私を抱き寄せる。
「もちろん。ロイヤルスイートをご用意しますわ」
リリはふふふと笑う。
リリがお嫁に来てからフェノバール商会はとんでもなく繁盛している。リリが提案し、シャルがどんどん形にしていっている。
リリやシャルが前世生きていたところってとんでもないところだったようだ。
どんどん便利になっていくが、フェノバール領の良さは失わないでほしい。
みんなが幸せで生きやすい場所。みんなが楽しく自由である場所。
フェノバール領はリカルド様が領民達と力を合わせていい領地にしたんだものね。可愛い孫達や領民達の幸せのためにも私もまだまだ頑張らなきゃ。
私は隣に座っているリカルド様の顔を見て微笑んだ。
「さぁ、お茶にしましょうか」
18
お気に入りに追加
6,816
あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
ここは私の邸です。そろそろ出て行ってくれます?
藍川みいな
恋愛
「マリッサ、すまないが婚約は破棄させてもらう。俺は、運命の人を見つけたんだ!」
9年間婚約していた、デリオル様に婚約を破棄されました。運命の人とは、私の義妹のロクサーヌのようです。
そもそもデリオル様に好意を持っていないので、婚約破棄はかまいませんが、あなたには莫大な慰謝料を請求させていただきますし、借金の全額返済もしていただきます。それに、あなたが選んだロクサーヌは、令嬢ではありません。
幼い頃に両親を亡くした私は、8歳で侯爵になった。この国では、爵位を継いだ者には18歳まで後見人が必要で、ロクサーヌの父で私の叔父ドナルドが後見人として侯爵代理になった。
叔父は私を冷遇し、自分が侯爵のように振る舞って来ましたが、もうすぐ私は18歳。全てを返していただきます!
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました

獣人の彼はつがいの彼女を逃がさない
たま
恋愛
気が付いたら異世界、深魔の森でした。
何にも思い出せないパニック中、恐ろしい生き物に襲われていた所を、年齢不詳な美人薬師の師匠に助けられた。そんな優しい師匠の側でのんびりこ生きて、いつか、い つ か、この世界を見て回れたらと思っていたのに。運命のつがいだと言う狼獣人に、強制的に広い世界に連れ出されちゃう話
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。