魅了が解けた元王太子と結婚させられてしまいました。 なんで私なの!? 勘弁してほしいわ!

金峯蓮華

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番外編のおまけ

フェノバール商会は今日も商売繁盛

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*もうおしまいと言ったのに番外編のおまけです。歳を重ねても仲良しのリカルドとミディアです。
別のお話の主人公のミオリアも出てきます。



 アーサーの末の息子のアイザックと我が家に下宿をして魔法医療学校に通っていたレミニール王国から来たミオリアが結婚することになった。
 今日はふたりでうちに挨拶にきている。別に私達に挨拶なんてしなくてもいいのに真面目なふたりだ。

「それで、このフェノバールで結婚式と披露パーティーがしたいんです。レミニールからの参列客は父が乗合馬車を移動魔法で動かしてくれる予定です。許可をしていただけませんか?」

 アイザックがリカルド様に頼んでいる。ふたりはここで知りあった。だからここで誓いを立てたいという。素敵だわ。

「私に異存はないよ。うちのチャペルを使えばいいし、パーティーはどこがいいかな?」

 リカルド様は私の顔を見た。

「そうね~。どこがいいかしら?」

 つんつんとされ、私は思わず隣にいた次男のシャルのお嫁さんのリリの顔を見た。リリは何やらニヤニヤとしている。

「アイザック、ミオリアちゃん、あなた達の結婚式と披露パーティー、フェノバール商会に任せてくれない? 全てフェノバール商会からのお祝い。その代わり、フェノバール商会が提案したことはみんなやってほしいの。変なことは何もないわ。素敵なことばかりよ。お義父さま、ママ、いいわよね? ふたりともどうかしら?」

 リリは押しが強い。若いふたりはタジタジだ。

「「よろしくお願いします」」

「任せて。ノルスバン国イチ素敵な結婚式と披露パーティーにするからね」

 リリは気合い十分だ。フェノバール商会からのお祝いか……。



「でも、リリのことだから何かあるよな?」

 リカルド様は小声で私に言う。

「そうね。でも素敵な式と披露パーティーにするって言っているんだし、私達は見守りましょう」

「そうだね」

 リカルド様はきゅっと私の腰を自分の方に寄せた。


◆◇◆


 今日はアイザックとミオリアの結婚式だ。ふたりはフェノバール魔法医療学校で知り合い愛を育んだ。結婚してミオリアの母の実家を継ぐそうだ。

 ふたりはレミニール王国ではなく、このフェノバール領で結婚式と披露パーティーを希望し、フェノバール商会が取り仕切ってすることになった。

 ミオリアは我が家に下宿して、学校に通っていたので、知り合いや恩人、友人がたくさんいるこのフェノバールで結婚式をやりたいと思ったそうだ。

 アイザックは学校を卒業してから、ノルスバン国の医務局で魔法医師として勤務し、魔法省の魔導士、魔道具師としても活躍している。ミオリアも魔法医師、魔法薬師としてノルスバン国、レミニール王国を飛び回りながら、魔法医療学校で魔法薬師科の授業を受け持ち生徒に魔法で薬を作る方法を教えている。フェノバールと縁は深い。

 ミオリアは前世で公爵令嬢だった時の辛い記憶を持って生まれてきたため色々あって大変だった。
 私の友達のアルプラゾラム王国のミッシェル殿下の紹介でうちにやって来た。うちに来る課程でアーサー様が色々絡んだので、ミオリアのことをアーサー様も気になっていたようだ。
 たまたま末っ子のアイザックがミオリアと同級生だったため、気にかけてやれとアイザックに言っていたら、同じ方向を向いていた二人はすっかり意気投合し、愛を育んでいたようだ。

 アイザックは末っ子だし、婿に出すのは問題ない。元よりアーサー様もルシアさんもそんなことは気にしないタイプだ。あちらのおうちも貴族とはいえ、医師や薬師の家なので特殊らしく、母親のルシアさんが平民だとかそんなことは全く気にしないみたいだ。
 それに当主とは名ばかりでいいらしく、とりあえず家を存続させるための跡継ぎらしい。
 もし、ふたりの子供が後を継ぐのを嫌がったら、また、親戚筋から魔力が強く、医師や薬師をしている者を養子をとるという。色んな家があるのだな。

 まぁ、私とリカルド様も跡継ぎのことには無頓着だし、うちもかなり特殊な家だもの。私達は、子供達が、それぞれやりたいようにやればいいと思う。


 フェノバール公爵家のチャペルで式を挙げ、庭でガーデンパーティーをする。

 アーサー様が作った移動魔法乗合馬車でレミニールからノルスバン国のフェノバール領までミオリア側の参列客を連れてきた。

 挙式はジェットが取り仕切った。誓いの言葉、誓いのキス、最後は聖女デーアの祝福の光が天から降り注いだ。


「ミディア様~、今日はありがとうございます」

 アイザックとミオリアが挨拶に来てくれた。

「ふたりともおめでとう。ミオリア、綺麗よ。アイザック、こんな素敵なひとがお嫁さんになってくれて良かったわね」

「リカルド様とミディア様のおかげです。こんな素敵な結婚式と披露パーティーをありがとうございます」

 アイザックは嬉しそうだ。

「ウエディングドレスもこのドレスも素敵過ぎて夢みたいです。あの時は驚きましたが、フェノバール商会にお任せして本当に良かったです。このご恩は生涯忘れません」

 ミオリア、ちょっと大袈裟だわ。

 ミオリアが着ているのはルシアさんのお父さんのゴードンさんと弟達が手塩にかけて育てた蚕さんたちの糸で作ったウエディングドレスとお色直しのアイザックの瞳の水色のドレス。蚕さんたちの糸で生地を作ったゴードンさんはアイザックのお祖父さんだ。うちの父もちょっとお手伝いした。お色直しのドレスはその生地を領地で栽培したクサギの実で水色に染めた。そしてふたりの恩師のチャーリー先生の夫人であり、フェノバールドレスサロンの責任者のレベッカさんがデザインし、フェノバール領の奥さん達が心をこめて縫ったドレス。もちろん両方に超人気刺繍作家の我が義妹、ソフィアが刺繍を刺した。ソフィアが刺繍をしたドレスを着て嫁いだお嫁さんは必ず幸せになると言われている。

「結婚式も素敵な式だったわね」
 
 みんな口々にそう言っている。
 
 本当にみんなが祝福してくれていていいお式だった。

「今日の式もパーティーも素敵過ぎて、友達はみんなこんな結婚式とパーティーがしたいと言ってます。本当に皆さんありがとうございます」

 涙ながらにお礼を言っているミオリアとそれを見守るアイザック。私の横にいるリリはお腹の中でヒヒヒとほくそ笑んでいるのだろう。

 帰りにみんなに手渡された袋には焼き菓子と記念品、そしてフェノバール商会のウエディングプランのパンフレットが入っている。商魂逞しいリリはぬかりない。

 ガーデンウエディングパーティーはリリの自信のウエディングプラン。リリは前世の記憶を生かし、結婚式と披露パーティーの企画を売り出そうと考えている。今回のアイザックとミオリアの結婚式と披露パーティーはリリ的には大切な宣伝なのだそうだ。

「参列した女の子達や親達はこんな結婚式や披露パーティーをやりたい。自分達の時もフェノバール商会に頼もうと思うに違いないわ。損して得とれよ」

 リリはニマニマ笑う。

 そして、アイザックとミオリアはエスタゾラム王国へ新婚旅行に旅立った。
 もちろんこれもフェノバール商会のウエディングパック旅行。新婚旅行も流行らせるつもりらしい。


◆◇◆


 フェノバール商会のウエディングパックは大流行した。

 リリは今度は何を流行らせるつもりなのだろう?

「ママ、お義父様、フェノバール商会で客船を買おうかと思うのだけど、シャルとリュカ義兄様からはOKをもらっているの。どうかしら? ソフィア義叔母様のご実家のランタス伯爵と合同事業なのよ。ランタス領の港を母港にしようと思うの」

 今度は客船か。

「いいんじゃないか、客船が来たら私はミディアとまた旅に出たいな」

 リカルド様は私を抱き寄せる。

「もちろん。ロイヤルスイートをご用意しますわ」

 リリはふふふと笑う。

 リリがお嫁に来てからフェノバール商会はとんでもなく繁盛している。リリが提案し、シャルがどんどん形にしていっている。

 リリやシャルが前世生きていたところってとんでもないところだったようだ。

 どんどん便利になっていくが、フェノバール領の良さは失わないでほしい。

 みんなが幸せで生きやすい場所。みんなが楽しく自由である場所。

 フェノバール領はリカルド様が領民達と力を合わせていい領地にしたんだものね。可愛い孫達や領民達の幸せのためにも私もまだまだ頑張らなきゃ。

 私は隣に座っているリカルド様の顔を見て微笑んだ。

「さぁ、お茶にしましょうか」



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