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番外編

アンソニーの恋9

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 リカルド様、アーサー様、宰相様、オーウェン様は任務遂行の為に散らばっていったので、私と王妃様は王妃様のサロンでのんびりお茶している。

「美味しいでしょ? 侍女に買ってきてもらったからミディアを呼ぼうと思っていたの。ちょうど良かったわ」

「王都で今評判になっているスイーツですね。フェノバールにいたらなかなか食べられないから嬉しいです」

「あらあら、リカルドに食べたいっておねだりした速攻で買ってきてくれるわよ」

 王妃様はふふふと笑っている。

「それにしても、最初はこんなに仲良くなるとは思わなかったわ。今ではあのリカルドがデレデレだものね。個体から液体になっちゃったみたいだわ。でもまぁミディア限定だけどね」

「そうなのですか?」

「そうよ。今でも側妃や愛妾希望みたいなのが時々来るけど、塩対応通り越して氷対応よ。殺気まで感じるわ」

 ふふふからはははになった。


 目の前に粒子が浮かんできた。

「誰かくるわね。もう処理したのかしら?」

 処理って?

「あら、アンソニーじゃない?」

「他にもいますね」

「スイーツ足りるかしら?」

 そこかい!


 アンソニー、ロバート、レイチェル、そして細身の儚げな美人さんが現れた。

「母上、話はつきました」

「あらそうなの。皆さんも一緒にお茶しない?」

 王妃様、マイペースだわ。

「アンソニー、そちらがソフィア嬢?」

 私が尋ねるとアンソニーはにっこり微笑んだ。

「はい。俺の唯一無二、最愛のソフィアです」

 ありゃま、アンソニーってそんなことしれっと言う人だったのね。

「ソフィア・ランタスと申します」

 ソフィアは綺麗なカーテシーをした。

「私はこの子の母親よ。あなた王太子妃になる気はない?」

 急にそんなことを言われたソフィア嬢は驚いたようで固まっている。

「滅相もございません。私は没落寸前の伯爵の娘でございます。本来ならこの場にいることすら申し訳ない気持ちで一杯です。どうかお許しくださいませ」

 ソフィア嬢は引き気味に小声で話す。

「合格よ。下心見え見えだったら処分しようと思ったんだけど、杞憂だったわ」

「母上、ソフィアは社交界にいる狐や狸とは違います。良い子なんです!」

 王妃様、素直じゃないんだから。

 私はロバートを見た。

「なんで来たの?」

「知らないよ。連れてこられたんだ」

 アンソニーを睨んでいる。

「一緒の方が心強いかと思いまして。ソフィアがナゼア男爵の手に落ちないように、ここなら安全だと思い連れてきました」

 ナゼア男爵か。

「ソフィア、こっちは義姉上のミディアローズ様。俺の兄上の夫人でロバートの姉上なんだ」

「ミディアです。よろしくね」

 ソフィア嬢は私を見て目をうるうるさせている。

「ミディアローズ様、この度は色々ありがとうございます。ミディアローズ様のおかげで何かが変わりそうです」

「ほんとだな。レイチェルが義姉上に相談しなかったら、俺はまだ伯爵家のことも、ナゼア男爵のことも知らないままだった」

「レイチェル、義姉上、ありがとうございます」

 アンソニーが頭を下げた。それを見たソフィア嬢もペコリて頭を下げる。

「まだ早いわよ。まだ全部片付いたわけじゃないのよ」

 王妃様がカツを入れる。

「とりあえずお茶飲んでスイーツを食べなさい。これから起こる事を伝えるわ」

 みんな着席した。

「まず、ランタス伯爵の領地の復興の手助けをするわ。ランドセン侯爵とアーサーに任せることになってるの。費用は王家が貸すから安心してね。今までの借金も貸してあげる。分割で少しづつ返してくれれば良いわ。いま、その辺りの事をリカルドが伯爵に話しに行ってるの。医師も一緒に行ってるわ」

「ありがとうございます。俺はナゼア男爵と話をしなくてはいけないと思っています」

 アンソニーは決意をしたようなしっかりとした顔をしている。

「ナゼア男爵の事はほっときましょう」

「え? 何故ですか?」

「いいのいいの。気にしないで」

 なんだろう? 気にしないでと言われたら気になる。

 ロバートの顔を見たら小さく首を振っている。

 これは突っ込むなと言うことね。

「ソフィアさん、身体は今まで通りランタス伯爵家でいいけど、形だけどこかの養女になってもらうわね。
アンソニーは臣籍降下する予定だから王子妃教育はしなくていいわ。ただ高位貴族令嬢教育はさせてもらうわね。侯爵家以上の令嬢が受けるマナーと貴族の夫人としての色々な事よ。わからない事はミディアやレイチェル嬢に聞けばいいわ。
養女になるのは侯爵家以上だから養母に聞いてもいいしね」

 王妃様、いきなり高位貴族令嬢教育か。ほんとになんでも早いわ。

 まぁ、ソフィア嬢のことが気に入っているみたいでよかった。

 ソフィア嬢が思っていた障害は王妃様からしたらなんでもない事みたいだな。

「あの、王妃様、本当に私などでよろしいのですか? アンソニー様に相応しくないのではないのでしょうか?」

 ソフィア嬢が恐る恐る前に出る。

「相応しくないと思うなら、相応しくなればいいのよ」

 王妃様はそう言ってお茶をひと口飲んだ。

 家の事や男爵のことはリカルド様達が動いてくれているんだろうな。

 ソフィア嬢はしばらく王宮にとどまることになった。

 私とロバートとレイチェルは王宮を後にした。


「ただいま」
「お帰りなさいませ。お疲れ様でした」

 リカルド様が帰ってきた。

「あぁ、ほんとに疲れたよ。でも全部クリアになったからね。ソフィア嬢は多分セレナール家の養女になると思う」

「ルビー姉様の妹ですか?」

「あぁ、義母上の実家だし、母上とも血縁になる。あそこなら問題ないだろう」

「良かったですね。うまく収まって」

「ミディアが旗を振ればみんな頑張って働くさ」

 リカルド様はふっと笑った。

「さぁ、頑張ったご褒美をたんともらおうかな?」

 頑張ったご褒美?

 私はお姫様抱っこをされそのままリカルド様に連れ去られた。






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