魅了が解けた元王太子と結婚させられてしまいました。 なんで私なの!? 勘弁してほしいわ!

金峯蓮華

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番外編

アンソニーの恋7

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 やっぱり待ってるなんて無理だわ。気になって何も手につかない。

 行っちゃおう。いいよね? もう行くよ。行っちゃお。

 移動魔法で王宮に飛ぼう。

 いきなりアンソニーに部屋はまずいから、とりあえず王妃様の部屋の扉の前に移動しよう。

 呪文を唱えてGO!

 私は一応王族だから結界に引っかからないで移動できる。

 移動魔法用のセキュリティシステムもアーサー様が考えた。やっぱりアーサー様はすごいわ。

 私が到着した途端扉が開いた。

「ミディア?」

「リカルド様?」

 開かれた扉からリカルド様が出てきたのでびっくりした。

 リカルド様の後ろにはアーサー様、オーウェン様、宰相様、王妃様がいる。

 アンソニーと話をする前にここで作戦会議だったのね。

「置いて行かれてしまったので追いかけてきました」

 あざとく可愛い笑顔を作るとリカルド様は右手で顔を覆っている。これで叱られることはないな。

「ミディア様、やっぱり来ましたか」

 アーサー様は呆れたような顔で私を見る。やっぱりって何よ。

「じっとしたら死ぬんですか?」

「死なないわよ」

 後ろでオーウェン様が大爆笑している。この人のツボもよくわからない。

「ミディアも一緒にアンソニーのところに行きましょう」

 王妃様はそう言い、リカルド様と私の背中を押した。

 アーサー様と宰相様、オーウェン様は残るのね。


コンコン

「アンソニー、私よ」

 王妃様が声をかける。

 扉が開き、中からアンソニーが顔を出した。

「皆さんお揃いでどうしたのですか?」

 リカルド様が一歩前に出た。

「話したいことがあるんだ。入っていいかな?」

「もちろんです。どうぞ」

 私達はアンソニーの部屋に入った。


 アンソニーの部屋は殺風景な部屋だった。必要最低限のものしかない。

 私達は勧められたソファーに座った。

 最初に口を開いたのは王妃様だった。

「あなたナゼア男爵って知ってる?」

「名前だけは。私のような社交に出ない者の耳にも良い評判は入ってきません。ナゼア男爵が何か?」

「没落しそうな貴族の令嬢を狙ってお金の力で妻や愛妾にして、飽きたら人買いに売っているらしいの。人身売買やイカサマ賭博などもしてるみたいなんだけど、なかなか尻尾が掴めないのよ。泣く泣く娘を手放したのに、まさか売られているなんてと怒っているのだけど、借金の為に娘を後妻や愛妾に出したなんてバレたら家の恥になるからみんな泣き寝入りしているのよ」

「それを調べていて、今ナゼア男爵が狙っているのがランタス家の令嬢だとわかったんだ」

「ランタス家の?」

王妃様とリカルド様の言葉にアンソニーは驚いた顔をしている。本当に何も知らないのか?

「ランタス家の令嬢はお前の思い人なんだろう?」

「はい。ソフィアは俺の大事な人です」

「大事な人だと言うわりには、ランタス令嬢の家が娘をナゼア男爵に売らなきゃいけないほど切迫してると知らなかったのか?」

 リカルド様の言葉にアンソニーは真っ青になっている。

「そんな。ソフィアは何も……」

「あなたに迷惑をかけるからと黙っていたらしいの。自分は伯爵とは名ばかりの持参金も嫁入り道具も出せないような家の娘、アンソニーとは釣り合わないって身を引くつもりだったらしいわ。そして家のために犠牲になるって」

 私がそう言うと、アンソニーは慌てて立ち上がり部屋を飛び出そうした。

「待て!」

 リカルド様に腕を掴まれた。

「兄上、行かせてください。ソフィアが、ソフィアが……」

 本当に大事な人なのだな。

「大丈夫だ。ナゼア男爵の犠牲にはしない。落ち着け」

 リカルド様にソファーに押し戻された。

「ソフィアの家が没落しかけているのは知っていました。でも、そんなに借金で苦しんでいたとは知りませんでした。ソフィアは何も言ってくれなかった。俺では頼りにならないからか……」

 アンソニーは項垂れている。

「それは違うわ。あなたのことが好きだから迷惑をかけたくなかったのよ。お金のことを言えばあなたはお金を作ろうとするでしょう。あなたの負担になりたくなかったのよ」

「でも……」

「ランタス伯爵家はうちの領地と同じなんだ。災害で壊滅的した。うちは元の領主が切り捨てたけど、ランタス伯爵は領地の復興のために領民と一緒に頑張った。でも、海に面したランタス領は地盤が緩く、なかなかうまくいかず、土木の事に全く素人だった伯爵は騙されて借金を背負う事になったそうだ。今は病に伏せっている。そこにナゼア男爵が目をつけたのだろう」

「以前臣籍降下したい、王太子にはならないと言っていたのはこれが原因?」

 リカルド様に続いて王妃様がアンソニー様に迫る。

「元々俺は王太子なんて器じゃない。騎士になって王太子と違う立場で国を守ろうと思っていました。そんな時ソフィアと出会った。伯爵令嬢だし、特に問題はないと思っていたのに、ソフィアは身分が違うだのみ住む世界が違うと言い俺から離れようとしていた。まさか家の為に犠牲になろうとしていたなんて」

「それでどうしたいの? そのソフィア嬢とどうなりたいの?」

私は我慢できず前に出てしまった。

「つ、妻にしたいと思っています」

 よっしゃー! 

 私は心の中でガッツポーズをした。
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