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番外編
アンソニーの恋1
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*ジェットが時を巻き戻してしまいました。アンソニーはまだ王立学園の学生です。まだジェットが産まれる前のお話です*
「義姉上、おじゃましてます」
「また鍛錬?」
「はい」
「ねぇ、アンソニー、本当に王太子にならないの?」
アンソニーは王太子にはなりたくないと言っている。
しかし、リカルド様、クリストファー様、ウィリアム殿下が王太子にはならないのだからアンソニーしかいないのだけれど、頑なに嫌だという。
それに私に殿下と呼ぶなと言う。殿下という立場を拒否しているようだ。
「私は卒業したら騎士団に入団し、武功をあげ、騎士爵をもらうつもりです。だから兄上に鍛えてもらっているのです」
アンソニーは脳筋だが、頭が悪いわけではない。朗らかで人当たりもいいし。次期国王になってもおかしくはない。
「私はアンソニーが次期国王もいいと思うけどなぁ」
「嫌ですよ。兄上がなるのがいいと思いますよ」
「リカルド様は嫌がってるしね」
この話題はどこまで行っても堂々巡りだ。
アンソニーは朝食を食べ、学園に向かった。
アンソニーを見送った後、鍛錬を終え、湯浴みをしてきたリカルド様と朝食をとる。
「ミディア、今日はレイチェル嬢が来るんだろ?」
「はい。相談があると言われて」
「ロバートは来ないの?」
「ええ、ロバートのことは聞いて無いです」
「そうか、ロバート抜きで話したいことがあるんだろうか? 何か困ったことがあったら力になるよ」
「ありがとうございます」
リカルド様はそう言ってくれるが、ロバートとは仲が良さそうだし、レイチェルの相談とはなんだろう?
私はその日の午後、移動魔法でレイチェルが現れた。
「ミディアお義姉様、おいそがしいのにご無理を言ってすみません」
レイチェルは困り顔をしていた。
「何か困ったことがあるの? ロバートのこと?」
「ロバート様のことではないのてす。でもロバート様にはまだ話していないことです」
とりあえずレイチェルにソファーをすすめ、メアリーにお茶を淹れてもらった。
レイチェルは私に話すかどうかもまだ迷っているようだ。
「レイチェル、このお茶、うちの領地で栽培しているお茶なの」
「はい」
ひと口飲んでレイチェルはぱあっと笑顔になった。
「美味しいです」
「でしょう。話してみる? 迷っているなら話さなくてお茶飲んでお菓子食べるだけでもいいわよ」
私はクッキーをパクリと食べた。
それを見て気持ちが緩んだようだ。レイチェルは肩で大きく息をして、私の顔を見た。
「ミディアお姉様、助けてください」
助けて? いったいどうしたんだろう。
私はレイチェルの震える指をじっと見ていた。
「義姉上、おじゃましてます」
「また鍛錬?」
「はい」
「ねぇ、アンソニー、本当に王太子にならないの?」
アンソニーは王太子にはなりたくないと言っている。
しかし、リカルド様、クリストファー様、ウィリアム殿下が王太子にはならないのだからアンソニーしかいないのだけれど、頑なに嫌だという。
それに私に殿下と呼ぶなと言う。殿下という立場を拒否しているようだ。
「私は卒業したら騎士団に入団し、武功をあげ、騎士爵をもらうつもりです。だから兄上に鍛えてもらっているのです」
アンソニーは脳筋だが、頭が悪いわけではない。朗らかで人当たりもいいし。次期国王になってもおかしくはない。
「私はアンソニーが次期国王もいいと思うけどなぁ」
「嫌ですよ。兄上がなるのがいいと思いますよ」
「リカルド様は嫌がってるしね」
この話題はどこまで行っても堂々巡りだ。
アンソニーは朝食を食べ、学園に向かった。
アンソニーを見送った後、鍛錬を終え、湯浴みをしてきたリカルド様と朝食をとる。
「ミディア、今日はレイチェル嬢が来るんだろ?」
「はい。相談があると言われて」
「ロバートは来ないの?」
「ええ、ロバートのことは聞いて無いです」
「そうか、ロバート抜きで話したいことがあるんだろうか? 何か困ったことがあったら力になるよ」
「ありがとうございます」
リカルド様はそう言ってくれるが、ロバートとは仲が良さそうだし、レイチェルの相談とはなんだろう?
私はその日の午後、移動魔法でレイチェルが現れた。
「ミディアお義姉様、おいそがしいのにご無理を言ってすみません」
レイチェルは困り顔をしていた。
「何か困ったことがあるの? ロバートのこと?」
「ロバート様のことではないのてす。でもロバート様にはまだ話していないことです」
とりあえずレイチェルにソファーをすすめ、メアリーにお茶を淹れてもらった。
レイチェルは私に話すかどうかもまだ迷っているようだ。
「レイチェル、このお茶、うちの領地で栽培しているお茶なの」
「はい」
ひと口飲んでレイチェルはぱあっと笑顔になった。
「美味しいです」
「でしょう。話してみる? 迷っているなら話さなくてお茶飲んでお菓子食べるだけでもいいわよ」
私はクッキーをパクリと食べた。
それを見て気持ちが緩んだようだ。レイチェルは肩で大きく息をして、私の顔を見た。
「ミディアお姉様、助けてください」
助けて? いったいどうしたんだろう。
私はレイチェルの震える指をじっと見ていた。
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