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番外編
なぜ?(シャルレス視点)
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朝食を食べ、出掛ける用意をしていたら、ママに声をかけられた。
「ねぇ、シャル。あなたリリの事好きなんでしょ?」
ママは何を言ってるんだ?
私がリリみたいな胡散臭い女を好きな訳がない。
「好きじゃないですよ。何を言ってるんですか?」
「照れなくてもいいじゃない。私はリリならいいと思うわ」
「だから違うと言っているではないですか! 怒りますよ!」
イライラして口調が強くなってしまった。
「あらあら、怖いわね。痛いところをつかれたからって、そんなにくってかからなくてもいいじゃない」
「とにかく、私はあんな女好きじゃありませんので勘違いして変なことをしないでくださいね」
「変なことって何よ?」
「変なことは変なことです。わかりましたね」
ママは強く釘を差して置かないと何をするかわからない。
「わからないわよ~。ふふふふふ」
ママが笑いながら部屋を出て行ったので、私は移動魔法で城の仕事場に向かった。
私はまだ子供の年齢だが、文官の仕事をしている。前世で官僚として中央省庁で働いていた時の記憶があるし、一応国立大学出身なので勉強はできる。この国の勉強は前世で生きていた頃の日本に比べるとそこまで難しくはないようだった。
リュカ兄上もジェット兄上も入学してすぐに飛び級で卒業した。リーゼはどうするか知らないが、私も入学したらすぐ飛び級で卒業するつもりだ。
今の仕事が忙しすぎて学校どころじゃない。本当はせっかくこんな容姿に生まれ変わったのだから、学園に通いモテたい気持ちもあるが、神様と身を粉にして働くと約束したのでとりあえず働くしかない。
大ばぁばとリュカ兄上、それにママは人使いが荒い。でも前世に比べだら幸せだよな。
今日はオーウェンのおっさんと約束がある。おっさんの部屋のドアをノックし、中に入る。
中にはおっさんとあの女がいた。
なんでこんなところにいるんだ。
「よぉ、シャルレス。待ってたぞ」
私が怪訝な顔をしているとおっさんは面白そうに笑った。
「こいつがいるのが気になるのか」
そりゃ気になるだろう。
「お父様、この方は私のことがお嫌いなようなのです」
「ほぅ、嫌われているのか?」
「はい。ヴィーナに会いに行くと、いつも睨みます」
「それは好きの裏返しではないのか?」
おっさんはいやらしそうに笑う。
「嫌いというわけではありません。ヴィーナやフィオナをたらし込んで何かしようと企んでいるのではないかと見張っていたのです」
あっ、正直に言ってしまった。
「ふふふ、だめね。それじゃあドラールでは生きていけないわよ」
ドラールで生きていけないってどういうことだ? 私はドラールで生きるつもりなど無い。
「まぁ、私は所用で1時間ほど席を外す、その間2人で待っていてくれ。じゃあな」
おっさんはひらふらと手を振りながら出ていった。
王家のメイドがお茶を入れていった。
とうとうふたりになってしまった。
1時間もこいつと2人で何を話すんだ。
どうしてうちに入り込んだのか吐かせるか?
「あなた、田村祐一でしょ?」
えっ? 何故だ? 何故それを知っているんだ。
冷や汗がたらりと流れた。
「ねぇ、シャル。あなたリリの事好きなんでしょ?」
ママは何を言ってるんだ?
私がリリみたいな胡散臭い女を好きな訳がない。
「好きじゃないですよ。何を言ってるんですか?」
「照れなくてもいいじゃない。私はリリならいいと思うわ」
「だから違うと言っているではないですか! 怒りますよ!」
イライラして口調が強くなってしまった。
「あらあら、怖いわね。痛いところをつかれたからって、そんなにくってかからなくてもいいじゃない」
「とにかく、私はあんな女好きじゃありませんので勘違いして変なことをしないでくださいね」
「変なことって何よ?」
「変なことは変なことです。わかりましたね」
ママは強く釘を差して置かないと何をするかわからない。
「わからないわよ~。ふふふふふ」
ママが笑いながら部屋を出て行ったので、私は移動魔法で城の仕事場に向かった。
私はまだ子供の年齢だが、文官の仕事をしている。前世で官僚として中央省庁で働いていた時の記憶があるし、一応国立大学出身なので勉強はできる。この国の勉強は前世で生きていた頃の日本に比べるとそこまで難しくはないようだった。
リュカ兄上もジェット兄上も入学してすぐに飛び級で卒業した。リーゼはどうするか知らないが、私も入学したらすぐ飛び級で卒業するつもりだ。
今の仕事が忙しすぎて学校どころじゃない。本当はせっかくこんな容姿に生まれ変わったのだから、学園に通いモテたい気持ちもあるが、神様と身を粉にして働くと約束したのでとりあえず働くしかない。
大ばぁばとリュカ兄上、それにママは人使いが荒い。でも前世に比べだら幸せだよな。
今日はオーウェンのおっさんと約束がある。おっさんの部屋のドアをノックし、中に入る。
中にはおっさんとあの女がいた。
なんでこんなところにいるんだ。
「よぉ、シャルレス。待ってたぞ」
私が怪訝な顔をしているとおっさんは面白そうに笑った。
「こいつがいるのが気になるのか」
そりゃ気になるだろう。
「お父様、この方は私のことがお嫌いなようなのです」
「ほぅ、嫌われているのか?」
「はい。ヴィーナに会いに行くと、いつも睨みます」
「それは好きの裏返しではないのか?」
おっさんはいやらしそうに笑う。
「嫌いというわけではありません。ヴィーナやフィオナをたらし込んで何かしようと企んでいるのではないかと見張っていたのです」
あっ、正直に言ってしまった。
「ふふふ、だめね。それじゃあドラールでは生きていけないわよ」
ドラールで生きていけないってどういうことだ? 私はドラールで生きるつもりなど無い。
「まぁ、私は所用で1時間ほど席を外す、その間2人で待っていてくれ。じゃあな」
おっさんはひらふらと手を振りながら出ていった。
王家のメイドがお茶を入れていった。
とうとうふたりになってしまった。
1時間もこいつと2人で何を話すんだ。
どうしてうちに入り込んだのか吐かせるか?
「あなた、田村祐一でしょ?」
えっ? 何故だ? 何故それを知っているんだ。
冷や汗がたらりと流れた。
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