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番外編

驚いた

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 戴冠式が終わり、夜会までの間の時間、私達はオクタヴィア様に呼ばれ、プライベートな空間に入った。

 ここに呼ばれたということは私的な話なのだろう。

「何の話なのでしょうね?」 

 私は隣でソファーに座っているリカルド様に声をかけた。

「そうだなぁ。プライベートスペースに通されたということは私的な話なんだろうがなんだろうな」

 リカルド様にもわからないようだ。

「縁談とか?」

「縁談? 王女のか?」

 エスタゾラム王国の王配は代々他国から婿入りしている。

 オクタヴィア様がノルスバン王国からだったから2代続いて我が国からはないだろう。

「お待たせしてごめんなさいね」

「いえ、お気遣いなく」

 私達は立ち上がり礼をした、

「楽にしてちょうだい」

 オクタヴィア様がソファーをすすめてくれたので、私達は座った。

「おふたりに来てもらったのはね。ウィリアムのことなんだ」

 ウィリアム殿下? 

 オクタヴィア様は話を続ける。

「ウィリアムが軟禁されていたのは知ってる?」

「はい。薄々は。噂程度にしか存じませんが」

 オクタヴィア様は大きなため息をつく。

「実は、ウィリアムを軟禁していたのは私の妹なんだ」

 そう言って頭を抱えた。

「事情を聞かせてもらっても?」

 リカルド様がオクタヴィア様に聞く。

「あぁ、妹はジェニナック王国の公爵家に嫁いだのだけれど、もちろん政略結婚で年も親子ほどはなれていたので愛はなかったんだ。そんな時ウィリアムと知り合って恋に落ちた。妹は生まれて初めての恋でおかしくなってしまったらしい。でも、ウィリアムはノルスバン王国が情報収集のために放った諜報員だとわかって彼を軟禁した。愛しているのに憎かった。最近、公爵が亡くなって、嫡男が家を継いだ。そこで新公爵になった甥から引き取ってもらえないかと相談が来たんだ」

 えらい話が突然来た。リカルド様は難しい顔をしている。

「今はどちらに?」

「まだ、ジェニナック王国にいる」

 「ウィリアムはどう言ってるんですか?」

「それが……」

 オクタヴィア様は口が重い。

「甥の話では薬漬けになっていて正気ではないらしい」

「媚薬ですか?」

 媚薬?

 リカルド様は腕組みをした。

「ウィリアムを我が国に引き取ってほしいということですか?」

「うん。妹はうちで引き取るつもりなのだが、甥は実家に戻る途中で事故に遭い亡くなった事にしたいみたいなんだ」

「暗殺ですか?」

「戸籍上はね。実際には生かしておきたいそうだ」

 何か、大人の事情があるのかもしれない。

 ウィリアム殿下の名前、久しぶりに聞いたな。

「少し時間をもらえないでしょうか」

 リカルド様はオクタヴィア様にそう告げた。
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