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マティ
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先に意識が戻ったのは弟のマティーアス殿下の方だった。
「ここは?」
「ここはノルスバン王国のフェノバール領です。私の祖母が国境近くの森であなたを見つけました。今日からここがあなたの家です」
リカルド様が片膝をつき、マティーマス殿下の目の高さに合わせて話をする。
「森? あっ、みんなは?」
リカルド様は無言で首を振った。
マティーアス様は俯いて唇を噛んでいる。
急に顔を上げた。
「姉上、姉上を助けて下さい。姉上を、姉上を」
涙で顔がぐしゃぐしゃになっている。
「殿下、大丈夫ですよ。あなたの姉上は保護しています。今は眠っていますが会われますか?」
リカルド様の言葉にマティーアス様は頷いた。
リカルド様は失礼しますと言って、殿下を抱き上げた。そして殿下の姉のいる隣の部屋へと連れていった。
「姉上……よかった……」
そう言うと殿下はその場にへたり込んだ。
安心して力が抜けてしまったのだろう。
メアリーに温かいココアを入れてもらった。
「殿下どうぞ」
私が勧めると殿下は少し晴れやかな顔をした。
「ボクは殿下ではありません。ボクの本当の父上は国王の弟だと母上が教えてくれました。ボクの父上が殺されて王宮に連れて来られた時、ボクはまだ生まれたばかりだったので国王の第5王子だということにされたようですが、国王は父上などではなく父上と母上を殺した敵です。母上はボクの目の前であいつに殺されました。ボクは何もできなかった。ボクは敵を討ちたいです!」
「敵討ちは無理だ」
リュカが首を振る。
「なぜですか! ボクがまだ子供だからですか!」
マティーアス様は泣きながらリュカにしがみつく。
「もういないんだよ。あの国の王族も高位貴族もみんな殺されたんだ」
リュカはマティーアス様の頭を撫でている。
「生きているのはお前と姉上だけだ。国を取り戻すなら手を貸すがどうする?」
へ? 国を取り戻す?
手を貸す?
リュカ、何小説みたいなこと言ってるの?
私はリカルド様の顔を見た。
「ミディア、ちょっとおいで」
リカルド様は私の腕を引っ張り、部屋から出た。
「ここはリュカに任そう。あの国は多分、レキサルティ王国に吸収されるだろう。革命を起こした首謀者には国をおさめる力量はないようだ。もし、マティーアスが王になりたいというのなら我が国が後ろ盾となり、国を存続させるとおばあ様とレキサルティ国王の間で話はついている」
そうなのか。私は全く知らなかった。
「マティーアス様はどう答えるでしょうね」
「あの子は王になどなりたくないと思うよ。ただ静かに平和に暮らしたいんじゃないかな。あのふたり、養子にしてもいいと思っている。7人兄弟も悪くないだろう?」
リカルド様は微笑む。
7児の母か。楽しくていいかもしれない。
部屋に戻るとマティーアス様の隣にはクマさんを抱えたフィオナがいた。
「おーじしゃまは、ふぃおながまもりゅよ。クマしゃんもいりゅ」
フィオナはマティーアスさまのことが気に入っているようだ。
「マティーアスは国なんかいらないそうだ」
リュカが微笑む。
「ご挨拶が遅くなりすみません。ボクはマティーアス・コンスタンです。マティとお呼びください。コンスタンは実の父の家名です。モディオダールの名はいりません」
「私はリカルド・フェノバール。この家の当主だ。妻のミディアローズ、これは嫡男のリュカ、そっちは次男のジェットだ。となりにくっついているのは末っ子のフィオナだ。今ここにはいないがあとふたりいる。これからはマティはここで暮らすことになる。よろしく頼む」
「姉上は?」
マティは不安な顔をする。
「大丈夫よ。もちろんふたり一緒よ。」
私はそう言ってマティをぎゅっと抱きしめた。
「もうひとりで頑張らなくていいのよ。あなたには私たちがついてる。私たちは何があってもあなたの味方よ。よく頑張ったね。本当にもう頑張らなくていいのよ」
マティは私にしがみついてワーワー泣き出した。泣けて良かった。今まではきっと泣くこともできなかったのだろう。
フィオナが背伸びしてマティの頭をいい子いい子している。
平和なフェノバール領でこの子たちを幸せにしたい。
「ママ、鼻水出てるよ」
ジェットから手渡されたタオルで思いっきり鼻をかんだ。
「ここは?」
「ここはノルスバン王国のフェノバール領です。私の祖母が国境近くの森であなたを見つけました。今日からここがあなたの家です」
リカルド様が片膝をつき、マティーマス殿下の目の高さに合わせて話をする。
「森? あっ、みんなは?」
リカルド様は無言で首を振った。
マティーアス様は俯いて唇を噛んでいる。
急に顔を上げた。
「姉上、姉上を助けて下さい。姉上を、姉上を」
涙で顔がぐしゃぐしゃになっている。
「殿下、大丈夫ですよ。あなたの姉上は保護しています。今は眠っていますが会われますか?」
リカルド様の言葉にマティーアス様は頷いた。
リカルド様は失礼しますと言って、殿下を抱き上げた。そして殿下の姉のいる隣の部屋へと連れていった。
「姉上……よかった……」
そう言うと殿下はその場にへたり込んだ。
安心して力が抜けてしまったのだろう。
メアリーに温かいココアを入れてもらった。
「殿下どうぞ」
私が勧めると殿下は少し晴れやかな顔をした。
「ボクは殿下ではありません。ボクの本当の父上は国王の弟だと母上が教えてくれました。ボクの父上が殺されて王宮に連れて来られた時、ボクはまだ生まれたばかりだったので国王の第5王子だということにされたようですが、国王は父上などではなく父上と母上を殺した敵です。母上はボクの目の前であいつに殺されました。ボクは何もできなかった。ボクは敵を討ちたいです!」
「敵討ちは無理だ」
リュカが首を振る。
「なぜですか! ボクがまだ子供だからですか!」
マティーアス様は泣きながらリュカにしがみつく。
「もういないんだよ。あの国の王族も高位貴族もみんな殺されたんだ」
リュカはマティーアス様の頭を撫でている。
「生きているのはお前と姉上だけだ。国を取り戻すなら手を貸すがどうする?」
へ? 国を取り戻す?
手を貸す?
リュカ、何小説みたいなこと言ってるの?
私はリカルド様の顔を見た。
「ミディア、ちょっとおいで」
リカルド様は私の腕を引っ張り、部屋から出た。
「ここはリュカに任そう。あの国は多分、レキサルティ王国に吸収されるだろう。革命を起こした首謀者には国をおさめる力量はないようだ。もし、マティーアスが王になりたいというのなら我が国が後ろ盾となり、国を存続させるとおばあ様とレキサルティ国王の間で話はついている」
そうなのか。私は全く知らなかった。
「マティーアス様はどう答えるでしょうね」
「あの子は王になどなりたくないと思うよ。ただ静かに平和に暮らしたいんじゃないかな。あのふたり、養子にしてもいいと思っている。7人兄弟も悪くないだろう?」
リカルド様は微笑む。
7児の母か。楽しくていいかもしれない。
部屋に戻るとマティーアス様の隣にはクマさんを抱えたフィオナがいた。
「おーじしゃまは、ふぃおながまもりゅよ。クマしゃんもいりゅ」
フィオナはマティーアスさまのことが気に入っているようだ。
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「ご挨拶が遅くなりすみません。ボクはマティーアス・コンスタンです。マティとお呼びください。コンスタンは実の父の家名です。モディオダールの名はいりません」
「私はリカルド・フェノバール。この家の当主だ。妻のミディアローズ、これは嫡男のリュカ、そっちは次男のジェットだ。となりにくっついているのは末っ子のフィオナだ。今ここにはいないがあとふたりいる。これからはマティはここで暮らすことになる。よろしく頼む」
「姉上は?」
マティは不安な顔をする。
「大丈夫よ。もちろんふたり一緒よ。」
私はそう言ってマティをぎゅっと抱きしめた。
「もうひとりで頑張らなくていいのよ。あなたには私たちがついてる。私たちは何があってもあなたの味方よ。よく頑張ったね。本当にもう頑張らなくていいのよ」
マティは私にしがみついてワーワー泣き出した。泣けて良かった。今まではきっと泣くこともできなかったのだろう。
フィオナが背伸びしてマティの頭をいい子いい子している。
平和なフェノバール領でこの子たちを幸せにしたい。
「ママ、鼻水出てるよ」
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