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保護
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王宮でおばあ様に保険制度の原案を見せ、少し修正して、フェノバール領から試験的にやってみようということになった。
シャルとふたりで頑張ってやってきたので嬉しい。
「ミディア、話は変わるけど、フェノバール領で預かってほしい子がいるの」
おばあ様が突然そんなことを言う。
「いいですけど、どういう?」
「今朝、北の辺境地に行った時に保護してきたんだけど、多分モディオダール国から逃げてきたんじゃ無いかと思うの。周りに警護みたいな者たちはみんなもうこと切れていてね。虫の息だった子を連れて帰ってきて、ちょうどいた、ジェットに回復魔法をかけてもらっているの」
「ジェットが役に立ったのですね」
「そうよ。王宮の魔法医師に見てもらっていたのだけど、ちょうど来たからね」
モディオダール国か。ずっと内戦状態が続いていて、最近、革命が起きたばかりだ。我が国の北の辺境地に隣接しているので、戦火に巻き込まれないように気をつけていて、おばあ様が時々様子を見に行っている。
見つけた時。、その子は国境近くの森の中で瀕死の重傷を負っていたそうだ。
おばあ様はすでに亡くなっていると思い、弔おうと側に寄るとまだ息があったので慌てて連れ帰ってきたらしい。
「周りには誰かわからない者を連れ帰るのは危険だと言われたんだけど、子供だし、なんだか連れて帰らなきゃならない気がしたのよ」
おばあ様はふふふと笑う。
私はおばあ様に促され、治療しているその子に会いに行った。
「ミディア、来たのか。もう大丈夫だそうだ」
「ママ、おにいちゃ、だいじょうぶよ。ふぃおな、クマさんといいこいいこしたの」
何故かフィオナもドヤ顔をしている。
「フィオナも回復魔法が使えるもんな。頑張ったよ。えらいえらい」
リカルド様に頭を撫でられている。
私もフィオナをぎゅっと抱きしめて「頑張ったね。えらいわ」と褒める。
「頑張ったのはボクなんですけどね」
ジェットが拗ねているので、ジェットも抱きしめて褒める。
「酷い状態でしたよ。おばあ様が見つけてよかった。危ないところでしたが、峠は越えました。あとは心がかなり痛んでいるようなのでゆっくり回復魔法をかけながら愛情たっぷりをたっぷり与えることですね」
愛情か
「愛情を与えるのはミディアが得意でしょ。だからしばらくフェノバール領で保護してほしいの。今、身元を調べてるわ」
おばあ様、私は得意というわけではないけど……。
「うちは安全だし、フィオナも気になっているみたいなんだ。ずっと手を離さない」
リカルド様の言葉にフィオナを見ると確かにその子の指を握っている。
「フィオナ、このおにいさん、うちに連れて帰る?」
「うん。いっちょにかえりゅ。おうじしゃまだよ」
おうじしゃま? 王子様か?
「王子様って、モディオダール国の王子様かしら?」
「調べてみるよ」
リカルド様は消えた。
モディオダール国の王家は確かこの間起きた革命でみんな殺されたんじゃなかったかしら?
とにかくおばあ様に言われるがままその子を連れて帰った。
屋敷に戻り、客間の寝台に寝かせた。念のためチャーリー先生にも来てもらった。
「大丈夫だ。さすが、ジェットだな。内臓の傷も無くなってるし出血も止まってる。それにしてもこんな小さな子供相手にここまで傷付けるなんて人間じゃない。許せない」
チャーリー先生は怒りで血管が切れそうだ。
「……あ…え…た……け」
寝台に横たわっているその子はうわ言のように何かを言っている。
「リュカを呼んで来て!」
私はメアリーにリュカを呼んでくるように頼んだ。
「何かわかった?」
横たわる子供の頭に掌を当てていたリュカが難しい顔をしている。
「こいつは多分モディオダール王国の生き残りだな。革命が起きた時に親たちと違う場所にいて殺されなかったみたいだ」
やはり王子様だったのか。
「あ…ねう…を…たす…て」
ん? 姉上を助けてと言っているのかしら?
私はリュカを見た。
「姉上か……」
リュカは小さくつぶやいている。
「ミディア、分かったぞ」
リカルド様が戻ってきた。
「モディオダール王家の生き残りだ。多分この子は末のマティーアス殿下だと思う。まだ6歳だ。革命が起きた時刻は王妃殿下のご実家にいたらしい。そのまま逃げたが見つかり死亡したと公表されている」
「姉上とは? この子姉上を助けてとうわ言で言ってるの」
「姉上? モディオダール国には姫はいないと思うが……」
リカルド様は首を傾げた。
「いる!」
ずっと何かを考えていたようなリュカが突然叫び消えた。
それにしてもうちの家族はよく消える。
*消えるとは移動魔法で移動したということです。移動魔法を使うと身体が粒子のようになり消えます。
シャルとふたりで頑張ってやってきたので嬉しい。
「ミディア、話は変わるけど、フェノバール領で預かってほしい子がいるの」
おばあ様が突然そんなことを言う。
「いいですけど、どういう?」
「今朝、北の辺境地に行った時に保護してきたんだけど、多分モディオダール国から逃げてきたんじゃ無いかと思うの。周りに警護みたいな者たちはみんなもうこと切れていてね。虫の息だった子を連れて帰ってきて、ちょうどいた、ジェットに回復魔法をかけてもらっているの」
「ジェットが役に立ったのですね」
「そうよ。王宮の魔法医師に見てもらっていたのだけど、ちょうど来たからね」
モディオダール国か。ずっと内戦状態が続いていて、最近、革命が起きたばかりだ。我が国の北の辺境地に隣接しているので、戦火に巻き込まれないように気をつけていて、おばあ様が時々様子を見に行っている。
見つけた時。、その子は国境近くの森の中で瀕死の重傷を負っていたそうだ。
おばあ様はすでに亡くなっていると思い、弔おうと側に寄るとまだ息があったので慌てて連れ帰ってきたらしい。
「周りには誰かわからない者を連れ帰るのは危険だと言われたんだけど、子供だし、なんだか連れて帰らなきゃならない気がしたのよ」
おばあ様はふふふと笑う。
私はおばあ様に促され、治療しているその子に会いに行った。
「ミディア、来たのか。もう大丈夫だそうだ」
「ママ、おにいちゃ、だいじょうぶよ。ふぃおな、クマさんといいこいいこしたの」
何故かフィオナもドヤ顔をしている。
「フィオナも回復魔法が使えるもんな。頑張ったよ。えらいえらい」
リカルド様に頭を撫でられている。
私もフィオナをぎゅっと抱きしめて「頑張ったね。えらいわ」と褒める。
「頑張ったのはボクなんですけどね」
ジェットが拗ねているので、ジェットも抱きしめて褒める。
「酷い状態でしたよ。おばあ様が見つけてよかった。危ないところでしたが、峠は越えました。あとは心がかなり痛んでいるようなのでゆっくり回復魔法をかけながら愛情たっぷりをたっぷり与えることですね」
愛情か
「愛情を与えるのはミディアが得意でしょ。だからしばらくフェノバール領で保護してほしいの。今、身元を調べてるわ」
おばあ様、私は得意というわけではないけど……。
「うちは安全だし、フィオナも気になっているみたいなんだ。ずっと手を離さない」
リカルド様の言葉にフィオナを見ると確かにその子の指を握っている。
「フィオナ、このおにいさん、うちに連れて帰る?」
「うん。いっちょにかえりゅ。おうじしゃまだよ」
おうじしゃま? 王子様か?
「王子様って、モディオダール国の王子様かしら?」
「調べてみるよ」
リカルド様は消えた。
モディオダール国の王家は確かこの間起きた革命でみんな殺されたんじゃなかったかしら?
とにかくおばあ様に言われるがままその子を連れて帰った。
屋敷に戻り、客間の寝台に寝かせた。念のためチャーリー先生にも来てもらった。
「大丈夫だ。さすが、ジェットだな。内臓の傷も無くなってるし出血も止まってる。それにしてもこんな小さな子供相手にここまで傷付けるなんて人間じゃない。許せない」
チャーリー先生は怒りで血管が切れそうだ。
「……あ…え…た……け」
寝台に横たわっているその子はうわ言のように何かを言っている。
「リュカを呼んで来て!」
私はメアリーにリュカを呼んでくるように頼んだ。
「何かわかった?」
横たわる子供の頭に掌を当てていたリュカが難しい顔をしている。
「こいつは多分モディオダール王国の生き残りだな。革命が起きた時に親たちと違う場所にいて殺されなかったみたいだ」
やはり王子様だったのか。
「あ…ねう…を…たす…て」
ん? 姉上を助けてと言っているのかしら?
私はリュカを見た。
「姉上か……」
リュカは小さくつぶやいている。
「ミディア、分かったぞ」
リカルド様が戻ってきた。
「モディオダール王家の生き残りだ。多分この子は末のマティーアス殿下だと思う。まだ6歳だ。革命が起きた時刻は王妃殿下のご実家にいたらしい。そのまま逃げたが見つかり死亡したと公表されている」
「姉上とは? この子姉上を助けてとうわ言で言ってるの」
「姉上? モディオダール国には姫はいないと思うが……」
リカルド様は首を傾げた。
「いる!」
ずっと何かを考えていたようなリュカが突然叫び消えた。
それにしてもうちの家族はよく消える。
*消えるとは移動魔法で移動したということです。移動魔法を使うと身体が粒子のようになり消えます。
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