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なんだこいつ(エリアス視点)
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なんだこいつ?
父上からリーゼロッテを守れと言われた。
「それは任務でしょうか?」
「任務でもあるが任務ではないかもしれんな」
父上は何を言っているんだ?
俺は修行が終わり、ドラール家嫡男として認められた。
ドラール家はこの国の暗部を担う家だ。いくら嫡男だとしてもチカラがなければ消される。消されない為には強くなるしか無い。
俺は死に物狂いで修行に励んだ。
次期当主になるための修正は他の者たちとは全く違う。この世の生き地獄のような日々だった。
認められた時はこれでようやく人間に戻れると感極まったほどだ。
それがこの女を守るのが俺の任務だと。
王家に繋がる公爵家の令嬢。そんな者の護衛なんて俺じゃなくてもいいだろう。
「ハニートラップですか? 誘惑して、弱みを握れと?」
「いや、そんなことはしなくていい。一緒にいて好きになれば娶るのもありだ」
なんだそれ。
「とにかく行くわよ。早く用意をしなさい」
母上は俺をどこかに連れて行こうとしているようだ。
俺は母上に言われるまま用意された正装に着替えさせられて、馬車に押し込まれた。
「どこに行くのですか?」
「お茶会よ。リーゼと顔合わせしてもらう。これは任務であって任務でないわ。だから、仮のあなたでいることはないの。誘惑しなくてもいい。とにかく素のあなたでリーゼの側にいて守ればいいの。どうしても合わなければその役目は誰かに替わる。それだけ」
母上はそう言うと嘘くさい顔でわらった。
はじめて会ったリーゼロッテ・フェノバールは金髪に紫の瞳をした美人だった。一緒にいた母親は黒髪、瞳は同じ紫だが顔は似ていない。どちらかと言うと可愛い感じだ。リーゼロッテはきっと父親似なのだろう。
いきなり俺に薔薇を見せたいと言う。俺を気に入ったのか?
自分で言うのもなんだが俺は両親に似て見た目はそれなりに良いと思う。ハニートラップをかける訓練も受けているので第一印象で引きつけるのは得意だ。
きっとリーゼロッテも落ちたなと思っていたのに全くの勘違いだった。
「ねぇ、エリアス様、あなた強いんでしょう? 私と手合わせしない?」
「手合わせ?」
「剣でもいいし、素手でもいいわ。強い人と手合わせしたいの」
こいつ何を言っているんだ? 俺は訳がわからなくなった。
「君は公爵令嬢じゃないのか?」
「公爵令嬢よ。私の事何も知らないの?」
「俺は父上から君を守れと言われただけだ」
被っていた猫はいつのまにか消えていた。
俺はつい任務内容を告げてしまった。
「私は別に守ってもらわなくても大丈夫なのよ。私強いから」
「強い?」
「そう私は強いの」
何だかわからないがこいつは自分が強いと思っているらしい。これは鼻っ柱を折ってやるしかない。
「わかった。剣で手合わせをしよう。ここではなんだからどこかに移動しよう」
俺は手合わせん承諾した。
「ええ、騎士団の練習場に移動しましょう」
俺たちは移動魔法で騎士団の練習場に飛んだ。
騎士団の練習場には近衛騎士団長がいた。
王子を辞めて騎士をしている変な男だが腕は立つ。何度か手合わせをしたことがある。
なぜか俺に初対面のような挨拶をする。リーゼロッテに面識があると思われてはまずいのか?
俺もはじめてのふりをした。
リーゼロッテが着替えている間に俺は剣を選ぶことになった。
騎士団長は武器庫に案内してくれた
「手合わせに反対しないのですか?」
騎士団長はリーゼロッテの叔父だ。俺の正体も知っている。可愛い姪が俺に叩きのめされるかと心配じゃないのか? それとも俺が手加減すると思っているのか?
「なんで? さっきも言っただろ。リーゼは強いって。君も強いからいい手合わせが見られそうで楽しみだ。剣は好きなのを選んでくれ」
「では、これを」
俺は握りのいい感じな剣を選んだ。
ドレスから動きやすいズボンに着替えてきたリーゼロッテは俺の剣を見た。
「お待たせしました。エリアス様、ご自分の剣でないのでハンデをさしあげましょうか」
ハンデだと! 舐めているのか。
「結構だ」
俺は吐き捨てるように言った。
馬鹿にするのも大概にしろ。後悔させてやる。
「はじめ!」
騎士団長の号令で手合わせが始まった。
強い! こいつ本当に強い。
しかも隙がない。自分の特性をよく知っていてそれを活かしている。
負ける。
今までいろんなやつと手合わせしたが初めて負けるて思った。
後悔させてやるどころか俺が後悔している。
「ありがとう! 楽しかったわ。あなた強いわね。また手合わせしてね。なかなか強い人がいなくてつまらなかったの。うれしいわ」
勝ったことより手応えがあったことを喜んでいる。
こいつ何者なんだ?
「ねぇ、お友達になりましょう。初めてできたお友達があなたみたいな人でうれしいわ」
俺はまだなると返事をしていないぞ。勝手に決めるな。
初めての友達か……俺もそうだ。
屋敷に帰ってから母上にあいつの正体を聞いて俺は凍りついた。
先に言っといてくれよ。
『王国の鋼』に勝てるわけなんかないだろ!
リーゼロッテ面白いやつだな。
この時の俺はまさかあいつと一生付き合うことになるとは思ってもいなかった。
父上からリーゼロッテを守れと言われた。
「それは任務でしょうか?」
「任務でもあるが任務ではないかもしれんな」
父上は何を言っているんだ?
俺は修行が終わり、ドラール家嫡男として認められた。
ドラール家はこの国の暗部を担う家だ。いくら嫡男だとしてもチカラがなければ消される。消されない為には強くなるしか無い。
俺は死に物狂いで修行に励んだ。
次期当主になるための修正は他の者たちとは全く違う。この世の生き地獄のような日々だった。
認められた時はこれでようやく人間に戻れると感極まったほどだ。
それがこの女を守るのが俺の任務だと。
王家に繋がる公爵家の令嬢。そんな者の護衛なんて俺じゃなくてもいいだろう。
「ハニートラップですか? 誘惑して、弱みを握れと?」
「いや、そんなことはしなくていい。一緒にいて好きになれば娶るのもありだ」
なんだそれ。
「とにかく行くわよ。早く用意をしなさい」
母上は俺をどこかに連れて行こうとしているようだ。
俺は母上に言われるまま用意された正装に着替えさせられて、馬車に押し込まれた。
「どこに行くのですか?」
「お茶会よ。リーゼと顔合わせしてもらう。これは任務であって任務でないわ。だから、仮のあなたでいることはないの。誘惑しなくてもいい。とにかく素のあなたでリーゼの側にいて守ればいいの。どうしても合わなければその役目は誰かに替わる。それだけ」
母上はそう言うと嘘くさい顔でわらった。
はじめて会ったリーゼロッテ・フェノバールは金髪に紫の瞳をした美人だった。一緒にいた母親は黒髪、瞳は同じ紫だが顔は似ていない。どちらかと言うと可愛い感じだ。リーゼロッテはきっと父親似なのだろう。
いきなり俺に薔薇を見せたいと言う。俺を気に入ったのか?
自分で言うのもなんだが俺は両親に似て見た目はそれなりに良いと思う。ハニートラップをかける訓練も受けているので第一印象で引きつけるのは得意だ。
きっとリーゼロッテも落ちたなと思っていたのに全くの勘違いだった。
「ねぇ、エリアス様、あなた強いんでしょう? 私と手合わせしない?」
「手合わせ?」
「剣でもいいし、素手でもいいわ。強い人と手合わせしたいの」
こいつ何を言っているんだ? 俺は訳がわからなくなった。
「君は公爵令嬢じゃないのか?」
「公爵令嬢よ。私の事何も知らないの?」
「俺は父上から君を守れと言われただけだ」
被っていた猫はいつのまにか消えていた。
俺はつい任務内容を告げてしまった。
「私は別に守ってもらわなくても大丈夫なのよ。私強いから」
「強い?」
「そう私は強いの」
何だかわからないがこいつは自分が強いと思っているらしい。これは鼻っ柱を折ってやるしかない。
「わかった。剣で手合わせをしよう。ここではなんだからどこかに移動しよう」
俺は手合わせん承諾した。
「ええ、騎士団の練習場に移動しましょう」
俺たちは移動魔法で騎士団の練習場に飛んだ。
騎士団の練習場には近衛騎士団長がいた。
王子を辞めて騎士をしている変な男だが腕は立つ。何度か手合わせをしたことがある。
なぜか俺に初対面のような挨拶をする。リーゼロッテに面識があると思われてはまずいのか?
俺もはじめてのふりをした。
リーゼロッテが着替えている間に俺は剣を選ぶことになった。
騎士団長は武器庫に案内してくれた
「手合わせに反対しないのですか?」
騎士団長はリーゼロッテの叔父だ。俺の正体も知っている。可愛い姪が俺に叩きのめされるかと心配じゃないのか? それとも俺が手加減すると思っているのか?
「なんで? さっきも言っただろ。リーゼは強いって。君も強いからいい手合わせが見られそうで楽しみだ。剣は好きなのを選んでくれ」
「では、これを」
俺は握りのいい感じな剣を選んだ。
ドレスから動きやすいズボンに着替えてきたリーゼロッテは俺の剣を見た。
「お待たせしました。エリアス様、ご自分の剣でないのでハンデをさしあげましょうか」
ハンデだと! 舐めているのか。
「結構だ」
俺は吐き捨てるように言った。
馬鹿にするのも大概にしろ。後悔させてやる。
「はじめ!」
騎士団長の号令で手合わせが始まった。
強い! こいつ本当に強い。
しかも隙がない。自分の特性をよく知っていてそれを活かしている。
負ける。
今までいろんなやつと手合わせしたが初めて負けるて思った。
後悔させてやるどころか俺が後悔している。
「ありがとう! 楽しかったわ。あなた強いわね。また手合わせしてね。なかなか強い人がいなくてつまらなかったの。うれしいわ」
勝ったことより手応えがあったことを喜んでいる。
こいつ何者なんだ?
「ねぇ、お友達になりましょう。初めてできたお友達があなたみたいな人でうれしいわ」
俺はまだなると返事をしていないぞ。勝手に決めるな。
初めての友達か……俺もそうだ。
屋敷に帰ってから母上にあいつの正体を聞いて俺は凍りついた。
先に言っといてくれよ。
『王国の鋼』に勝てるわけなんかないだろ!
リーゼロッテ面白いやつだな。
この時の俺はまさかあいつと一生付き合うことになるとは思ってもいなかった。
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