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やっぱり兄上は凄い(アンソニー視点)
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話は少し巻き戻り、国王陛下の誕生日夜会のすぐ後あたりです。
夜会で兄上に話があるから屋敷に行ってもいいかとお願いした。
承諾をもらったので少ししてから先触れをちゃんと出し、フェノバール領へ行った。
俺の話は2つ。
ひとつ目は剣の稽古をつけてほしいこと。
ふたつ目は次期国王になってほしいこと。しかしこれはここに来る前におばあ様から「次の国王はリュカにするわ」と言われたので無しになった。
今日は剣の稽古のお願いのみにすることにしよう。
俺と兄上は16歳年が離れている。3歳になる前位までは兄上はめちゃくちゃ優しくてよく遊んでくれた。それが、全く遊んでくれなくなった。俺は悲しかった。兄上は俺の事が嫌いになったんだと思ったら。それからはほとんど部屋から出てこなくなった。
兄上は部屋から出ずに何をしているんだろうと言う好奇心から兄上の部屋を覗いてみた。
兄上は歩く練習をしていた。
顔を歪ませて転んではまた立ち上がり、また歩く。
俺はすぐに母上のところに行き、兄上のことを聞いた。
王宮ではなんだか兄上にことについて話したり、聞いたりしてはいけないような雰囲気があった。
「母上、兄上のことを教えてください。俺は兄上が必死で歩く練習をしている姿を見ました。小さい頃は優しくてよく遊んでくれた兄上がなぜ全く遊んでくれなくなり、姿を見ることもなくなった。王太子もいつのまにかクリストファー兄上に変わっている。リカルド兄上とクリストファー兄上は全然違う。何かおかしい。おかしいです。一体何があったのですか?」
母上は驚いたような顔で俺を見た。そしてぽつりぽつりと兄上に起きたことを話してくれた。
「あなたは聡い子だから、リカルドの気持ちがわかるわね。リカルドは今自分と闘っているの。絶望の沼から這いあがろうと足掻いているの。今は見守ってあげて」
そんなことがあったのか。ガキの俺にはよくわからないところもあったが、兄上は魔法で操られ、やったことの責任をとった。そして酷い後遺症とひとりで闘っている。やはり兄上は凄い人だ。
「ウィリアムにも話してもいいですか?」
「話してもわからないと思うわ。あの子はあなたみたいに真っ直ぐじゃない。自分で知りたいと思うまで放っておきなさい」
母上の言う通り双子の弟のウィリアムには教えないことにした。
兄上は自ら望んで廃嫡になり、災害で壊滅し、前の領主が見捨てたフェノバール領の領主になった。兄上は廃籍を望んだが父上はそれを許さなかったらしい。それならと兄上は臣籍降下を申し出た。父母は公爵にして温暖な南の領地へやるつもりだったらしいが、自分でフェノバール領を選び領主に着任し、立て直しをはじめた。
最初はなかなか領民と上手くいかず大変だったみたいだが、真面目にコツコツと領民の為に行動して、少しづつ利益も出るようになった頃、年の離れた義姉上と結婚した。
義姉上は俺たち子供の中では有名なランドセン家の跳ねっ返り令嬢。
親友のロバートの姉なので面識があったし、子供の茶会で、義姉上が下位貴族の子供にマウントしている上位貴族の子息をコテンパンに叩きのめしている姿を何度も見た事がある。
義姉上は口も腕もたつし、邪な心など持たない。その上可愛い。
兄上が義姉上と結婚した事は驚いたが、それ以上に結婚してからのフェノバールの繁栄ぶりと兄上の変化に驚いた。
私は騎士科の先生から、兄上が剣聖の最後の弟子で『王国の鋼』と言われていたと聞いた。
「殿下、フェノバール公爵にご指導いただけばもっと腕が上がるのではないでしょうか?」
確かにそれが本当ならそうだろう。
俺は兄上に指導を頼むことにした。
「兄上、私に剣を指導してほしいのです。王立学校の騎士科の先生から『王国の鋼』と言われた兄上に指導してもらうともっと伸びると言われました。是非お願いしたいです」
「私は大した事はないよ。もう長いこと実践的な稽古もしていない。指導と言うほどのことはできないけど、毎日鍛錬しているので、アンソニーが参加できる時は参加したらどうだろう」
兄上は謙遜しながらも承諾してくれた。
それから俺のフェノバール領通いが始まった。
朝、移動魔法でフェノバール領に行き兄上たちの鍛錬に参加し、また移動魔法で学校に行く。
フェノバール領の鍛錬はとても楽しい。乳母兼侍女兼護衛のエマが基礎練のプログラムを組んでくれるのも有難い。
先生が言った通り兄上は強かった。毎日手合わせをしてくれるが、騎士科の先生たちなど足元にも寄れないくらい強い。そして的確に指導してくれる。私は欲しいところに筋肉が付き、持久力も増え、兄上の指導で騎士科では無敵になった。
たまに義姉上とも手合わせする事がある。「私なんて弱いわよ」と言うがなかなから侮れない。たくみな技を繰り出し、動きが読めないので闘いにくい。
「私は小さいし、力も弱いから色んな手を使うの」と言って笑っている。
勉強になる。兄上の揺るぎない強さと義姉上の柔らかい頭からくり出す予想できない動き。
フェノバール領はいいなぁ。チビたちは可愛いし、ご飯も美味しい。
俺は楽しすぎてしばらく居候させてもらうことにした。
夜会で兄上に話があるから屋敷に行ってもいいかとお願いした。
承諾をもらったので少ししてから先触れをちゃんと出し、フェノバール領へ行った。
俺の話は2つ。
ひとつ目は剣の稽古をつけてほしいこと。
ふたつ目は次期国王になってほしいこと。しかしこれはここに来る前におばあ様から「次の国王はリュカにするわ」と言われたので無しになった。
今日は剣の稽古のお願いのみにすることにしよう。
俺と兄上は16歳年が離れている。3歳になる前位までは兄上はめちゃくちゃ優しくてよく遊んでくれた。それが、全く遊んでくれなくなった。俺は悲しかった。兄上は俺の事が嫌いになったんだと思ったら。それからはほとんど部屋から出てこなくなった。
兄上は部屋から出ずに何をしているんだろうと言う好奇心から兄上の部屋を覗いてみた。
兄上は歩く練習をしていた。
顔を歪ませて転んではまた立ち上がり、また歩く。
俺はすぐに母上のところに行き、兄上のことを聞いた。
王宮ではなんだか兄上にことについて話したり、聞いたりしてはいけないような雰囲気があった。
「母上、兄上のことを教えてください。俺は兄上が必死で歩く練習をしている姿を見ました。小さい頃は優しくてよく遊んでくれた兄上がなぜ全く遊んでくれなくなり、姿を見ることもなくなった。王太子もいつのまにかクリストファー兄上に変わっている。リカルド兄上とクリストファー兄上は全然違う。何かおかしい。おかしいです。一体何があったのですか?」
母上は驚いたような顔で俺を見た。そしてぽつりぽつりと兄上に起きたことを話してくれた。
「あなたは聡い子だから、リカルドの気持ちがわかるわね。リカルドは今自分と闘っているの。絶望の沼から這いあがろうと足掻いているの。今は見守ってあげて」
そんなことがあったのか。ガキの俺にはよくわからないところもあったが、兄上は魔法で操られ、やったことの責任をとった。そして酷い後遺症とひとりで闘っている。やはり兄上は凄い人だ。
「ウィリアムにも話してもいいですか?」
「話してもわからないと思うわ。あの子はあなたみたいに真っ直ぐじゃない。自分で知りたいと思うまで放っておきなさい」
母上の言う通り双子の弟のウィリアムには教えないことにした。
兄上は自ら望んで廃嫡になり、災害で壊滅し、前の領主が見捨てたフェノバール領の領主になった。兄上は廃籍を望んだが父上はそれを許さなかったらしい。それならと兄上は臣籍降下を申し出た。父母は公爵にして温暖な南の領地へやるつもりだったらしいが、自分でフェノバール領を選び領主に着任し、立て直しをはじめた。
最初はなかなか領民と上手くいかず大変だったみたいだが、真面目にコツコツと領民の為に行動して、少しづつ利益も出るようになった頃、年の離れた義姉上と結婚した。
義姉上は俺たち子供の中では有名なランドセン家の跳ねっ返り令嬢。
親友のロバートの姉なので面識があったし、子供の茶会で、義姉上が下位貴族の子供にマウントしている上位貴族の子息をコテンパンに叩きのめしている姿を何度も見た事がある。
義姉上は口も腕もたつし、邪な心など持たない。その上可愛い。
兄上が義姉上と結婚した事は驚いたが、それ以上に結婚してからのフェノバールの繁栄ぶりと兄上の変化に驚いた。
私は騎士科の先生から、兄上が剣聖の最後の弟子で『王国の鋼』と言われていたと聞いた。
「殿下、フェノバール公爵にご指導いただけばもっと腕が上がるのではないでしょうか?」
確かにそれが本当ならそうだろう。
俺は兄上に指導を頼むことにした。
「兄上、私に剣を指導してほしいのです。王立学校の騎士科の先生から『王国の鋼』と言われた兄上に指導してもらうともっと伸びると言われました。是非お願いしたいです」
「私は大した事はないよ。もう長いこと実践的な稽古もしていない。指導と言うほどのことはできないけど、毎日鍛錬しているので、アンソニーが参加できる時は参加したらどうだろう」
兄上は謙遜しながらも承諾してくれた。
それから俺のフェノバール領通いが始まった。
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フェノバール領の鍛錬はとても楽しい。乳母兼侍女兼護衛のエマが基礎練のプログラムを組んでくれるのも有難い。
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勉強になる。兄上の揺るぎない強さと義姉上の柔らかい頭からくり出す予想できない動き。
フェノバール領はいいなぁ。チビたちは可愛いし、ご飯も美味しい。
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