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【閑話】王太后の独り言(おばあ様視点)
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私がまだこの国の女王だった頃、神からのご神託を聞いたことがある。
『国を変える時は初代国王と同じチカラを持つ子が生まれるから、その子に従え。その子の周りには必要なチカラを持つ者が集まる』
私の父は賢王だった。色んな改革をして国は裕福になった。しかし、戦争もした。国を富ます為には仕方がないのかもしれないが、男中心の考え方をする国だった。女はただ守られていればいいと。
私はひとり娘だった。男尊女卑寄りの我が国ではあったが、その昔は女王が国をおさめていたこともあり、男女どちらでも国の長になれた。
私は女王に即位した。母の実家の筆頭公爵家の後ろ盾もあり、女王として色んな仕事はできた。
ただ、女王であるうちにもっと、女性や子供、平民や貧困者が生きやすい国にしたかったが志半ばで病のため、退位し、長の座を息子に譲ったが息子のベルナルドは凡庸だった。
私は他国の第2王子と政略結婚した。王配になった夫は良い人であったが、能力はイマイチ、そして努力が苦手だった。彼に似たのだと思う。
子供はベルナルドだけだったので、危機感を覚えた私はベルナルドの妃と側近を早く選び子供の頃から鍛える事にした。
王太子妃候補のアビーは聡い子で私の期待通りに育ってくれた。息子のベルナルドがダメでもアビーがいればなんとかなりそうだ。他の側近たちも優秀だ。私は夫が亡くなった時に自分も体調があまり良くなかったので、退位した。
予想通り、ベルナルドはダメだった。しかし、アビーがよく頑張ってくれた。そしてアビーの産んだ第1王子のリカルドは王家の髪色と瞳の色を持っていてとても優秀であった。
リカルドは真面目でフラットな考えを持っていた。リカルドが国王になれば私が思っていたような国に近づく。そう思っていたのに、あんな事件が起きた。
あの頃の私は体調が悪く、身体が思うように動かなくなっていた。手足の関節が腫れ、凄い痛みがあった。隣国から魔法医師を招いて治療をしてもらうがなかなか良くならない。手足の骨が変形をはじめ、見た目も気になってきたので、王宮にいるのが辛く、離宮に移ったばかりで、リカルドの変化に気がつかなかった。
魅了の魔法にかけられて意のままに操られていたとは。
事件が発覚し、共に魅了の魔法にかかったリカルドの側近たちもその親も責任を取り辞した。
ベルナルドの周りからも私が育てた優秀な者が何人か消えてしまった。
国はアビーと宰相のレオナルドでなんとか動かしているようだが、先々の不安が余計に私の病気を悪くしていた。私は絶望の中にいた。
何年もトンネルを抜けられない日々が続いていたある日、アビーからリカルドが結婚し、立ち直り、子供も産まれ、あのフェノバール領を豊にしていると聞いた。
アビーは嫁のミディアローズのおかげだと言う。
私はミディアローズに会ってみたくなった。
ベルナルドと誕生日の夜会にあわせて王宮でリカルド家族と会う事にした。
指の変形がわからないように手袋をした。久しぶりにちゃんとしたドレスを着た。私は王太后、しゃんとせねばと痛い背中を伸ばす。
そして、15年ぶりにリカルドに会った。
リカルドの子供のリュカを見た時に、女王の頃に受けたご神託を思い出した。
『国を変える時は初代国王と同じチカラを持つ子が生まれるから、その子に従え。その子の周りには必要なチカラを持つ者が集まる』
リュカは間違いなくそれだ。弟のジェットもそうだろう。
私はふたりと念話で話す。全てがわかった。
そして、リュカとジェットは私が長年患っていた病を治してくれた。
強張りや腫れ、痛みが消えていく。変形していた指は元に戻っていった。身体も軽い。
夢かと思った。
リュカに次の国王を渡すまで、私はスムーズにことが運ぶようにあちこちに根回しをしなくてはならない。私のやるべきこと、できる事をやらなくては。その為に身体が治ったはずだ。
それにしてもミディアローズは不思議な子だ。きっと神が我が国にもたらした使者だと思う。アビーが夢中になるのもわかる。
私もミディアローズに惹かれた。
それにしてもリカルドはあんな狭量な男だったのだろうか? 我が孫ながら引いてしまう。ミディアローズが寛大でよかった。
私はこれから残された命をかけてこの国のために動く。アビーはもちろん、リカルドやミディア、リュカもジェットもアンソニーも巻き込んでいく。
ベルナルドにもちょっとくらい手伝わせよう。まずはレオナルドと話をしなければ。
楽しくなってきた。
私はこれから引きこもっていた15年を取り戻す。
*名前の説明です*
アビー(アビゲイル)→王妃様
ベルナルド→国王陛下
レオナルド→宰相(オーウェンパパ)
『国を変える時は初代国王と同じチカラを持つ子が生まれるから、その子に従え。その子の周りには必要なチカラを持つ者が集まる』
私の父は賢王だった。色んな改革をして国は裕福になった。しかし、戦争もした。国を富ます為には仕方がないのかもしれないが、男中心の考え方をする国だった。女はただ守られていればいいと。
私はひとり娘だった。男尊女卑寄りの我が国ではあったが、その昔は女王が国をおさめていたこともあり、男女どちらでも国の長になれた。
私は女王に即位した。母の実家の筆頭公爵家の後ろ盾もあり、女王として色んな仕事はできた。
ただ、女王であるうちにもっと、女性や子供、平民や貧困者が生きやすい国にしたかったが志半ばで病のため、退位し、長の座を息子に譲ったが息子のベルナルドは凡庸だった。
私は他国の第2王子と政略結婚した。王配になった夫は良い人であったが、能力はイマイチ、そして努力が苦手だった。彼に似たのだと思う。
子供はベルナルドだけだったので、危機感を覚えた私はベルナルドの妃と側近を早く選び子供の頃から鍛える事にした。
王太子妃候補のアビーは聡い子で私の期待通りに育ってくれた。息子のベルナルドがダメでもアビーがいればなんとかなりそうだ。他の側近たちも優秀だ。私は夫が亡くなった時に自分も体調があまり良くなかったので、退位した。
予想通り、ベルナルドはダメだった。しかし、アビーがよく頑張ってくれた。そしてアビーの産んだ第1王子のリカルドは王家の髪色と瞳の色を持っていてとても優秀であった。
リカルドは真面目でフラットな考えを持っていた。リカルドが国王になれば私が思っていたような国に近づく。そう思っていたのに、あんな事件が起きた。
あの頃の私は体調が悪く、身体が思うように動かなくなっていた。手足の関節が腫れ、凄い痛みがあった。隣国から魔法医師を招いて治療をしてもらうがなかなか良くならない。手足の骨が変形をはじめ、見た目も気になってきたので、王宮にいるのが辛く、離宮に移ったばかりで、リカルドの変化に気がつかなかった。
魅了の魔法にかけられて意のままに操られていたとは。
事件が発覚し、共に魅了の魔法にかかったリカルドの側近たちもその親も責任を取り辞した。
ベルナルドの周りからも私が育てた優秀な者が何人か消えてしまった。
国はアビーと宰相のレオナルドでなんとか動かしているようだが、先々の不安が余計に私の病気を悪くしていた。私は絶望の中にいた。
何年もトンネルを抜けられない日々が続いていたある日、アビーからリカルドが結婚し、立ち直り、子供も産まれ、あのフェノバール領を豊にしていると聞いた。
アビーは嫁のミディアローズのおかげだと言う。
私はミディアローズに会ってみたくなった。
ベルナルドと誕生日の夜会にあわせて王宮でリカルド家族と会う事にした。
指の変形がわからないように手袋をした。久しぶりにちゃんとしたドレスを着た。私は王太后、しゃんとせねばと痛い背中を伸ばす。
そして、15年ぶりにリカルドに会った。
リカルドの子供のリュカを見た時に、女王の頃に受けたご神託を思い出した。
『国を変える時は初代国王と同じチカラを持つ子が生まれるから、その子に従え。その子の周りには必要なチカラを持つ者が集まる』
リュカは間違いなくそれだ。弟のジェットもそうだろう。
私はふたりと念話で話す。全てがわかった。
そして、リュカとジェットは私が長年患っていた病を治してくれた。
強張りや腫れ、痛みが消えていく。変形していた指は元に戻っていった。身体も軽い。
夢かと思った。
リュカに次の国王を渡すまで、私はスムーズにことが運ぶようにあちこちに根回しをしなくてはならない。私のやるべきこと、できる事をやらなくては。その為に身体が治ったはずだ。
それにしてもミディアローズは不思議な子だ。きっと神が我が国にもたらした使者だと思う。アビーが夢中になるのもわかる。
私もミディアローズに惹かれた。
それにしてもリカルドはあんな狭量な男だったのだろうか? 我が孫ながら引いてしまう。ミディアローズが寛大でよかった。
私はこれから残された命をかけてこの国のために動く。アビーはもちろん、リカルドやミディア、リュカもジェットもアンソニーも巻き込んでいく。
ベルナルドにもちょっとくらい手伝わせよう。まずはレオナルドと話をしなければ。
楽しくなってきた。
私はこれから引きこもっていた15年を取り戻す。
*名前の説明です*
アビー(アビゲイル)→王妃様
ベルナルド→国王陛下
レオナルド→宰相(オーウェンパパ)
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