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ビギナーズラック?

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 リカルド様に王太子に戻ってもらい、私は身を引こうと思っていたのだけれど、それは難しくなってしまった。

 なぜかと言うと、なんと、私は懐妊してしまったのだ。
 さすがの私も身重になっては身を引くことは躊躇する。
 とりあえずはリカルド様は王太子には戻らないと言うし、身を引かなくてもいいみたいだ。

 ビギナーズラックというやつだろうか?
4年目にしての初夜で、長いこと禁欲していたリカルド様の子種たちがやる気満々だったのか? 
 まぁ、あれ程、子供が産めない嫁だと陰口を叩かれていたのに、今ではそんな声は影をひそめた。

 妊娠がわかってからは、リカルド様は超過保護で超溺愛されている。私の世話は自分がやるとメアリーから仕事を取り上げてしまった。
 安定期に入るまではまた禁欲させてしまったけど、今は安定期に入って、ちょっとくらいならいいよと先生からOKが出たので再開した。
 リカルド様のちょっとくらいと先生のちょっとくらいはかなり温度差があるような気もするが、まぁ、私もお腹の中の赤ちゃんも元気なんで良しとしている。

 溺愛キャラになってしまったリカルド様はチャーリー先生に赤ちゃんを取り上げてもらうのはダメだと、チャーリー先生の知り合いの女医さんのメグ先生を紹介してもらった。メグ先生には移動魔法で王都から診察に来てもらっている。

 リカルド様の王太子問題はまだ燻ったままだ。
 国王陛下は「絶対リカルドに戻ってもらう」と聞かないらしい。
 王妃様は「リカルドの自由にさせてあげるから大丈夫よ」と言っている。

 国王陛下が勝つか? 王妃様が勝つか?

 国王陛下は自分がリカルド様を王太子に戻すと言ったてまえ、引っ込みがつかないようで、国王をどう説得するか周りは困っているそうだ。

「今でもリカルドを王太子にして、自分の娘を側妃にしようと思っている馬鹿貴族もいるのよ。あの人があんなことを言ったばかりにリカルドにもあなたにも迷惑かけるわね」

 王妃様は私が孕ってから、お忍びでちょこちょこ我が家に現れる。

 アーサー様から移動魔道具を購入した王妃様は時間が空くと私の様子を見に来てくれる。
 初孫の誕生を楽しみにしているようだ。そして、今まで私がしていた仕事を代わりにやってくれたりしている。

 それとは別にオーウェン様に何か探らせていることがあるらしく、うちでよく密談している。

 王妃様は何を企んでいるのだろう?

「ねえ、ミディアはどう思うの? 王妃になりたくはない?」

 王妃様は領地で採れたハーブを乾燥して作ったハーブティーを飲みながら私に聞く。

「正直に言うと、全く興味ないです。私より王妃に向いている人がいるはずですわ。少し前までは、リカルド様が国王になるなら、私は身を引こうと思っていました。王妃様に相応しい方と再婚して国を動かせばいいと」

「リカルドと別れてどうするつもりだったの?」

「国外に出ようと思ってました。フェノバール商会かセレナール商会で仕事をさせてもらおうかと。リカルド様が結婚して、その方と仲睦まじくしている姿を見るのは嫌ですものね」

「まぁ、リカルドは愛されてるわね。でも王妃に相応しいのはミディアよ。ミディアが王妃にならないのなら、リカルドの国王はないわね」

 王妃様は驚くような事を言う。

「あなたがいるからリカルドは動くのよ。あなたがいなくなったらリカルドはダメになるわ」

 そんなことないよ。王妃様は買い被りすぎだ。

「私は実はリカルドの国王より、あなたに王妃になってほしいと思っていたの。あなたが王妃になったらこの国は変わるわ。新しく生まれ変われる。私たちがやろうとしてできなかった事をあなたとリカルドならやれる。それはフェノバールで実証されているわ。考えてみて。無理にとは言わない。押し付けている訳じゃないのよ。チカラを発揮して欲しいの。王妃が無理でも次期国王のブレーンでいてほしいわ」

 王妃様に手を握られて哀願された。王妃様は母のいとこなので子供の頃から良く知っている。綺麗でかっこいい人だ。

 しかし、私には王妃様みたいにはなれない。ブレーンにならなってもいいかな。次期国王や王妃のサポートならできる。
 でも、次期国王と王妃がどこを見ているかにもよるだろうな。

「また、母上が来てたんだって? 母上の言うことなんか気にしなくていいんだよ。ミディアはミディアのやりたいようにやればいい」

 王妃様が帰った後、しばらくして仕事を終え、屋敷に戻ってきたリカルド様は座っている私を後ろから抱きしめながらそんな事を言う。

 私のやりたいようにやればいいか……。

 私は何をどうしたいのだろう。

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